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第二章 聖杯にまつわるお話

第134話

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 打ち上げパーティーから帰宅し、おにぎりとわかめの味噌汁を飲みながらほっと一息。
 だら~っとなった所でアー君がシャキッと背を伸ばした。

「そうだパパ!」
「ん? スルメ食べる?」
「いる! でも違う!」

 刀雲とのんびり飲んでいた騎士様からスルメを受け取り、イネスに奪われないようにぎゅっと握りこんだ。
 会場で食べられたの根に持ってる。

「今日パーティーで使ったゴブレット、実は俺が作った」
「え!? 俺も欲しい!」
「そうじゃない」

 キラキラ効果を発動した騎士様を抑え、何とか本題に入ろうとして失敗し、最終的にプレゼントすることを約束させられていた。

「でもアー君、なんでアー君が作ったゴブレットがあそこにあったの?」
「労働の後は冷たい酒が最高だってあいつらが言ってたから、労働に対するご褒美としていつでも冷たい酒を飲めるように作ってみた」

 試行錯誤してやっと術式を確立することができ、大量生産して今日のパーティーに間に合ったそうです。

「俺のゴブレットにはアー君の肉球スタンプが欲しい」
「分かった。聖女が持ってたのは恐らく俺が一番最初に作ったやつだと思う、あれは確か――」
「アー君からプレゼント貰えるなんて嬉しいなぁ! 氷って自動生成出来る? それとも冷たいのが持続する感じなの?」
「ちょっとパパ煩い!」

 騎士様のハイテンションが止まらない、酔ってああなるような人じゃないから、単純にアー君に何か作ってもらえるのが嬉しいんだろうな。
 肉球でぷにーっと遠ざけても、気持ちいいだけでヘラヘラが止まらない。

「アー君、真面目な話はもう無理じゃない?」
「キェェェェェ!!」

 絶叫したところで酔っぱらいは止められず、最終的に頬っぺたにぶちゅーっとされていた。

「刀雲、おつまみ足りてる?」
「ちょっとママ、酔っぱらいこのままにしてくの!?」
「イツキも座って休め、あれは当分アー君を離さないぞ」
「いやぁぁ、刀雲パパ助けてぇ」
「たまにはいいだろ」

 ふっと笑いをこぼし、ドリアンからノンアルコールカクテルを受け取ると僕に注いでくれた。
 お酒じゃないんだ、僕だって一応この世界基準では成人してるんだけどなぁ。

「重っ! パパ寝ちゃった! 重い! 体格差で動かせない!」
「アー君獣人さんでしょ」
「そう普通より力持ちだから大人ぐらい片手で持てるはず――パパ起きてるなら退いて!」
「バレちゃった、アー君も成長したなぁ。くふふふ」
「刀雲、騎士様が普段よりテンションおかしい、そろそろ寝かせよう」
「そうだな、上掛けを」
「ハイ」

 アー君を抜く代わりに通りがかりのスライムを仕込み、ドリアンに毛布を掛けてもらう。
 岩の上でも寝れる人なので、畳の上でも特に問題ないだろう。神様のトップだけど自宅ではこんな感じの扱いなんだよね。

「ふー、パパにまた捕まる前に寝る!」
「僕らも寝ましょ」
『あい!』
「んじゃ俺も寝床に戻る! マールス抱っこ」
「はい!」

 中々濃い一日だったけど、本日はこの辺で解散。
 おっと就寝時間だと思ったら僕も急に眠気が来た、いけない、せめて子供達が寝るのを見守って、から……。

「ママお休みです」
「俺より寝つきがいい」
『パパおやすみぃ』
「みんなお休み、いい夢を」

 刀雲の低音ボイスを子守唄に僕はすやぁと眠りについたのだった。
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