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第二章 聖杯にまつわるお話

第255話

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 農村に行ったら戦闘が始まっていた。
 突然現れた魔物を誤解から人間が追い出そうとしているのかと思ったけど、魔物側というか魔物の後ろに人間が庇われているので余計に状況が不明です。

「喧嘩とは違う、よね?」
『侵入者ー!』
「天誅タイム!」
「ロデオどこですか、ロデオ」
「ここ村から遠い場所なんよ、連れてくる!」
「俺は足止めしとくぜ!」

 うちの子たちがやる気満々だけど大丈夫だろうか。

「かあちゃ、あれ聖女だ!」
『また現れたの』
「えっちゃん空間隔離してください、逃がさないですよーー!!」

 イネスが闘志に燃えている。
 周囲の小麦が神気に当てられて黄金に輝いているけど、あれはもう一般流通出来ないんじゃない?

 おっと魔物の後ろに隠れていた人たちがこちらを指さして悲鳴を上げ始めた。
 黄金の麦畑で神秘の光を放つイネスに感激しているというよりも、増えた仕事と普通には消費できない小麦に悲鳴を上げていると考えたほうが自然かもしれない。

 ええとあとは何だっけ、そう聖女。
 ……聖女ってロデオと牛の群れにボコボコにされたのに逃げたあの聖女だよね。

「僕が近寄っても大丈夫かな」
『うーーーーーん』
「万が一聖女がママに敵意を向けたらそこで終わっちゃいます」
「俺たちの戦いはこれからだ!」
「涼玉、それは打ち切りのセリフ」

 僕らがわちゃわちゃしていたら地面が揺れて、頭にネヴォラを乗せたロデオと仲間達がこちらへ向かって来るのが見えた。
 ネヴォラのバランス感覚どうなっているんだろう、エルフって凄いなぁ。

 僕らの前を通過して一直線に聖女に突撃していく牛の群れ。
 見送ったら僕とマールスだけがその場に残されたのですが……うちの子たちは突撃する牛の上に乗ってヒャッハーと叫んでいますね、どうやって上に乗ったのだろうか。

「ああああ、丹精込めて育てた小麦が!!」
「どうするんだよこれ、人間食べたら光らないか?」
「相手が王族でも納品できないやつだべ」
「あーもーイネス様がいた辺り全部キラキラしてんぞ」

 牛が突撃して混戦に入り、ターゲットが自分達から外れたのを見計らって農民たちがこちらへやってきました。
 そして黄金の小麦を見て頭を抱えております。

「牛が通った所はどうだ」
「倒れるどころか茎が太くなって再生始めてる」
「俺、普通の農業したい」
「オラも」
「これは……神の麦がこんなに!! 儂らも収穫を手伝うぞ」
「おー!」

 そこへ体の大きな美丈夫が仲間とスケルトンを従えてやってきて、腕まくりをして農民の手伝いを始めた。
 一番体が大きいのが僕のスカウトに応えてくれた秘境のドラゴンさん、秘境でも農業をしてみたいらしく修行という名目でこちらにやってきました。

 一回り体が小さく、腕や顔など体の一部に鱗を持つのがシャムスがスカウトしたドラゴンの群れの若者。
 シャムスの手伝いをするついでに嫁が見つかったらいいなーと言っていました。

 カタカタ骨を鳴らしながら働くのは、イネス達の召集に応えたスケルトン集団。
 当初は無理矢理連れて来られたと泣いていた彼らも、やりがいのある仕事に生き甲斐を感じているとイネスが教えてくれた。
 ……いや、彼ら死んでるよね?
 死霊系だよね??

「聖女は大丈夫なの?」
「うむ、参戦するにもロデオ殿に弾かれたのでこちらにやって来たまでよ」

 どうやら戦闘放棄ではなく、牛の群れの勢いに負けて場外に放り出されたようです。
 うちの子が申し訳ない。
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