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第二章 聖杯にまつわるお話
第219話
しおりを挟む視界を遮る濃い霧の中、突如聞こえた声に武器を構えるアカーシャ親衛隊、声の正体はいまだ姿を現さず緊迫した空気が続いております!
ところで君たち、基本商人のはずだけど戦えるの?
(それにしてもイネス達を放置して大丈夫かな? いざとなったらえっちゃんが動いてくれるだろうけど、あの子たち無茶するからなぁ)
一番手っ取り早い呼び寄せ方法はおやつ、適度に運動した後なら呼べば一瞬で来ると思う。
(いやそれよりも、マールスが一緒に行ったのが心配。邪神がイネスのあれ受けて大丈夫なのかな?)
でもまぁ毎日我が家で聖なる野菜やら果物やら摂取しているし、スラムでぺかぺかしている時も無事だったからきっと大丈夫なんだろう。
愛の力かな?
「かあさま」
「ん?」
青い顔でアカーシャがこちらを見ている。
どうやら緊迫状態はまだ続いていたようだ。
すみません、うちの子のことが心配で気が逸れてました。
「えっと、とりあえずイネス達を呼び戻していいかな?」
「この状況で!?」
アカーシャの悲鳴を聞きながらえっちゃんに手伝ってもらい、洞窟の入口から離れた場所に敷布を敷き、温めたミルクとスコーン、ジャム各種を用意。
クッションの上にシャムスを座らせ、洞窟に向かって呼びかけてもらいます。
「シャムスお願い」
『おやつですよー』
「おやぁつ!」
「です!」
「オラオラー!」
遊びに行った時の倍の速度で戻ってきて、スライディングからのジャンプで席に着きました。
身体能力高いと違うなぁ。
「わたしは杏!」
「いちご」
「俺はリンゴ! シャムス兄は何にする?」
『おれんじ』
戻ってきたままの勢いでおやつを食べる子供達、なお緊迫状態は今も続いております。
「ミルクんまいな! ところで何で皆でにらめっこしてんの?」
「アカーシャの奪い合いですか? 駄目ですよ刀国民に暗殺されちゃいます」
『涼ちゃんミルクも飲もうね』
「もぐもぐもぐ」
ミルクを一気飲みしたネヴォラが霧の中央を見据えながら首を傾げた。
イネスも誰がいるのか分かっているらしく、二個目を食べながら物騒な忠告をした。
「……」
すぅっと霧が晴れ、姿を見せたのは馬に乗ったフル装備の騎士団。
ここ帝国だからきっと帝国の騎士さんだろう。
先頭の人が馬から降りるとその場で兜を脱ぐ、兜の下から出てきた顔は――皇帝。なぁんだ。
「皇帝もスコーン食うか?」
「ジャムは我が家のだから聖属性付きますよ」
『涼ちゃんお口にジャム付いてます』
「んー」
相手が判明し、敵でないと判断したアカーシャが合図して親衛隊も武器を下した。
武器が下ろされたのを横目に皇帝が僕らに近付いてきたので、適当なジャムを付けてスコーンを差し出してみました。食べるかな?
盛大な溜息を吐いて僕の横に座ると、スコーンを受け取って口に放り込んだけど、そう言えば毒見とかしなくていいのだろうか。
「本当に、ここで何をしているんだ」
「ロデオしに」
素直に答えたら皇帝の眉間の皺が大変なことになった。
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