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第二章 聖杯にまつわるお話

第229話

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 和食騒動のあった翌日、目の下に隈ができたセバツーがやってきた。
 悪魔なのに疲れ果てている。

「ご要望の高級抹茶です」
「あんがと!」
『ありがとー』
「うん、いい香りだな。セバツー、また頼むぞ」
「分かってますよ。そう言うと思ってカタログ作ってきました」

 とうとうセバツーがうちの子の望みを先読み出来るようになった。
 普段からどれだけ振り回されているんだろう。

 ちょっぴり哀れに思っていたら、突然僕の影から幾つもの手が湧き出てセバツーを捕獲、止める暇もなく闇に飲み込んでしまった。
 え、セバツーが僕に危害を加えようとでもしたの? 違うよね? え?

『えっちゃんどうしたの?』
「セバツーが全てを諦めた顔だったんだけど!?」
「にいちゃ、おっかけて、おっかけて!」
「セバツーがいないとお茶の注文できません! えっちゃん、セバツー返してください」

 安否の有無よりお茶を優先するイネス、救出ってどこからどうやって!? と混乱を極める子供達、悪魔だし簡単には死なないと思うけど……相手がえっちゃんだからなぁ。

「え、えっちゃんじゃないの?」
『僕らのおとーと??』
「生まれる前から規格外だな!」
「さすが僕らの弟です」

 僕の影をぺしぺし叩く子供達に対し、伸ばした触手を左右に振って否定するえっちゃん、どうやらセバツーを飲み込んだのは無関係らしい。
 真犯人はお腹の子ですって、あるある、うちの子ならそのぐらい朝飯前だよ。

「じゃあ……寝るか」
「アー君は学園があるでしょ」
「この状況で!?」
『いってらっしゃい』
「俺らがお昼寝ついでに解決しとくから!」
「アー君の分まで僕らが頑張ります」

 そんな感じで学園に送り出されたアー君、物凄い渋い顔してたけどちゃんと登校しました。
 今朝の騎士様も似たような顔してたけどね、さすが親子。

 刀雲が有給取ったんだから次は俺の番! と言って有給申請したら、そもそも騎士様はその制度が適用されないからさっさと出勤してこいという無慈悲な返信が来て泣いてました。
 神々の王でこの世界の持ち主に対しても容赦なしだよね、刀国の役人。

「じゃあ寝ましょう」
「寝るか!」
『ママー』

 クッションコーナーで可愛らしい幼児がお昼寝のお誘い、寝ましょう喜んで。

 寝やすい体勢を取って目を閉じれば、ドリアンが僕らに掛け布団をかけてくれました。
 頭も転がらないようにスライムが固定してくれているし、これなら途中で起きる心配もないね。

 じゃあ改めて夢の世界へレッツゴー……ぐー。

「ね、気持ちいいの好きでしょう?」
「俺悪魔! 別の世界の生き物! 妊娠しなきゃさせることも出来ないんですーー!!」

 夢の世界に入ったら、獅子の尻尾を持つ少年がセバツーを押し倒して泣かせていた。

 ……獅子の尻尾?
 アー君、ちょっとお話聞きたいことがあるんですけど、いいかな?
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