183 / 920
第二章 聖杯にまつわるお話
第179話
しおりを挟む
ウルガを筆頭とした戦士の部族から部族名を付けて欲しいと嘆願があり、満場一致で女神様に依頼を出した。
依頼料は荒野ワイン1ダースと荒野の聖域産おつまみ詰め合わせ、スラちゃんを聖域に解き放ったら一晩で作ってくれました。
「 Krieger(クリーガァ)?」
「ドイツ語で戦士という意味があるんだって」
前に好奇心から女神様に様々な国の言語を知っている理由を聞いた。
答えは「他国のBLにも興味があった」、とてもいい笑顔でしたね。
言語が堪能な理由の根本にあるのがエロかぁ、そりゃぁ教会も文字を広めるための道具としてエロ本を読ませようとするわけだ、だって自分達が崇める女神が率先してそれやってるんだもの。
おっとエロ本じゃなかった聖典だった。
「で、ワインを飲んだ女神様からワインの追加発注が来たよ」
「早いわっ! もっとゆっくり、味わって飲めよ!」
「炎帝さんがワイン気に入っちゃったみたい、あと皇帝がちょっと面貸せだって」
「説教案件」
『知らないところで何やっとんじゃこらー』
「朝起きたら頭痛の種が別の種類に代わっていた件」
今回呼び出されたのは僕じゃないから他人事です。
だと思ったのになぁ。
「うちの子がクリーガァ一族の戦士の所に行って戦士と恋に落ちて嫁に行くと言われた」
先にアー君が皇帝に会いに行き、数分後に呼び出された帝国執務室、皇帝の第一声がこれだった。
皇帝が執務机に肘をつき、組んだ手の上に頭をのせて瞬きもせずこちらを見ている。怖い。
「うちの血筋だなー、番を見つけると一直線なんだよ」
「独身だから、イネスの戦士だから、守ってはくれると思う」
「それ以前に我が息子であり、帝国の皇子だ!」
話が長くなりそうだおやつを出そう。
ソファに移動して焼きたてアップルパイを取り出すと、宰相さんがお茶を出してくれるついでに切り分けるナイフとお皿も持ってきてくれた。
この人……数年前は死神の異名持っていたのに、すっかり丸くなって今では刀国色に染まったよね。
「まず前提として、私は人間で対処するから見守って欲しいと言ったはずだが」
「言ったな。でもそれは領主の件だろ?」
「貴殿らが動かなければあの子はまだうちにいたはず、嫁に行くのは早すぎるだろう」
アー君と話す皇帝の瞳孔が開いているっぽいけど大丈夫だろうか。
そう言えば刀雲もうちの子が連れてきた伴侶に対してああいう表情してるなぁ、基本的に皇帝って刀雲と気質が似ている気がしてきた。
イクメンだし趣味で料理作るし、……釣りはやるだろうか。
「でもさ、蛮族の問題が解決したから戦を建前に使えなくはなっただろ、それで許して。あと俺も後から参加したからどうにもならない」
アップルパイだけじゃ足りないかなと思い、スコーンとジャムを机に出した所でアー君が気付いて、いそいそと僕の横にやってきた。
「陛下も気が向いたらどうぞ」
「普通に誘え」
上司であり無二の君主を差し置いて宰相さんと僕はすでに食べ始めています、だってせっかく焼きたてで保存したのだから熱が残っているうちに食べたい。
ため息交じりにソファに移動してきた皇帝に宰相さんがアップルパイを一切れ差し出した。ただし大きさが自分の取り分より微妙に小さい、きっと切り分けに失敗したんだろう、うん。
「クジ引き……」
おやつを食べながらなぜ蛮族の所に行ったのか説明したら、皇帝が眉間を抑えたまま動かなくなった。
「……あれ、このアップルパイ、レモンの味しない? 紅茶の味かと思ったけど違うよね!?」
「レモン国の新種? 試作品? そんな感じ」
こちらのアップルパイは我が家の果樹園で採れたものではなく、レモン国のレモン畑の中で育てられたリンゴ、シャムス宛てにネリちゃんが大量に送ってきたものを使いました。
レモン国産だからなのか味がちょっとレモン寄り、見た目も食感もリンゴなんだけどね、不思議。
