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第二章 聖杯にまつわるお話
第120話
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村はとても簡素だった。
ゲームに出てくる始まりの村のようにとてものどかな感じ。
「個人宅も作ったけど、今一番人気なのは食堂付き宿舎だな」
『三食無料よ』
「食堂のおっちゃんは元スラムの住人でな、経営してた宿屋が貴族の不興を買って潰されたらしい」
「その貴族はすでにイグちゃんのお腹の中です」
腕を見込んで宿舎の管理人を任せたところ、号泣しながらも承諾してくれたそうです。
「他にもこの間のスラム狩りで集めた人材を投入したから、ちょっとだけ食事事情も改善できたんだ」
友人から借り受けた大事な人材、不自由なくブラックな環境で働いてもらうためにも食事と睡眠ぐらいは整えようと頑張った結果、偏ったみたいです。
説明しながらゆっくり歩いていたら、前方から牛の群れがこちらに向かってきた。
ロデオもびっくりな勢いで迫ってきたと思ったら、僕らの前で急停止したけどこれどうすれば?
『お迎えありがと』
「ママ、乗るぞ」
「え、乗るの? 涼玉は?」
『特別な牛さん呼んだからだいじょーぶ』
シャムスが手を叩くと牛たちの間から一回り以上大きな黒牛が現れた。
牛だけど、角が四本ある上に燃えるような深紅な時点で魔物だと予想できますね。
「こちら、ロデオを夢見る涼玉のために品種交配を重ねた現時点で最強の牛です」
「フーーーー!!」
鼻息でちょっとよろめいた。
強者感が凄いね。筋肉もりもり。
「さ、涼玉様」
「おう、乗るぞ、乗っちゃうからな」
マールスがそっと涼玉を牛の背に乗せた瞬間、牛の足が地面にめり込んだ。
黒い牛は全身に力を入れて耐えている!
「フン!!」
「やっぱだめ?」
「待てよ……ママ、ほら応援して!」
「そうだね! 頑張って牛さん! 涼玉の夢叶えてね!」
「ンモォォォ!!」
全身から闘志を漲らせ、牛さんが力強く顔を上げた。
そして一歩足を前に出して歩き出した。
「うおおおお、俺、乗ってる! 牛に乗ってる! マールス!!」
「良かったですな涼玉様!!」
殻の取れない幼児ドラゴンだけど、涼玉って外見からは想像も付かないほど重量があってマールス以外に抱っこできる人は限られているんだよね。
そんなだから何かに乗ることもままならなくて、ずっともふもふズたちに乗って移動することを夢見ていた。
「わー凄い! 牛さんカッコイイ!」
「その調子!」
「涼玉を乗せてくれてありがとう、よっ世界一!」
「んもぉーー!!」
『イネス、僕らも牛さんに乗せてもらおう』
「はいです!」
それぞれ僕らを乗せると、牛たちは元来た道を戻り始めた。
先頭はもちろん涼玉を乗せている牛さん、戻る途中で地面に倒れている人がいたけれど、大丈夫なのかな?
ゲームに出てくる始まりの村のようにとてものどかな感じ。
「個人宅も作ったけど、今一番人気なのは食堂付き宿舎だな」
『三食無料よ』
「食堂のおっちゃんは元スラムの住人でな、経営してた宿屋が貴族の不興を買って潰されたらしい」
「その貴族はすでにイグちゃんのお腹の中です」
腕を見込んで宿舎の管理人を任せたところ、号泣しながらも承諾してくれたそうです。
「他にもこの間のスラム狩りで集めた人材を投入したから、ちょっとだけ食事事情も改善できたんだ」
友人から借り受けた大事な人材、不自由なくブラックな環境で働いてもらうためにも食事と睡眠ぐらいは整えようと頑張った結果、偏ったみたいです。
説明しながらゆっくり歩いていたら、前方から牛の群れがこちらに向かってきた。
ロデオもびっくりな勢いで迫ってきたと思ったら、僕らの前で急停止したけどこれどうすれば?
『お迎えありがと』
「ママ、乗るぞ」
「え、乗るの? 涼玉は?」
『特別な牛さん呼んだからだいじょーぶ』
シャムスが手を叩くと牛たちの間から一回り以上大きな黒牛が現れた。
牛だけど、角が四本ある上に燃えるような深紅な時点で魔物だと予想できますね。
「こちら、ロデオを夢見る涼玉のために品種交配を重ねた現時点で最強の牛です」
「フーーーー!!」
鼻息でちょっとよろめいた。
強者感が凄いね。筋肉もりもり。
「さ、涼玉様」
「おう、乗るぞ、乗っちゃうからな」
マールスがそっと涼玉を牛の背に乗せた瞬間、牛の足が地面にめり込んだ。
黒い牛は全身に力を入れて耐えている!
「フン!!」
「やっぱだめ?」
「待てよ……ママ、ほら応援して!」
「そうだね! 頑張って牛さん! 涼玉の夢叶えてね!」
「ンモォォォ!!」
全身から闘志を漲らせ、牛さんが力強く顔を上げた。
そして一歩足を前に出して歩き出した。
「うおおおお、俺、乗ってる! 牛に乗ってる! マールス!!」
「良かったですな涼玉様!!」
殻の取れない幼児ドラゴンだけど、涼玉って外見からは想像も付かないほど重量があってマールス以外に抱っこできる人は限られているんだよね。
そんなだから何かに乗ることもままならなくて、ずっともふもふズたちに乗って移動することを夢見ていた。
「わー凄い! 牛さんカッコイイ!」
「その調子!」
「涼玉を乗せてくれてありがとう、よっ世界一!」
「んもぉーー!!」
『イネス、僕らも牛さんに乗せてもらおう』
「はいです!」
それぞれ僕らを乗せると、牛たちは元来た道を戻り始めた。
先頭はもちろん涼玉を乗せている牛さん、戻る途中で地面に倒れている人がいたけれど、大丈夫なのかな?
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