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第二章 聖杯にまつわるお話

第112話

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 偽物聖女側の言い分は「村がゴブリンに襲われ、討伐依頼を出すためにギルドに向かっていた村人を偶然通りかかった彼らが保護、討伐依頼をした後、村人は傷が原因で死亡。王子が無念を引き継ぎ、依頼を達成するために冒険者を雇ってここにやってきた。しかし一歩間に合わず村は壊滅していた」。

「俺がそれを信じるとでも?」

 王子らと対峙しているアー君が馬鹿にしたように笑う、僕はうっかり和まないようにちょっと離れた場所で冒険者らに守られています。
 相手の言い分に不信を感じたアー君が統括権限でクエストを凍結、集まっていた冒険者は言われるがまま僕ら側に移動して現在は周囲を警戒中してくれています。

 故郷が壊滅したモヒカンリーダー、アー君の質問に答えたあとは地面に座ったまま動かない、呆然としたまま村を見つめている姿が――どうしても日光浴をしている鶏に見えて困っている。
 和んじゃいけない、今はそんな場合じゃない、そうだシャムスとイネスを撫でて落ち着こう、うっわいつも以上にふわふわなんだけど、もしかして二人ともアグニの温泉入ってきた?
 イネスの肉球がつるつる、え、なにこれアー君の肉球並みに気持ちがいいんだけど。

「おい、ちょっと」
「あ?」
「うわっおい誰か報告」
「あの空気の中に話しかけるのか?」
「でも放っておくと被害拡大するし」

 冒険者がざわざわし始めた、駄目ですよぉ、アー君のシリアス雰囲気壊しちゃ。

「あのアルジュナ様」
「お話し中失礼します!」
「どうした」
「神子様が」
「ふわふわしてます」
「んもー!」

 ママーと呼びながらアー君がこちらへやってきて思考を強制終了させられた。
 すみません、ざわつきの原因は僕だったようです。

 なんでバレたかと不思議に思ったら、冒険者のうち数人の髪の毛がサラサラになったのが原因だった。
 どうやら獣人の血が少しでも混ざっている人が僕がふわふわしている時に近くにいると、微妙に毛艶が良くなるという噂があったらしい、そして事実だと証明してしまったみたいです。
 そう言えば増毛する例が結構あると今更気付きました。

「ごめん、無でいようと思ってイネスの肉球とシャムスの毛皮を撫でてたら予想以上に気持ちよくて」
「言い訳もふわふわしてる!!」
「アルジュナ様も苦労してるよな」
「神子様最強だわ」

 お説教を受けている間、イネスとシャムスが何をしていたか?
 僕のお膝で眠っていました。

 小さな黒いワンコと小さな豹が僕の膝で!!
 涼玉も軽かったらなぁ、こうやって抱っこしてあげられたのにね。

「アルジュナ様大変です! 奴らが逃げました!」
「逃げ足はっや」
「そういえば皇帝も突然現れて突然消えたって言ってたね」
「はぁあぁぁ、また次の機会に捕まえるか。とりあえず村の調査するぞー」

 アー君は諦めた!
 思考を切り替えて調査に専念するようです!

「ところで誰かドラゴン見たー?」
「俺らは見てないっす」
「うちの斥候がそれっぽい足跡を森の中で見つけたらしいです」
「よし、じゃあ稼ぎ損ねたお前らのために新しいクエスト発行するぞー、壊滅した村と周辺の調査な」
「村人の遺体はどうします?」
「一か所に集めて見張っておいてくれ、アンデッドになって動き出したらイネスに声かけて、じゃあ開始ー」
「「はい」」

 指示だしに慣れてるなぁ、アー君かっこいー!

「アルジュナ様ー、ウルフが出たと思ったら滅茶苦茶人懐っこいでーす」
「こっちゴブリンの群れです、美味そうな匂いのする鍋もっているんですけどぉぉ」
「村の中ではスライムが発生して廃材処分手伝い始めましたー」

 次々飛んでくる友好的な魔物の報告に、アー君が僕をじっとりとした目で見つめている。
 すみません、僕のせいですね。
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