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第二章 聖杯にまつわるお話

第163話

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 とりあえず人間で対処するから一先ず見守ってほしいと念を押されました。

「だってイグちゃん」
「へぇい」
「お前も、動くな」
「え!?」
「未知の存在に我ら人間がどこまで対処出来るか試したい」
「えー、女神様未亡人のフラグ?」

 返品は困る。
 あとエネルギーの塊なあの子たちから次期皇帝選ぶとか、泥沼な押し付け合いになりそう。

「死ぬ予定も死ぬつもりもない! 兵士も死なせぬ!」
「ああ良かった」
「やんちゃ盛りだからなー、それこそイツキの一日が食事作りで終わっちまう」
「女神様も女神様で皇帝を家族認識してると思うから、死んだら天変地異の一つや二つ起っちゃいそうだよね」
「相談を持ち掛ける相手を間違えた。なぜ私は神子を呼び出したんだろうな」

 あら大変、皇帝が遠い目をして窓の外を見つめ始めちゃった。
 でも本当に何で僕に相談しようと思ったんだろうか、子供達の誰に聞いても明らかな人選ミスだと言われると思うよ!

「癒し要員だからなイツキは! お茶おかわり!」
「はい」
「イグちゃん僕のお菓子も食べる?」
「いいの!? ラッキー」

 頭を押さえる皇帝を尻目に楽しくお茶タイムを過ごす僕とイグちゃん、二杯目を飲み終えた所でやっと再起動して宰相さんと何やら相談を始めた。

「神子よ、三日おきぐらいで良いので定期的に遊びに来る気はないか」
「え、どうしたの突然」
「小さな報告書まで読むと聖女がたびたび城に侵入しているらしいのだが、狙いが分からない」
「あれじゃねぇ、少しずつ魅了を広げる的なやつ。それでイツキが来るたびに魅了から解放されてるんだろ、全く接触が無くても」
「そうだ」
「完全ないたちごっこだなー、かと言ってイツキの力は魔石に込めても正常に作動する保証は一切ないし、なんなら別の効果出る可能性もあるんだよな。あれだ、サッサと最上級の魅了で染めちゃうか!」

 イグちゃんが過激なこと言いだした。

「具体的には?」
「カイちゃんに頼んで支配下に置いてもらう」
「それ、人間辞めるやつ」

 カイちゃんが嫁いだ砂漠の国ではそれで臣民を支配しているらしいけどね、たまに他国経由での侵入者や暗殺狙いはあるものの、周囲を全て支配下に置いているおかげでハイダル君の子供に刃が届くことはないそうです。
 あれ? カイちゃんはお嫁に行ったはずなのに、ハイダル君が嫁……?

「せめてお城の敷地に入ったら魅了無効化とかどうかなぁ?」
「そっちの方が平和か、人間を隷属させるの見てみたかった」

 イグちゃんの提案、どうやら面白半分だったようです。

「どちらも実行が難しいのだが」
「うちの子の誰かが出来るんじゃないかな? 何なら皇子達にやらせてもいいんじゃない?」
「元気も魔力も有り余ってるしな」
「そうそう、それで結界だけ張ってもらって、あとは……そうだなぁ、イネスにぺかぁってやってもらえばどうにかならない?」
「いっそ教会の連中とイネスファン呼び寄せてさ、ぺかぁって一斉にやらせよう! 絶対に面白いから!」

 愉快犯がここにいる。でも僕も見てみたい。

「やろう!」
「ファンへの声かけはこっちでやるよ」
「お、おい」
「じゃあ僕、イネスと教会に頼んでくるね!」

 よーし久々に面白いイベント発生だね!

「宰相、止めろ!」
「無理です」

 えっちゃんの転移で飛ぶ寸前、皇帝と宰相さんが何やら揉めてたけどどうしたんだろうね!!
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