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第二章 聖杯にまつわるお話

第257話

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 属性不明のダメージを与える虹色の小麦。
 こんな物騒な作物どうしろと。

 試しに僕が持ってみたけど何ともなかったんだよね、周囲が阿鼻叫喚で大変な騒ぎになってたことを除けば。
 泣いて止めてと訴えられたので、一束だけ手伝ってお終い。
 たまには労働してもいいと思うのだけど……そうか、だめか。

 結局虹色の小麦は農民の皆さんが普通に回収、報告書を付けてギルドに納品するそうです。
 調理したら普通の小麦になるのだろうか、それとも品質最高級のさらに上になるのか、とても気になる。

「聖女バトルは終わったんだべかな」
「あー忘れてたな」
「麦の収穫って素晴らしい」

 激レアな麦もここで働く人たちにとっては現実逃避のアイテムになるようです、苦労が絶えずに申し訳ない。

「かあちゃ見てーー!」
「?」

 はしゃいだ声に振り向いたら、涼玉を乗せたロデオが黒炎をまとったラスボス風になっていた。
 何があったのでしょうか。

「ロデオ進化した!」
「聖女倒せなくてな、無限ボコボコやってたら牛が全体的にレベルアップしたんよ」

 黒い炎はなんだかカッコイイ感じの演出なだけで、周囲を燃やしたりなどの影響はないみたいです。
 単に涼玉のリクエストに応えて最強に磨きをかけただけ?

 その他の牛は平和な乳用牛だったのが、Cランクの魔物単体なら突撃で倒せるぐらいの力を得てしまったと解説が入りました。
 農民の皆さんの食生活を支えるための牛が、農民の皆さんの安全まで担えるようになったと。そういう解釈で間違っていないと思う。

『岩ちゃんも進化したの』

 シャムスを乗せた岩の狼はもはや岩の狼ではなくなっていた。

「羊?」
『うーん』

 全身がもこもこの白い毛皮に覆われて丸い毛玉がそこにいた。
 確かにあれなら跳ね飛ばされても衝撃は少なそうだけど、進化の方向が争いとは真逆に行ったみたいです。

「最初の登場こそ大暴れしてたけど、もしかしてこの子、とことん争いに向いてないんじゃ……」
『もこもこぉ』

 そしてもこもこの毛皮に埋もれて実はシャムスのお耳しか見えていません。
 これはこれで愛らしいのでアリだと思う。

「ロデオの炎は植物を燃やさない! 俺と同じ炎だぞ!」
「それは凄いですな!」
「どれどれ……おお、小麦を焼いたらパンができたぞ」
「なんで!?」

 農業ドラゴンが好奇心から小麦を火にかけたらとんでもないことになった。
 えっ、さすがの涼玉の炎もそんな能力ないよ??

「ロデオ、わたしと一緒に刀国に帰んのよ、大儲け」
『表面カリカリ、中ふわふわぁ』
「これ、美味しいです!」

 涼玉のための最強の牛にとんでもない能力が追加されました。
 そして農業ドラゴンが焼いた小麦は黄金の小麦、そんなのをイネスが食べた日にはどうなるかと言うと……。

「美味しぃ」
『イネスぺかぺか』

 黄金のパンを食べたイネスがいつもの二割増しで光っております。
 当然周囲に光が振りまかれ、やっと収穫を終えた畑がキラキラと輝いて……どこまでも広がっていく。
 わぁ無限ループ入っちゃった。
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