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第二章 聖杯にまつわるお話

第201話

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 イネスのおねだりポーズは刀雲と騎士様の間で取り合いになりそうになった所、呆れたアー君が座敷隣の部屋の壁に棚を設置し、そこに全てのミニチュアを飾った。 
 たまにしか使われない部屋がまさかの活躍。

 シャムスは花びらまみれになって笑う姿、アー君は桜餅を食べ、涼玉は殻が桜の花になっている。
 桜の枝を持つ兎に、うちには兎いないはずだけどなーと思ったら僕のミニチュアでした。
 ミニチュアさえもポンチョを着ているっ。

 エム、ロー、ルドのもあって、エムは眼鏡をかけて読書、ローはエプロンをかけてお菓子作り、ルドは優雅にお茶を飲んでいる姿なんだけど……僕らは可愛くデフォルメされているのに対し、あの三匹だけなぜちょっと美化された感じなんだろうか。
 裏で賄賂でも渡した?

「うふふー、ラーシャどうです?」
「イネスの愛らしさが良く表れている」
「くふふ」

 ラーシャに賞賛の言葉を貰ったイネスがご機嫌です。

「ラーシャも欲しいですか?」
「いや、俺は……」
「欲しいですよね?」
「はい」

 拒否を許さないスタイルのイネス、番が強いと大変ですね。

「ふんふふーん、ネヴォラに注文しなきゃ! どんなポーズの私がいいですか?」
「どんなイネスも好きです! はい!」

 ヤンデレモードに移行するのを阻止するため、シャキシャキと答えるラーシャ。
 最近は王子モードになることもなく、なかなかうまくやっているようで何より。

「お兄ちゃんだけカッコイイのはズルいです」
「大丈夫、大丈夫だから! イネスが一番カッコイイし、可愛いから!」
「そうですか?」
「うんうん!!」

 必死にイネスのご機嫌を取るラーシャを不思議に思って気付いた。そうか、ご機嫌損ねたら夜が大変なんだね。お疲れ様です。

「私のもここ置いていい?」
「おっけーです、ネヴォラは串焼き食べてるんですね」
「一番貢ぎ率が高いからね! もしかしたら刀国で一番串焼きに詳しいよ!」
「今度串焼きツアーしましょう」
「うん!」

 ポン。と尻尾でラーシャの肩を叩くイネス、あれは財布は当然ラーシャだよという宣告だったようで、肩を叩かれたラーシャがこそっと財布の中身を確認していた。
 騎士様経由でアー君からお小遣い貰ってください。

「夕食まであるからちょっと鍋ダンジョン行って来ようかな、ママ何か欲しいものある?」
「春キャベツと新じゃが」
「裏庭菜園にあるよね?」
「あれは通年、僕が欲しいのは旬の野菜」

 豚ロースを入れて塩バター鍋やりたいんだって、ドリちゃんからメニュー画面を通じてアピールされてるんだよね。

「あと手羽先や春菊もあったらいいなぁって」
「アー君一人じゃ間に合わないだろうから私も一緒に行ってやるんよ!」
「じゃあ私たちも行きますよラーシャ」
「俺の休日……あ、はい、行きます」

 アー君が出発したら騎士様が僕の視界の隅でそわそわしている。

「騎士様は庭で鯛を確保して来てください、他の魚もあってもいいですけど、鯛は絶対ほしいみたいです」
「分かった任せて!」

 頼ってみたらキラキラが強くなって目がちょっと痛かったです。うぅ、美形のキラキラは攻撃力が高い。

「じゃあシャムスと涼玉は俺と裏庭菜園に行ってくるか」
『あい!!』
「白菜食べたいな」
「刀雲、デザートはどうする?」
「昼が終わってからずっとタイガが作っているから大丈夫だ、デザートは任せて俺たちはメインに力を入れよう」
「うん」

 じゃあ行ってくると刀雲が頬っぺにキスをしてくれました。

『僕もちゅー』
「俺も俺も」
「じゃあ俺も!」

 続くシャムスと涼玉、そして騎士様。
 競争するように顔中にちゅっちゅされ、何とか送り出してじゃあ僕も下拵えを……と思ったら、なぜか騎士様の膝の間に座らされています。

「たまには樹もゆっくりしようね」

 一本の釣り竿を一緒に持たされてはいるけれど、背中から感じる騎士様の体温が、こう、眠気を誘うんです。
 天気もいいし、程よくお腹も満たされて幸せ。

「樹寝ちゃったの?」

 くすくすと響く低音がこれまた気持ちよくて、僕はそのまま眠気に身をゆだねた。
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