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第二章 聖杯にまつわるお話

第214話

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 ラミアちゃんって前世オペラ歌手か何かだったのだろうか、声域が素晴らしい。
 ロックの名曲を演奏に合わせて歌い切った時には皆で拍手しました。

 しかし選曲がロックだったせいだろうか、周囲に生えた植物がトゲトゲしています。
 どこに原種があったのか、無から発生したのか不明だけどサボテンもあった。水要員かな?

「にいちゃ、この元雑草噛むと辛い」
「元雑草ってなんだ?」
「一緒に踊ったら違うものに進化した」
「ろっく魂で味変しちったか!」

 僕もその辺にある草を摘んで食べてみたら本当にピリッと辛かったです。
 あれだね、スパイスの原料?

「こっちの木は枝のトゲトゲが塩になったんよ!」
「は?」
『梅用のお塩』
「あっちの木はやけに樹皮がボロボロだと思ったら、梅味だった!」
「意味わからん」
「主上様! 梅酒の木がありましたぞ!! どうぞお味見を!!」
「うん飲むよ、飲むから顔に押し付けないで」

 ロックでノリノリタイムを終えた後はお楽しみ採取タイム、村人も総出で採取中。
 雑草がスパイスの時点ですでに新種しかない気がする。

「ほれネヴォラ、ジャンプ」
「とぉ!」
「採れたかー?」
「イグちゃんナイスなんよ、成熟した梅だった!」

 知らぬ間にイグちゃんが参加していた。
 14本の腕を器用に使ってネヴォラを高所へ送り出し、人の手の届かない所にある実を採らせている。 

「これ辛すぎて味が分からなくなるやつ」
「ハバネロ」
「エヴァは辛いの苦手だからな、優しい辛さはないか!」
「ラミアこっちのサボテンなんか変」
「父様が今齧ったのは出てくる汁がジンジャーエールですね」

 そして当然のように森の奥から邪神兄弟が出てきました。
 いつからいたのだろうか。

 金ちゃんと銀ちゃんは赤い実を試食して火を噴き、白ちゃんはラミアちゃんの頭の上で辛い辛いとジタバタ、黒ちゃんはラミアちゃんの肩で食べさせてもらった実を食べて震えている。
 白ちゃん……暴れるからラミアちゃんの髪の毛がボサボサだよ。

 刺激物ばっかりで幼児が口に入れるのは危険な気がする。
 大丈夫か心配になり、シャムスはどこかと探したら村の入り口に簡易祭壇が作られ、その上にちょこりと座っていました。

『ママー』

 手を振るシャムスの前には新種のスパイスやら調味料が山盛りに並べられていました。
 これ、食べれるのが梅しかなくない?

「アー君、調味料じゃお腹は膨れないと思うんだ」
「大丈夫だよママ、踊りが始まった時点で空き地に走って田んぼ作ってきたから! 今確認してきたけど一面立派な稲が育ってた!」
「調味料は村人が利用する分以外は売りに出せば大丈夫かな」

 さすがアー君、涼玉のダンス効果をちゃんと利用してた!
 一方の騎士様はシャムスに捧げられたスパイスを紙に書き込んで一覧表を作ってくれていました。凄い、出来る文官がここにいる!
 あとで写しを作ってアカーシャと皇帝に届けるそうです。

「夜盗とか大丈夫かな?」
「あの法被、ああ見えてイネスの祝福が効いてるから着ている内は不穏な事態にならない」
「えっ、ただの人間が縫った刺繍だよね?」

 僕の不安をアー君が否定してくれたけど、騎士様が別の疑問に襲われています。

「それがなパパ、イネスの新ぺかぁが強過ぎて精神ぶっ壊れただろ、その壊れた部分を丸ごと補って人間として成立させているのがイネスへの愛なんだよ」
「え、なにそれ異世界怖い」

 その怖い異世界を成立させているのが、何を隠そう騎士様の部下である女神様です。
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