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第二章 聖杯にまつわるお話

第194話

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 ダンジョンの地形が変わっているのはよくある事だとして。
 デパ地下のような試食会場になっていると誰が思うだろうか。

 ちょっと前、宰相さんに聞かされたダンジョンの面影などもうどこにもなかった。
 地面に突き刺した棒に布をかけただけのような簡単な作りの屋台から、店の奥が食事できるスペースになっている大きな店まであって、どのお店も盛況です。

「はい、試食だよぉ! 一口どうぞ!」
「んまいな!」
『こしあん』
「この米、うちのより味が濃い!」

 しかもうちの子たちが試食戦争に引っかかってダンジョンの奥に進めません。
 下手なボスより攻略が難しいだと?

「天ぷらの粉はすぐそこで栽培してるやつだよ!」
「実をパカッと開けて出てくる粉にまぶして油で揚げるだけ!」
「これ……輸入できないだろうか」
「ダンジョンってなんだっけ?」
「朱、これを食べてみろ、熱いから気をつけてな。ふーふー」

 カイちゃんが真面目な顔で考えている横で、朱とボスがイチャイチャしている。

「ボスこれ買ってー」
「天ぷら土産に買ってください!」

 僕らだけでなく獣人団も試食を楽しみ、目的を忘れてボスにおねだりをしている。
 周囲を見渡せば冒険者もホイホイ引っかかっており、お金がないと嘆く相手には帰りはたっぷり買ってくれよなと言って試食セットの入った巾着を渡していた。
 サービスが凄い。

「今日はもち米がお買い得だよぉ!」
「もち米を混ぜて作ったおはぎ、安いよ美味いよ!」
『アー君、一個買って』
「にいちゃ、俺はヨモギ味!」
「いいとも」

 ……あれ?

 登校したはずのアー君がいるんだけど。
 嬉々として兄弟にあれこれ買ってあげている。

「アー君、学園は?」
「校外学習を提案してクラスごと連れてきた!」

 先生そこにいる。と言われてそちらを見たら、アー君の担任の先生が生徒にたかられていた。
 小銭を出すのが追い付かず、最終的にギルドカードを出してそれで支払いを済ませていた。
 右肩にスライム、左肩に烏、頭の上にスライムをもう一匹、あれからだいぶ経ったけれど仲良くやっているようで安心しました。

「使い魔授業進めるにも使い魔が見つからなくてな、ついでだから今日選ぶ」
「カタカタ」
「いや、確かに安いけど、うち餅食べないだろ」
「カッタタタタタ!!」
「分かった。買う、買うから、ドクロで迫らないで」

 使い魔の圧力に負けてるんだけど、あれ大丈夫?

「これ買って! 買って買って買ってぇぇえぇ!!」
「お前悪魔だろ! 自分で買えよ!」
「財宝は持ってても小銭持ってないんだよ! 一生のお願い、この木の実買って! 新しい茶の気配がする!」

 子供のような駄々をこねているのはセバツーだった。
 最終的にアー君に泣きついて宝石を買ってもらい、そのお金で買い物をしていました。
 それでいいのか悪魔。

「へぇ使い魔ねぇ、いいよ、いいよ、俺で良ければ仲間になるよ。スープ作るの飽きてきたし」
「やったー!」

 そんな会話を交わすのはコーンスープ屋台の店主、ダンジョンの湧き出る魔物から巡回ボスに転職、冒険者と殴り合いで仲良くなったのを機にスープ屋台を始めた経歴を持つ魔物さんです。
 元はただの黒豚の魔物だったらしいけれど、今はムキムキの筋肉を持つ岩のようなおやじさん。

 あれを使い魔にスカウトするアー君の同級生の度胸が凄いと思います。
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