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第二章 聖杯にまつわるお話

第203話

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 やらかし皇子曰く、ヨモギを見つけたから涼玉の背に植えてみた。
 朝食を食べ、ちょっとごろごろしてから遊びに来たら、収穫地獄はすでに始まっていました。

「品質がアップするだけだと思ってた」
「こんなに増えるなんてやっちまったなぁと思ってます」
「好奇心に負けた」
「非常に遺憾です」
「兄弟を止められずに申し訳ないです」

 悪戯の罰としてドリアンチームの手を借りず、自分たちで収穫をやらされていた。
 ただ涼玉の影響が強く残っている状態なので抜いても抜いても生えてくる、根っこごと抜こうが関係なく一つ抜くと三つ増える勢いで増えるのが止まらないみたいです。

「女神様の回遊庭園が」
『ヨモギの絨毯』
「俺が来たから効果どん!」

 視界に広がる一面のヨモギ、歩く場所から池の上まで浸食している。

「ママ助けてぇ」
「無理かな」
『無理よ』
「俺を置いてくるよう言えば良かったのにな! ワハハハ!!」

 せめてもの救いは処理の方はスライムチームがやってくれていることかな、あく抜きからペースト状に加工する処理まで一匹でやれるのが凄いよね。
 ただ容量限界があるので、本日は我が家のスラちゃんたちも連れてきました。

 本当は収穫しながら処理した方が楽らしいけれど、そこは皇子達への罰だから仕方ない。

「でもこのヨモギ、洗い立てのシャムスみたいにふわふわ」
『風味も強いね』
「じゃあ俺らは消費を手伝うか!」
「涼玉様、その前に調理する必要がありますぞ」
「おう」

 そういう訳で半泣き状態で収穫する皇子らを背に、僕らはおやつ作りです。

「女神様も丸めるぐらいなら出来ますよね」
「任せろ、それぐらいならなんとか!」

 ふと思ったのだけど、女神様が料理系駄目なのって騎士様の影響じゃない?
 騎士様もとことん家事全般駄目なんだよね、ヘラ母さんに弟子入りしたこともあったぐらい。

『スラちゃん出番よ、お餅とヨモギ混ぜ混ぜしてね』
「俺、ヨモギスコーン食べてみたい」
「ではそれは我が作りましょう」

 それからは皆で練ったり捏ねたり搗いたり忙し働きました。
 作っても作っても追加されるヨモギに、今夜はヨモギの夢を見るに違いないと確信した。

「イツキ」
「はい?」
「呼んでおいてあれだけどさ、私もう食べる以前に見るの嫌なんだけど」
「奇遇ですね、僕もです」

 けれど庭はまだ無限のヨモギが広がっている。
 だって涼玉がいるから豊穣の加護が効いちゃってるからね!!

 スラちゃん達もなんだか動きが鈍い気がする。
 ドリちゃんがいないからエネルギー供給出来てないとか?

「帝国っていいよな、城勤めする大臣がたくさんいるんだぜ」
「きっと日々のお仕事で疲れていますよね」
『甘味喜ぶよ』
「俺ら優しいなー」
「神の慈悲ですな」

 満場一致でヨモギフードをお城の皆さんに配ることが決まった。

「かあちゃん、俺が届けてくるよ!!」
「いやいや俺が!」
「ぼくやるよ」
「お前らは摘み作業に戻りな!!」
「むじひぃ」

 地味な作業に嫌気がさしていた皇子らが、お遣いに名乗りを上げたけど即却下されていた。
 配達人に指名されたのは、離宮の警備をする騎士の方々だった。

「え、護衛さんをそんな使い方していいんですか?」
「大丈夫だ、指名したのは教会から派遣された聖騎士だから、言わば私の手足!」
「なるほど?」
 
 最終的にもう無計画な悪戯はしないと帝国皇子らが女神様に泣きついたので、もうヨモギを見たくない女神様もそれを受け入れてお仕置きは終了。
 離宮にいるスライムを全てスーパースラちゃんに進化させ、離宮に解き放ったのでそのうち何とかなるだろうとのシャムスのお言葉です。

 以降のヨモギはスーパースラちゃん達が調理まで通しでやってくれるので、僕らも解散です。

「よし、女神の慈悲だ。城で配り切れなかったヨモギは教会に押し付けて、臣民に配ってもらおう!」
「女神様、本音漏れてます」

 押し付けるとか言っちゃってますよ。
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