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第二章 聖杯にまつわるお話

第230話

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 まだ生まれてもいない子に夢の世界で押し倒され、本気で泣いていたセバツー。
 僕らが駆け付けた直後、どうやら使い魔として呼び出されたらしく「ご主人いいタイミングーー!」と叫びながら姿を消した。
 悪魔としての狡猾な本性はどこに置いてきたのだろうか。

 それにしてもこの子、まつ毛長い。
 吐く吐息もなんだか色っぽいし、生まれたての頃のアカーシャと同じ雰囲気があるなぁ。

 綺麗な顔なのはもはや当然として、褐色の肌に白銀の髪、蒼い瞳――まではまぁ我が家では標準。
 エロ無双の気配がするモデルのような完成された裸体、ご機嫌にうねる白銀の獅子の尻尾に可愛らしい耳、キラキラエフェクト。

 本当にあの晩何があったのか。
 アー君に詳細を聞きたくても授業中だろうし、帰宅したら問い詰めよう。

『積極的ね』
「和食と強い縁を感じたの」
「セバツーはお茶の研究してる繋がりで、薬膳料理も手掛けてるらしいからなー」
「獲物は逃がしちゃいけません! パパに告げ口してセバツーに責任取らせましょう!」

 さすがラーシャを力技で捕縛しただけはあり、イネスは力づくに賛成派っぽいです。

「とりあえず服を着ようか」
「これは嫌」

 洋服を渡したら趣味じゃないと断られた。
 生まれる前から服の趣味まであるとか……自我の確立早すぎません?

「じゃあねー、これどうかしら?」

 ぽひょんとイネスが人化し、自分が着ていたギリシャっぽい服を脱いで渡した。
 そこは新しく出すんじゃないんだね。

「んー、小さい」
『小さくなればいいのよ』
「俺らぐらいがやりたい放題しやすい」 
「涼玉、余計な知識を吹き込まない」
「ママー私すっぽんぽんついでに泳いできます」

 イネスはどこまでも自由だった。
 言うが早いか走り出し、川に飛び込んで流れに逆らうように泳いでいる。

 さっきまで川なんてなかったけど、まぁ夢の世界だからね。

 同じ幼児になった末っ子に、シャムスと涼玉があれこれ入れ知恵している。
 そこにセティ、ヨムちゃん、朱と青藍、エンラとぞろぞろやってきて流れるようにピクニックが始まった。

 食べる物は現世からえっちゃん経由でドリちゃんが届けてくれたので、飲み物はメニュー画面で出しました。
 でもここ夢の世界の中だから、イメージだけで食べ物出せるはずなんだよね、お腹は膨らまないけど。

「そう言えば母上」
「なぁにセティ」
「アペプとアペプの腹の子は砂漠に呼び寄せるから、食糧支援を頼んでいいか」
「分かった。アー君にお願いしておくね、妊娠中の邪神は普段の十倍近く食べる時もあるからねー、ドリアンの増援は必要そう?」
「そちらは魔人で補う」
『マールスと同じ、頭いっぱい』
「強そうだな!」

 現在アペプは悪阻でケロケロしていて、セティの宮殿で体を休めているそうです。
 ヨムちゃんが助けられるのは出産時だけだからなぁ、でも神格が上がれば悪阻とかも軽くなるのかな?

「砂漠はスタンピード大丈夫だった?」
「そちらは特に問題はなかったのだが、あちこちで乱交が始まって驚いた。出産ラッシュに備えてヨムへの信仰を急ぎ広める必要がある」

 どうやら砂漠方面は女神の妄想の影響をもろに受けたようで、カイちゃんの暮らす場所でも大臣同士が突然会議室で盛り始めたり、セティの宮殿で仕事中の魔人が発情したり大変だったらしい。
 腐った女神が大変ご迷惑をお掛けいたしました。
 騎士様に言って注意しておいてもらいますね。
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