神様のポイント稼ぎに利用された3

ゆめ

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第二章 聖杯にまつわるお話

第179話

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 ウルガを筆頭とした戦士の部族から部族名を付けて欲しいと嘆願があり、満場一致で女神様に依頼を出した。
 依頼料は荒野ワイン1ダースと荒野の聖域産おつまみ詰め合わせ、スラちゃんを聖域に解き放ったら一晩で作ってくれました。

「 Krieger(クリーガァ)?」
「ドイツ語で戦士という意味があるんだって」

 前に好奇心から女神様に様々な国の言語を知っている理由を聞いた。
 答えは「他国のBLにも興味があった」、とてもいい笑顔でしたね。

 言語が堪能な理由の根本にあるのがエロかぁ、そりゃぁ教会も文字を広めるための道具としてエロ本を読ませようとするわけだ、だって自分達が崇める女神が率先してそれやってるんだもの。
 おっとエロ本じゃなかった聖典だった。

「で、ワインを飲んだ女神様からワインの追加発注が来たよ」
「早いわっ! もっとゆっくり、味わって飲めよ!」
「炎帝さんがワイン気に入っちゃったみたい、あと皇帝がちょっと面貸せだって」
「説教案件」
『知らないところで何やっとんじゃこらー』
「朝起きたら頭痛の種が別の種類に代わっていた件」

 今回呼び出されたのは僕じゃないから他人事です。
 だと思ったのになぁ。

「うちの子がクリーガァ一族の戦士の所に行って戦士と恋に落ちて嫁に行くと言われた」

 先にアー君が皇帝に会いに行き、数分後に呼び出された帝国執務室、皇帝の第一声がこれだった。
 皇帝が執務机に肘をつき、組んだ手の上に頭をのせて瞬きもせずこちらを見ている。怖い。

「うちの血筋だなー、番を見つけると一直線なんだよ」
「独身だから、イネスの戦士だから、守ってはくれると思う」
「それ以前に我が息子であり、帝国の皇子だ!」

 話が長くなりそうだおやつを出そう。
 ソファに移動して焼きたてアップルパイを取り出すと、宰相さんがお茶を出してくれるついでに切り分けるナイフとお皿も持ってきてくれた。
 この人……数年前は死神の異名持っていたのに、すっかり丸くなって今では刀国色に染まったよね。

「まず前提として、私は人間で対処するから見守って欲しいと言ったはずだが」
「言ったな。でもそれは領主の件だろ?」
「貴殿らが動かなければあの子はまだうちにいたはず、嫁に行くのは早すぎるだろう」

 アー君と話す皇帝の瞳孔が開いているっぽいけど大丈夫だろうか。
 そう言えば刀雲もうちの子が連れてきた伴侶に対してああいう表情してるなぁ、基本的に皇帝って刀雲と気質が似ている気がしてきた。
 イクメンだし趣味で料理作るし、……釣りはやるだろうか。

「でもさ、蛮族の問題が解決したから戦を建前に使えなくはなっただろ、それで許して。あと俺も後から参加したからどうにもならない」

 アップルパイだけじゃ足りないかなと思い、スコーンとジャムを机に出した所でアー君が気付いて、いそいそと僕の横にやってきた。

「陛下も気が向いたらどうぞ」
「普通に誘え」

 上司であり無二の君主を差し置いて宰相さんと僕はすでに食べ始めています、だってせっかく焼きたてで保存したのだから熱が残っているうちに食べたい。
 ため息交じりにソファに移動してきた皇帝に宰相さんがアップルパイを一切れ差し出した。ただし大きさが自分の取り分より微妙に小さい、きっと切り分けに失敗したんだろう、うん。

「クジ引き……」

 おやつを食べながらなぜ蛮族の所に行ったのか説明したら、皇帝が眉間を抑えたまま動かなくなった。

「……あれ、このアップルパイ、レモンの味しない? 紅茶の味かと思ったけど違うよね!?」
「レモン国の新種? 試作品? そんな感じ」

 こちらのアップルパイは我が家の果樹園で採れたものではなく、レモン国のレモン畑の中で育てられたリンゴ、シャムス宛てにネリちゃんが大量に送ってきたものを使いました。
 レモン国産だからなのか味がちょっとレモン寄り、見た目も食感もリンゴなんだけどね、不思議。
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