依頼料は荒野ワイン1ダースと荒野の聖域産おつまみ詰め合わせ、スラちゃんを聖域に解き放ったら一晩で作ってくれました。
「 Krieger(クリーガァ)?」
「ドイツ語で戦士という意味があるんだって」
前に好奇心から女神様に様々な国の言語を知っている理由を聞いた。
答えは「他国のBLにも興味があった」、とてもいい笑顔でしたね。
言語が堪能な理由の根本にあるのがエロかぁ、そりゃぁ教会も文字を広めるための道具としてエロ本を読ませようとするわけだ、だって自分達が崇める女神が率先してそれやってるんだもの。
おっとエロ本じゃなかった聖典だった。
「で、ワインを飲んだ女神様からワインの追加発注が来たよ」
「早いわっ! もっとゆっくり、味わって飲めよ!」
「炎帝さんがワイン気に入っちゃったみたい、あと皇帝がちょっと面貸せだって」
「説教案件」
『知らないところで何やっとんじゃこらー』
「朝起きたら頭痛の種が別の種類に代わっていた件」
今回呼び出されたのは僕じゃないから他人事です。
だと思ったのになぁ。
「うちの子がクリーガァ一族の戦士の所に行って戦士と恋に落ちて嫁に行くと言われた」
先にアー君が皇帝に会いに行き、数分後に呼び出された帝国執務室、皇帝の第一声がこれだった。
皇帝が執務机に肘をつき、組んだ手の上に頭をのせて瞬きもせずこちらを見ている。怖い。
「うちの血筋だなー、番を見つけると一直線なんだよ」
「独身だから、イネスの戦士だから、守ってはくれると思う」
「それ以前に我が息子であり、帝国の皇子だ!」
話が長くなりそうだおやつを出そう。
ソファに移動して焼きたてアップルパイを取り出すと、宰相さんがお茶を出してくれるついでに切り分けるナイフとお皿も持ってきてくれた。
この人……数年前は死神の異名持っていたのに、すっかり丸くなって今では刀国色に染まったよね。
「まず前提として、私は人間で対処するから見守って欲しいと言ったはずだが」
「言ったな。でもそれは領主の件だろ?」
「貴殿らが動かなければあの子はまだうちにいたはず、嫁に行くのは早すぎるだろう」
アー君と話す皇帝の瞳孔が開いているっぽいけど大丈夫だろうか。
そう言えば刀雲もうちの子が連れてきた伴侶に対してああいう表情してるなぁ、基本的に皇帝って刀雲と気質が似ている気がしてきた。
イクメンだし趣味で料理作るし、……釣りはやるだろうか。
「でもさ、蛮族の問題が解決したから戦を建前に使えなくはなっただろ、それで許して。あと俺も後から参加したからどうにもならない」
アップルパイだけじゃ足りないかなと思い、スコーンとジャムを机に出した所でアー君が気付いて、いそいそと僕の横にやってきた。
「陛下も気が向いたらどうぞ」
「普通に誘え」
上司であり無二の君主を差し置いて宰相さんと僕はすでに食べ始めています、だってせっかく焼きたてで保存したのだから熱が残っているうちに食べたい。
ため息交じりにソファに移動してきた皇帝に宰相さんがアップルパイを一切れ差し出した。ただし大きさが自分の取り分より微妙に小さい、きっと切り分けに失敗したんだろう、うん。
「クジ引き……」
おやつを食べながらなぜ蛮族の所に行ったのか説明したら、皇帝が眉間を抑えたまま動かなくなった。
「……あれ、このアップルパイ、レモンの味しない? 紅茶の味かと思ったけど違うよね!?」
「レモン国の新種? 試作品? そんな感じ」
こちらのアップルパイは我が家の果樹園で採れたものではなく、レモン国のレモン畑の中で育てられたリンゴ、シャムス宛てにネリちゃんが大量に送ってきたものを使いました。
レモン国産だからなのか味がちょっとレモン寄り、見た目も食感もリンゴなんだけどね、不思議。
26
お気に入りに追加
149
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる