上 下
240 / 809
第二章 聖杯にまつわるお話

第236話

しおりを挟む
 山のように大きな魔物から狼型サイズの魔物まで、砂漠の魔物が仲間になった。
 なおサソリなどの昆虫タイプはいなくてホッとしました。

 嫌いではないし、苦手でもないけど積極的に視界には入れたくないよね。
 ちょっと気持ち悪いなぁって思ってるだけですよ。

「あんな大きな魔物、どう扱えと」

 これで終わり、帰ってご飯食べようと思っていたら、砂漠の神であるセティから早速苦情が入りました。

「歌っても踊っても大地が揺れるもんな!」
『でも強いから頼もしいのよ』
「確かにあのままじゃセティの役に立てないよね、もふもふズみたいに小さくなれないのかな」
「助かる」

 希望を口にしたらセティにお礼を言われた。
 え?

『今ので小さくなったのよ』
『無意識の言葉の方が力あるって怖いよな』

 幼児がこそこそしている、なんだろう。

「スタンピードより授業を優先する国民性、なんとかならないかなぁ~」

 盛大な溜息とともに現れたのはアー君、その後ろにはクラスメイトと担任の先生の姿があった。

『アー君、おつかれぇ』
「にいちゃ!! 俺な、大活躍した!!」
「アー君おかえりなさいのちゅー」
「うんただいま」

 家にいる時と同じようにアー君に抱き着き、頬っぺたにチュウをしたけどアー君は普通に受け入れてくれた。
 人前では恥ずかしがるのに、習慣でつい受け入れちゃうアー君が可愛い!

「うわっ、アル様、俺の頭に何か降ってきた!」
「魔物じゃないよな、どの子だろ」

 初めての砂漠の街を興味津々で見ていた生徒の一人が悲鳴を上げ、アー君に助けを求めた。
 確かあの子はスケルトンママを使い魔にしている子だった気がする、人外にモテモテですね。

「気配が露骨に邪神。え、誰?」
『アペプの子供ー』
「生まれたばっかり、俺らが見舞いに来たらもう生まれてた!」
「だーりぃー」
「首が折れる、折れちゃう!」

 クラスメイト君の頭にべったりとしがみ付いて離れようとしないのは、上半身が人、腰から下は蛇の姿で生まれたあの子だった。
 もしや「だーりぃー」は「ダーリン」だろうか、謎能力の影響なら運命の出会いはよくある話だし。

「それ俺の弟であるセティの息子の一人だって! 幸せにしろよ!」
「待って、待ってくださいアルジュナ様ぁぁ! 俺さすがに幼児は!!」
「魔力が満ちればあっという間に成長するから、それまで子育てよろしく」
『拒否は無理なのよ』
「相手邪神だし、来世もその先も幸せにな」

 ここで拒絶して泣かせたらセティが飛んできそうなので、大人しく娶った方がいいと思う。

「さてと、それじゃ使い魔選定行くぞー」
「おー!」
「俺も行く! 連れて行ってよぉ!」
「裸の幼児を連れていく訳にはいかないだろ、それに無理に引きはがすとお前の首が折れる。大人しくここで世話をしながら待ってろ」
「そんなー」

 アー君の言葉にクラスメイト君の首をよく見たら、セティの息子の尻尾がぐるっと巻き付いていました。
 逃げたら殺すってことだろうか。さすが邪神、ヤンデレ。

 その後、セティによって誘導されていた魔物のうち、数匹がクラスメイトと使い魔契約を結んだ。

「先生はどんな星の下に生まれてきたんだろうな」
『引きが強すぎぃ』
「超巨大種が使い魔になった。どんな確率?」
「困るのですが」

 担任の先生が視線を下に向けながら困惑している。
 視線の先には先生を背に乗せ、満足げにふんふん言っている亀。
 今はちゃぶ台ぐらいのサイズになっているけれど、元は山のように巨大な魔物の一匹だったらしい、先生を見つけた瞬間、甲羅を回転させて突撃してきて、そのままの勢いで先生を背に乗せたんだって。

「まぁ馬より疾いし、馬車いらずで良かったな先生」
『ぎゅーん』
「俺のロデオとどっちが速いかな?」

 なお刀雲と騎士様はスタンピード後始末で本日はお泊り、夕食は……子供が好きなものの詰め合わせ、唐揚げ&ハンバーグカレーとかにしちゃおうかなぁぁ!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!

ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。 弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。 後にBLに発展します。

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

処理中です...