神様のポイント稼ぎに利用された3

ゆめ

文字の大きさ
上 下
157 / 923
第二章 聖杯にまつわるお話

第153話

しおりを挟む
 縦横無尽に走り、岩の狼を翻弄するロデオ君。
 その背中に乗る涼玉がはしゃいでいるので、森の実りが大変なことになっている。

「いたっ」
「いて、なにこれっ刺さった」
「待って、これ栗じゃん」
「こっちリンゴ、いってぇぇぇ」
「いたいいたいいたい、ケガで動けないから逃げられない」
「これが、噂の、涼玉様、こうかっ、いたっ」

 怪我で動けない人多数、そして容赦なく頭上から落ちてくる季節感を無視した大量の果実や野菜。
 なかなか酷いことになっております。

「ごぼうが顔すれすれに刺さったんだけど!?」
「将軍、ごぼうは土野菜じゃなかったんですかぁぁ」
「まぁそういうこともある」
「土からボコッじゃなく空から降ってくる場合は何野菜になりますか!」
「きゃー、石が落ちてきたーー、ってこれ里芋かよ!」

 バトルも迫力あるけれど、それ以上に野菜の雨の被害が酷い。

「僕らには降ってこないね」
「えっちゃんが結界張ってくれてる」
「えっちゃんありがとー」

 涼玉がイヤッハーと叫ぶたびに木々から落ちてくる重量級の野菜は、裏庭菜園顔負けの立派な大きさです。
 振り落とされない涼玉を褒め称えればいいのか、野菜に埋もれつつある冒険者と騎士さん達を助ければいいのかちょっと迷いますね。

「おれ、やさいにころされる」
「もうすききらいしないからたすけて」
「二度とにんじんのこしません」
「料理長、すまない、料理を残した罰が当たったぜ」

 なんか可哀想になってきた。
 でもなぁあのテンションの涼玉って止められたっけ?

「アー君、涼玉止めて」
「無理かな!」

 即答だった。

「マールス生きてる?」
「っは、申し訳なく」
「マールスが涼玉に置いていかれるなんて珍しいね」
「あの牛が意外と速くて、追いつけませんでした」
「涼玉用にあれこれ能力後付けされたからなー」

 ロデオ中に近寄るとマールスでも容赦なく弾き飛ばそうとするので、離れた所で見守っていたのが今回仇となってしまったらしい。
 大変だなぁとしみじみ思っていたら、何やら刀雲が落ちてきた野菜を一つ手に取り、小型のナイフで皮を剥いたと思ったら、アイテムボックスから出したお味噌をつけて騎士様に食べさせていた。

「新鮮な小かぶだね」
「持ち帰って漬物にでもするか」
「漬物くっさ」
「将軍! 野菜が漬物状になって落ちてくるようになりました!」
「……すまん」

 人参は生のままだよなぁと思いながら拾い、刀雲に剥いてもらったら中身がピクルス漬けの味だった。
 不思議ですね。

「ママ、一つ気付いたことがある」

 騎士様の頭をテーブル代わりに、バリバリと胡瓜の浅漬けを食べながらアー君がこちらを見た。

「空から落ちてくる野菜、あの牛が暮らしている村で育ててる野菜だわ!」
「仕組みが謎だねー」

 前に涼玉のロデオで作物が収穫された状態で積みあがったのが微妙なトラウマになり、被害を減らそうと協議した結果、根野菜ならあんな愉快なことにならないだろうと期待を込めて育て始めたらしい。
 村人の期待を裏切るかのように空から降ってきてます。
 しかも味付けが済んだ状態で。

 涼玉の能力も謎能力に負けず劣らず愉快だよね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! 人外CPにはなりません ストックなくなるまでは07:10に公開 3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

物語なんかじゃない

mahiro
BL
あの日、俺は知った。 俺は彼等に良いように使われ、用が済んだら捨てられる存在であると。 それから数百年後。 俺は転生し、ひとり旅に出ていた。 あてもなくただ、村を点々とする毎日であったのだが、とある人物に遭遇しその日々が変わることとなり………?

欲にまみれた楽しい冒険者生活

小狸日
BL
大量の魔獣によって国が襲われていた。 最後の手段として行った召喚の儀式。 儀式に巻き込まれ、別世界に迷い込んだ拓。 剣と魔法の世界で、魔法が使える様になった拓は冒険者となり、 鍛えられた体、体、身体の逞しい漢達の中で欲望まみれて生きていく。 マッチョ、ガチムチな男の絡みが多く出て来る予定です。 苦手な方はご注意ください。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...