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第二章 聖杯にまつわるお話

第132話

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 ダンスお披露目タイムが終わり、双子とイネスとネヴォラが僕らの所へ戻ってきた。

「ママー!」
「イツキどうだった? わたしたち上手だった?」
「ごめん見えなかった」
「「!?」」

 僕の言葉に衝撃を受けている二人を獣人さんが椅子に座らせてくれた。

「まぁ……あれは無理だよな」
「なんで、なんでぇ」
「ネヴォラの体を軸にぐるぐる上手に出来たんですよ?」

 アー君の言葉にイネスが目をうるうるさせている。これってラーシャにバレたら恨まれないかな?
 それにしてもそんな大技やったのか、もしやあの一際キラキラが強くなった時だろうか。

「多分だけど、ママだけじゃなくてほとんどの人間が見えてなかったと思う」
「あんなに完璧に踊ったのに!?」
「ママ、なんで見えなかったの?」
「速すぎて目で追えなかった」

 お膝の上に移動してきたイネスに正直に答えたらうるうるが止まった。

「動きは完璧でも、あの速度じゃ相当の熟練者じゃないと見えなかったと思うぞ」
「失敗しちったな!」
「でもくるくる楽しかったです」

 双子の速度の十倍ぐらい? いやもっと速かったかな?
 なんかもうキラキラ演出を振りまくために行ったのかと思うぐらい、双子の周りがキラキラして綺麗でした。

「練習頑張りすぎちった。次は見える速度を練習すんの」
「むぅ~、シャムスは見えました?」
『見えたよ、キラキラ綺麗だったの』
「ならいいです」

 ふんすと可愛らしい鼻息を一つ吐き出すと、イネスは膝の上で一回転して小さな豹に戻った。

「ママ、海老さん」
「じゃあ甘えびのお寿司をどうぞ」
「あーん」
「私も何か食べる! 兄ちゃんそれなに?」
「俺はびんちょう鮪のイカ丼」
「僕はホタテのバター醤油ピザ」
「ん、んーー、ピザで!」
「承知いたしました」

 双子が静かだと思ったらお腹が空いていたらしく、黙々と食べていました。
 どうやら人前で真面目に踊ることに今更緊張してしまい、朝からほとんど食べていなかったらしい。

「前世持ちなのに?」
「前世が王でも緊張するの!」
「真面目に発表なんて前世でも今生でも初めてだよ」

 割と本気で疲れているらしい二人のために、兎の獣人さんにお願いして丼物を二つ作ってきてもらった。

「こんなメニューあったっけ?」
「一通り見て回ったけどなかった気がする」

 二人の前に置かれたのは白飯の上にSランク牛で作られたローストビーフとステーキ、生卵がのせられた極上ローストビーフ丼。
 もちろん会場にはない一品だけど、白いご飯は食べ放題になっているのでそこに二つをのせれば完成です。

「イツキ、イツキ!」
「はいはい、ネヴォラも食べるんだね。他に食べたい人」
「!!」

 アー君とイネス、シャムスもシュバッと手を挙げ、涼玉に至ってはマールスがすでに作りに行っていた。
 そして仲良く食べ始めた所で周囲が子供たちの食べているスペシャル丼に気付き、ローストビーフに群がるという光景が見られた。

 ごめん皇帝、お肉足りなくなるかもしれない。
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