神様のポイント稼ぎに利用された3

ゆめ

文字の大きさ
上 下
121 / 927
第二章 聖杯にまつわるお話

第118話

しおりを挟む
 僕は今、アー君が皇帝から押し付けられた広大な農地の中心地にいる。
 どうやらここはアー君が拠点にしている屋敷がある土地らしく、降り立った庭だけでも我が家がすっぽり入りそうな巨大な庭園でした。お屋敷見えない。
 もちろん移動はえっちゃん! 転移です!
 だってこんな広い場所を徒歩で移動したら本日の体力が終わっちゃう。

「そう考えると神薙さんの邸って住みやすいなぁ」
「ママ、果樹園で迷子になるもんな」
『迷子じゃないよ遭難』
「かあちゃが家の中で迷子にならないように、引っ越さないで今の家に住んでるんだって」

 そう、刀雲と騎士様のお給料やら身分を考えれば、僕らはお城に住んでもおかしくはない、むしろお城に住むべき人種ばかりなのに、暮らしているのは純和風の武家屋敷。
 なぜなら子供達が言うように、洋館で暮らしたら確実に僕が迷子になるから。

 部屋から出たら団欒の間に辿り着けないと思う、あと普通に畳が安心する。

「適当に歩いてたけど、ここどこ?」
「憧れの巨大迷路」

 本当は我が家でやりたかったけれど、うちの庭には池があるからね。
 クラーケンとの戦闘は出来ても迷路は無理かな、普通の池はクラーケン住んでないけど。

 やたらに壁が高いと思ったら、獣人であるアー君は将来2m越えの身長になる予定なので、その時に頭が出ないように2m以上の高さに作ってあるらしい。

「迷子防止にトレントも配置してあるから、助けを求めればトレントが回収してくれるよ」

 上を見上げたら木の枝がわさわさと揺れた。
 トレント、色んな所でバイトしているね。

 せめて迷路をクリアしようとして五分ぐらいで諦めた。

「アー君、これ難しいよ」
『難しいー』
「難易度たけぇ」
「トレントに乗って偵察しました。中心に噴水あります!」
「あれトレント用の水飲み場」

 巨大迷路を難易度別に作ってもなお余る敷地、立派な城はあるけど利用する機会も全くない、冒険者ギルドとして利用しようと思ったけど、広すぎて移動が面倒と職員と冒険者から苦情がきて断念、でも城は建ててしまったから管理はしないといけない。

「結果、謎能力の影響で自我を持った魔物に管理を任せることになった。もう一種のダンジョンだぞここ」

 ダンジョンならばボスが必要だろうと、ボスならぬ管理人に選ばれたのは三年前に運命の出会いを求めて我が家を飛び出し、翌年一文無しになって空腹で倒れた所をゴブリンに保護された勢いで生きている感のある子だった。
 生活力が皆無だけど生活力溢れるゴブリンが一緒なら大丈夫だろう、あの子……脳筋なんだよね。

「基本的には俺らの遊び場で、魔物は迷い込んだ人間に荒らされないように守る番人だな。他には洞窟や水中トンネル、カヌーができる川、ロッククライミング用の崖だろ、廃墟になった某遊園地から持ってきた巨大ローラーコースター……」

 人間が踏み入らないなら好き勝手しちゃおう精神で、地球の遊び場を再現したんだろうなぁ。

「ついでに滝も作ったから飛び込んで遊べるぞ」
「やったー! にいちゃ大好き!」
『大人の目のない所でやる危険な行為、ワクワクするねー』
『内緒です、ママにも内緒です!』
「あっちにあるのは神薙様の脱皮した皮で作った山、邪神一家以外が入ったらたぶん死ぬ。俺らは大丈夫だとは思うけど気を付けような」

 アー君、アー君、待って、ここどれだけ広いの!?
 よく聞いたらアー君のお城がある敷地だけで刀国の王都が丸っと入るぐらい広いらしい、そりゃぁお城見えないわけだ!
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

鬼は精霊の子を愛でる

林 業
BL
鬼人のモリオンは一族から迫害されて村を出た。 そんなときに出会った、山で暮らしていたセレスタイトと暮らすこととなった。 何時からか恋人として暮らすように。 そんな二人は穏やかに生きていく。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい

拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。 途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。 他サイトにも投稿しています。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

処理中です...