神様のポイント稼ぎに利用された3

ゆめ

文字の大きさ
上 下
220 / 923
第二章 聖杯にまつわるお話

第216話

しおりを挟む
 アー君が戻るまで散々作った串カツの山は、ネヴォラとイネスが自分達のお店で出す分を除いて全部我が家の夕食になります。
 でもちょっと足りないかな。

「ネヴォラ、新作はもういいかな?」
「うん!」
「じゃあ本日の夕食とデザート作りに入っていいですかー?」
「その前にお昼食べるんよ!」
『ごはーん』
「ドリちゃんお願いしまっす」

 涼玉が声を掛けるとすぐにドリアンらが昼食を運んで来てくれた。
 本日のお昼はどうやらシチューパンらしい、手付きシチュー皿の中に大きなパンが鎮座し、こんがりと焼かれた表面がとても美味しそう。

「わぁ串カツより春っぽい!」
「完全に串カツメインで、本来の目的忘れてましたね!」

 机の真ん中辺りにカゴに山盛りにされたパンが置かれ、それぞれに飲み物が配られた所でいただきます。

「!」
『ドリちゃんの完全勝利なの』
「これだけかって一瞬思った俺らの心理を逆に利用している」

 添えられたスプーンでパンを破った子供たちが衝撃に震え、食べる前からドリちゃんに戦慄している。
 一体このシチューパンにどんな秘密が?

 スプーンを手に取り、蓋の部分を破ればふわりと鼻をくすぐるシチューの香り。
 とろりと煮込まれたシチュー、ここまではそこまで驚くべきことじゃない、じゃあ味?

 まずは一口とシチューにスプーンを入れて気づいた。
 一番上にハンバーグが入ってる!! パンの蓋とシチューの白で気付かなかった!
 さらに食べ進めたら一番下には白飯が入っていました!
 これはシチューじゃない、ドリアだ!!

 シチューにはタケノコやアスパラなど、春の野菜が子供でも食べやすいサイズに切って入っているし、ハンバーグにも野菜がたっぷり。
 野菜をいやんいやん言ってなんとか回避しようとする子供達も、これは残せないだろう。
 美味し過ぎて手が止まらない。

「うはー、俺のパンだけ毒々しい色してるねー!」
「私のは少し冷ましてあるね、ありがたい」

 しかも個々に対するサービスも忘れていないようで、イグちゃんは毒が混ぜ込んだ毒シチュー、ヘラ母さんは熱いのが苦手なので熱々ではなく美味しく食べれる程度の熱さで出したようです。
 気遣いが素晴らしいですね。

「こ、このパン、野菜が練りこまれた部分をさらにパンで覆い隠している!!」
「今日は僕らにとことん野菜を食べさせる気ですね!」
『クロワッサン美味しいーよ』
「俺のパンはカツサンドと見せかけて、白身魚のフライだった」

 どうやらカゴに盛られたパンにも仕込みがしてあったようです、騙されたと悔しがる子供達、君らが楽しく野菜を取れるようにドリちゃんが工夫してくれているんだよ、感謝しなさい。
 ……ただの白飯だと思ったらほんのりカレーの味がしました。
 今日のお昼、手が込んでます!

「たくさん食べちった」
「一番下に入ってたエビピラフが至高でしたぁ~」
『お腹まんまる』
「……」
「イツキ、どうやら涼玉は満腹で寝ちまったようだよ。私が手伝うからチビ達は寝かせてやりな」
「はぁい」
「俺も手伝うよ、毒パンが美味くてつい食べすぎた」

 実は僕も食べ過ぎて動くの辛い。
 眠気が来る前に動かないとダメだね、これは。

「まずは果樹園に行ってデザートの果物選ぼう」

 そして動いて眠気を覚まそう。

 なお、本日の刀雲のお弁当もシチューパン。
 中身は地獄の激辛シチュー、色は白ではなく禍々しい赤。

 匂いだけで甚大な被害が出そうなお弁当だけど、そこはホワイトで有名な刀国王宮、激辛好きな一部のマニアのために食堂の片隅にスペースが設けられ、匂いが漏れないように風の結界が張られたそこで食べたらしい。
 服に匂いが染みついて、そこから出れば周囲に被害が出そうだと思ったけど、結界から出ると自動的にクリーンがかかる仕組みになっているんだって。
 至れり尽くせり……。

 激辛好きに優しいそのスペース、提案騎士様、魔導具製作者は春日さんだそうです。
 騎士様、騎士様、激辛好きに優しいクリーン機能付きの魔道具、我が家にも欲しいです。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! 人外CPにはなりません ストックなくなるまでは07:10に公開 3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

平民男子と騎士団長の行く末

きわ
BL
 平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。  ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。  好きだという気持ちを隠したまま。  過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。  第十一回BL大賞参加作品です。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

市川先生の大人の補習授業

夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。 ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。 「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。 ◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC) ※「*」がついている回は性描写が含まれております。

異世界転生してハーレム作れる能力を手に入れたのに男しかいない世界だった

藤いろ
BL
好きなキャラが男の娘でショック死した主人公。転生の時に貰った能力は皆が自分を愛し何でも言う事を喜んで聞く「ハーレム」。しかし転生した異世界は男しかいない世界だった。 毎週水曜に更新予定です。 宜しければご感想など頂けたら参考にも励みにもなりますのでよろしくお願いいたします。

処理中です...