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第二章 聖杯にまつわるお話

第207話

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 それでも合体技をどうしても使いたい涼玉とイネス、初めは過程で消滅したものの、呪文を唱える余裕はあったと気付いたマールスにより、予定を変更してえっちゃんにも参戦してもらうことになりました。

「なるほど、えっちゃんがガチガチに固めてたお陰で多少もってたんだね」
『あい』

 現在のボスでは涼玉とイネスの技を受けきれないと見抜いていたえっちゃん、固めていたのはゾンビ聖女達の足元だけじゃなく、光耐性も弱めで付与させていたらしい。 
 それでも呪文の途中で消えちゃったけどね。

 えっちゃんがボスを再出現させ、闇を練りこんで強化&調整中。
 弱いので強化しすぎると耐えられなくてパーンって弾けてモザイクになっちゃうんだよね、流石のえっちゃんもこれには苦戦中です。

「合図があったら飛び出すぞ」
「みゃ! 生麦生米生卵、青巻紙赤巻紙黄巻紙、かえるぴょこぴょこ3ぴょこぴょこ あわせてぴょこぴょこ6ぴょこぴょこ」

 イネスは呪文を早く唱えるために早口言葉を繰り返しています、ぴょこぴょこ言うイネス可愛い。

「キキ」
「行くぜ」
「かしこみかしこみかしこみかしこみ――」

 イネス、それは最早呪文というより殴り込みの掛け声なんじゃ……。

「かしこみ!」

 イネスが光を解き放つと、光が光線となってゾンビらを貫いた。

「……?」

 ドヤ顔イネスを頭に乗せた涼玉が呆然としているのがよく分かる。
 合体技のはずなのに攻撃したのイネスだけだもんね、涼玉の踊り入ってない。

「言い切れた!」
「なんか違う」
『合体技じゃないの』
「あの勢いなら何を言っても同じ結果だっただろうね」

 多分「そりゃ!」とかでも光線出たと思う。
 これじゃただのイネスの新技披露だね。

「もしかして俺ら強すぎ?」
「その通りかと」

 しょんぼりしながら戻ってきた涼玉に、マールスが落ち着く効果のあるお茶を渡す。
 それは涼玉よりもイネスに飲ませが方がいい気がするなぁ。


「私が聖女よ!」
「今度は誰が行くの?」
「んー俺らはおやつ休憩、ちょうど冒険者来たから譲る」
「ではスコーンを出しましょう、今日の朝焼いたばかりですぞ」
「おう!」

 扉が開いて冒険者が入ってきた!
 入口すぐの所で僕らが寛いでいたのですっごく驚いていました、すみません、今どきます。
 敷布の上から降りようとしたら、下に敷いていた絨毯ごとえっちゃんが移動してくれました。

「すみません、どうぞ」
「へ?」
「リーダー、こういう事もあるって」
「うわっ、人生の幸運使い果たしたかも」
「えぇあれ涼玉様だろ、イネス様までいるんだけど、ひゃぁぁ」
「帰りは採取しながら帰ろう、絶対Aランク出るって」

 混乱しながらもメンバーに促されて攻撃態勢を取るリーダーさん、メンバーはこちらを見ながらきゃぁきゃぁはしゃいでいる。

「お前ら人を前線に出しておいて遊ぶな!」
「あ、はーい」
「シャムス様もいる、やーー可愛いっ!!」
「手を振り返してくれた! 幸せっ!!」
「イネス様、グッズ買いました! 今回の稼ぎでまた購入させてもらいます!」
「涼玉様のおかげで俺の故郷が救われました! ありがとうございます!」

 一人真面目に戦うリーダー。
 悪い悪いと言いながらも僕らに釘付けの仲間たち。

 手を振り返して笑ううちの子、イネス以外も中々人気があるようです。
 そう言えば帝国の教会にはうちの子の神像があったっけ、冒険者を中心にお布施がジャラジャラだって前に教皇がいい笑顔で言ってたなぁ。

「私が聖女よ! 隣国が攻めてくるのだって知っているんだから!」
「その国はもうないってーの!」
「リーダー頑張って!」
「うわ、これ美味しいっ」
「神からおやつを貰ってしまった」
「俺、祝福貰っちゃったけど、え、明日死ぬの?」
「少ないけど故郷で採れた新種の果実です、お納めください」

 戦闘はリーダーに任せ、神への参拝を優先する仲間たち。
 きっとリーダーの強さを信頼しているからに違いない、そうだと言ってほしい。

 一応えっちゃんが影ながらフォローしているので、苦戦はしないと思うけど、ハラハラしますね。

「すっぺぇ、きゅーってなる、頬っぺたがきゅーってなる!」
『ママの梅干しよりずっと酸っぱいねぇ』
「んんっ白飯食べたいです!」

 故郷で採れた新種の果実は梅だった。
 納められた梅干しを食べながらとても楽しそうです。

「故郷のかあちゃに米送ってやるといいぞ、梅干しと合うから」
『おにぎりは正義よ』
「上の階で売ってます」

 子供達のこれは神託と営業どっちだろうか。
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