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第二章 聖杯にまつわるお話

第246話

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 海を見渡せる辺境の町。
 残念ながらイネスが出禁になった。

「町もまだ完成してないのに?」
「それぐらいしないとレッサーデーモンが逃げる」

 どうやら魔王様同様、イネスの神聖属性に対して恐怖を抱いてしまったようです。

「全身全霊で辺境を守るから、俺たちの事も守ってくださいって泣きつかれたんだ」
『べそべそ』
「ギャン泣きだった」
「ぶーぶー」
「イネス泣かせた!」
「すみません、すみません」

 代表でネヴォラに絡まれているセバスは先ほどからずっとひたすら謝っている。
 謝る必要は本当はないのだけど、相手が相手なので機嫌を損ねる方が厄介だと判断したようだ。

 あとネヴォラ、イネスは泣いてません。
 拗ねてるだけです。

「あとひよこ豆の威力に感動して、これは欲しいとちゃっかりお願いされた」
「売りましょう」
「ぼったくんの!」

 大変ですレッサーデーモンの皆さん、うちのイネスとネヴォラがお怒りですよ。
 頑張って辺境の地を整えて、貢いでください。

「最近では鍛錬だと言って帝国の騎士が手伝いに来てくれるけどさ、常駐じゃないから普段はやっぱり人手不足なんだよなぁ」
『魔物の手も借りたいのよ』
「もう何回か魔物が群れで襲ってくれば多少改善されるな」

 うちの子の中で魔物がただの労働力扱いになっている。
 そう言えばマシュー君の所の人手不足を解消するための方法も、ダンジョンに行って魔物狩りだったっけ。
 懐かしいなぁ。

 確か下した魔物は一匹残らず番を得ただけでなく、マシュー君の領地にあった孤児院の子供達を引き取り、目出度くシヴァさんの孤児院は閉鎖したんだっけ。
 あの時のシヴァさんは本当に鬱陶しかった。

「……そう言えば何でセバスたちはここを襲撃したんです?」
「乗っ取りか! 粛清すんぞ!」

 シャドーボクシングするネヴォラに不思議そうな表情を浮かべるセバス。

「なぜ、でしょう。ここを襲えと誰かに命じられたような気がします」
『記憶がぼんやり?』
「陰謀だ! 俺らにちょっかい掛ける存在いたけど忘れてたな!」
「そいつらをぺかぁしてこき使いましょう!」
「落とし前付けさせんの!」

 不穏な空気にアー君が詳細を尋ねた所、記憶が全体的にふわっとして思い出せないようです。

「忘れた原因は操られていた術じゃなくて謎能力なんだろうなぁ」
『悪い思考はぽーい』
「いらないなにも」
「捨ててしまおう」
「うるちょらそうりゅう!」
「セリフとられた……こいつ誰?」

 まいど! と片手をあげて挨拶したのは、右半身が蛇の鱗に覆われているアペプの息子だった。
 僕の両腕がシャムスを抱えていてよかったと今ほど思った瞬間はない、抱いてなかったら知らずにこの腕にいそうだもんこの子。
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