神様のポイント稼ぎに利用された3

ゆめ

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第二章 聖杯にまつわるお話

第195話

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 アー君の友人にちょっとSMを嗜む性癖の子がいる。
 その子は屋台で買い食いをしていたルビーのような瞳を持つインキュバスと意気投合し、使い魔契約を結んだ。
 常時色気を垂れ流す美形、でもお風呂上りの騎士様ほどの色気はないかな。

「待って、ねぇ待って、このダンジョンにそんな魔物いないよね!?」

 大人数で道の真ん中を占領するわけにもいかないので、食事スペースのあるお店の奥を貸し切って皆の買い物が終わるのを待っていたら、数分もしない内にこの子が入ってきたんだよね。
 なんだろう、目が合った瞬間に同類だと感じあったんだろうか?

「いい男がたくさん訪れると聞いて来ちゃった」
「浄化してやろうか!!」
「やめて、新しい扉を開かせるためには彼の力が必要なんだ!」
「恋人は大事にしてやれや!!」

 あの子の恋人には同情……する必要はないか、割れ鍋に綴じ蓋みたいなカップルだろうし。
 女神様の愛の元、幸せな家庭を築いてください。

 アー君、ダンジョン突入前から疲れていますね、校外学習に来たこと早くも後悔していませんか?

「アルジュナ様、アルジュナ様、面白い奴と使い魔契約結んだ!」
「だれかなぁ」

 笑顔で駆け寄ったクラスメイトに疲れた笑顔を返すアー君、その笑顔、散々やらかしたアー君の後始末をする騎士様にそっくり。

「これ!」
「イーー!」
「子分その1じゃねぇか!」

 全身黒タイツのような姿をした没個性の子分、あれを使い魔に誘うとはチャレンジャーだなぁ。
 見た目はあんなだけど、能力はそれなりにあるとは思う、何せ元々は空に開いた謎の穴にいた異形の魔物の一匹だし。

「ちょっと待てお前ら、なんでダンジョンじゃなくて手前の安全地帯で契約しまくってんの!?」
「理性があって意思疎通ができるから契約交渉ができるんです」
「神子様のおかげで安全だし」
「野生の魔物と交渉するより命の危険がない」

 使い魔探しよりも食べることを優先し、店内で食べていたアー君のクラスメイトが律義に答えてくれた。

「じゃあ私も誰かの使い魔やってみていいか?」
「やめて」
「やめてやめて」
「ゴブリンに殺される」
「拷問されちゃう」
「ダンジョン立入禁止になっちゃう」
「R指定なことされる」

 手に持った串焼きを食いちぎりながら会話に乱入したネヴォラに、生徒たちが一斉に首を横に振っている。
 ちなみに串焼きとは反対側の手は誰かと手を繋いでいるのだけど……スルーしていいかな。
 存在感が凄くてスルーするの無理があるけど、でも直視したくないんです。

(ママ聞いて)
(いやぁ、ちょっと遠慮したいなぁ)

 アー君が脳内で語り掛けてきた。
 現実逃避したいのはお互い様だったようです。

「武者修行に来てたオーガのおっちゃん、串焼き奢ってくれた」
「……オーガの亜種……Sランク指定の魔物だね!」

 アー君が地面に向かって叫んでいる。
 大丈夫?
 膝枕する?

「アルジュナ様、現実から目を離している隙にロマンが生まれたぞ」
「ネヴォラが連れてきたオーガが先生を口説いてる」
「はぁぁ??」

 思わずアー君と一緒に顔を上げたら、漆黒の皮膚を持つムッキムキのオーガらしき魔物がアー君の担任の先生に壁ドンしてました。
 なお使い魔がオーガから先生を守らないのは女神様の呪いの一環です、敵対すれば守護に回るだろうけど、口説いたり押し倒している時は働かないのはデフォルトなんです。迷惑ですよね。
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