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第二章 聖杯にまつわるお話

第206話

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 本日はちょっとした好奇心で鍋ダンジョンのボス部屋に来ております。

「これは検証です」
『検証なの』
「悪戯とは違う」
「はいです!」

 メンバーは僕、シャムスと涼玉、イネス。
 えっちゃんとマールスもいるよ?
 でもえっちゃんは僕と、マールスは涼玉とセットだからイチイチ数える必要ないと思っています。

「あぁぁ!! 私は、聖女ぉぉ!!」
「復活してるね、アー君廃棄するの忘れた?」
『違うのよ』
「業が深くてただ奈落に落とすより、ボスとして痛い目見て贖罪させる方が有益だって言ってた」
「アー君がどうにかするまで何度でも復活するので、レベリングの穴場なんです」

 イネスのぺかぁは即死してしまうのでここでは封印、本日の主役は涼玉です。
 僕の役割は見守り&応援団、シャムスとイネスは合体技を試したり一緒に戦ったりするみたいだけどね。

「行くぜ! まずは安全を優先してイネスと合体技!」
「はい!」

 部屋に入った時点でボスは動き出しているはずなのに、僕らに対して攻撃をしてくる様子がない?
 それはね、部屋に入った時点でえっちゃんがボスの動き止めているからです。最強のサポーターだよね。

「どれにしますか?」
「まずはにいちゃから教わった龍神祝詞!」
「はいです!」

 今日は目に優しくない攻撃ばかりと予測されるため、えっちゃんが作ってくれた結界に遮光が付いています。
 普通の遮光ではダメだけど、えっちゃんに謎能力も混ざっているから大丈夫だろう。

「愚かなる心の数々を戒め給いて」

 涼玉が両手を上げ、短い脚で立ち上がるとステップを踏み始めた。

「一切衆生の罪穢れの衣を脱ぎさらしめ給いて」

 続くイネスが一緒に謡いながら涼玉の周囲をトントンと跳ね回る。
 淡い光を放つ足跡、あれ、亡者にとっては地雷のようなもので、踏んだ瞬間消滅するらしい、お茶の準備をしながらマールスが解説してくれた。

「かしこみかしこみ」
「かしこみかしこみもおす」

 呪文を唱え、魔力を練ることで威力が増す。
 ……練らなくても威力があるのに、手順を踏んだらどうなるのだろうか。

「かあちゃ」
「魔力を練る過程で相手が消えたー」

 こうなるらしい。

 力を開放する前に敵が消えたので、練り上げられた魔力がビカビカ光って部屋を照らしております。

「もうちょっと威力弱めないとだめかー」
「だめですねー」

 がっかりする二人が結界内に入ってくると、えっちゃんが何やらゴソゴソして、ボスと取り巻きが復活した。
 ゲームで言うならば改造コードとか裏技的なあれだろうか。

「私は聖女、私は聖女聖女聖女聖女、キヒ、ヒヒヒ!!」
『こわぁい』
「イネスもう一回な」
「はぁい」

 お茶を一杯飲んだ涼玉とイネスが、今度は前文を飛ばして「かしこみ」だけ唱えようと打合せしながら外に出ていったんだけど……イネスが口を開こうとした瞬間にボスが消えた。

『イネスの存在に耐えられない弱さが敗因ね』
「私の輝きが罪です!」
「マールス今のは?」
「力を使おうとして魔力を高めたら、相手が弱すぎてそれにすら耐えられなかったのでしょう」
『神聖特効ね』
「私の存在自体が弱点?」
『あい』

 イネスの魔力に耐えるにはもう少しランクの高い相手じゃないとダメみたい、それを考えると魔力駄々洩れ状態のイネスを肩に乗せられるラーシャって結構耐性ついてきてるんじゃない?
 愛の力だね!
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