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第二章 聖杯にまつわるお話

第183話

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 昨晩の話が気になったので帝国の元スラムにやって参りました。
 元と付くのはすでにスラムがないから、イネスの王都を中心にした特大ぺかぁ、あれね、建物にも効果があったらしくって、古びて朽そうだった建物が再生したんだって。
 神聖魔法だけでそうなる訳がないから、謎能力がなんか力貸したんじゃないかというのがアー君の推測。

 謎能力すげぇ。

 そして元スラムは現在、オタクの聖地と呼ばれている。
 区画整理の主動も区画の名付けも女神様です。いいのだろうか。

 女神様は自分に振り分けられている予算だけでなく、アー君とアカーシャ、教会に資金提供を頼み、豊富な資金を使って建物を補強したり塗り替えたり、道を舗装強化したりと割と本気で取り組んだと、本日の案内人である教皇が説明している。
 ……いや、街に入ろうとしたらいたんです。
 スルーしようとしたけど「久しぶりに会った夫に冷たいですね」と微笑みながら捕獲され、腰に腕を回され逃げられなくなりました。

 オレンジやブルーなど、カラフルな色で塗られた木組みのこの建物、刀国にもありますね。
 教皇も「女神様の故郷にある街並みを再現したのですよ」と言っているし、間違いないだろう。

「あっちのとおりはー?」
「あちらは主に近隣の住人や店員が利用する大衆食堂が並んでいます」
「俺らも使えるか?」
「もちろんですよ」

 シャムスと涼玉はすぐに教皇の同行を受け入れたけど、僕はちょっと納得しかねる。
 誰だスケジュール漏らしたの……アー君だろうか、前回派手に動いて結果迷惑かけたし。

「女神様が異世界オタク活動に本気をだした結果」

 異世界の中でも強大な領土を誇る帝国の首都に書店街が出来上がっていた。

 通りはイネスグッズを始めとした神様グッズや女神様直筆の聖書、女神様の祝福を受けた巫女が書いた聖書、それらに感銘を受け作家になった人が書いたアダルト書物などなど、神聖なものから怪しいものまで様々な品が売られているらしい。
 ただしショタの純粋さを穢すのは悪という圧が某神様からあったので、聖書系は未成年入店不可のお店でのみ販売をするという取り決めがされており、もし破ると神罰が気軽に下るとのことです、商品管理には気を付けてくださいね。

 書店の店頭に並ぶのはネリちゃんの書いた優しい絵本シリーズ、見つけたシャムスがきゃぁきゃぁと自分のことのように喜んでいる。
 ネリちゃんの絵本の横に並べられている「レモンの騎士」という絵本がちょっと気になります。

『これ、レモン国の先代王様が書いたの』
「隠居後の趣味だな」

 アー君はこの街の話を聞き、絵描きの才能がある人間をギルドを通して募集し始めた。
 何でもお気に入りの漫画をこの世界でも広めたいんだって、そのためには人材育成に資金を惜しむつもりはないとか。
 あと「貴族専門の学校が一つ潰れたから、あれを育成学校として再利用するのも手だな」と目をギラつかせていたよ。あれは本気の目だった。

『スラム街が世界初のキャラグッズの聖地になったの!』
「タイガも商品卸したって言ってたけど、俺らは入れない店だって」
「かあちゃんが張り切って地球から色々ゲーム輸入したって言ってた、あっちかなぁ」
「なんだっけ、リバーシブル?」
「異世界知識チートするならこれだ! とか叫んでたよな」

 アー君は学園なのでシャムスと涼玉を連れてやってきたのだけど、いつの間にか帝国兄弟が混ざっていました。
 街に入った時はいなかった気がするんだけどなー?
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