神様のポイント稼ぎに利用された３

第二章 聖杯にまつわるお話

第102話

　ここで問題です、シャムスが怒ると何が起きるのか。

「貴様、今すぐ土下座しろ」

　イグちゃんがブチ切れるが正解だった。
　般若のような表情で片手で王子の喉を掴んでいる姿に、オロオロしていた大臣らがやっと動いて、一人どこかへ走っていった。
　旦那さん呼びに行くんだろうな、動くの遅いですよー。

「女性に手を挙げるなど男の風上にも置けない所業、呪ったろか！！」
『呪っちゃえ！　呪っちゃえ！』
「グルルルルッ！！」
「カカカカカ！！」

　大臣の何人かも牙を剥いて威嚇している。
　恐らく彼らは獣人の血を引いているんだろうな。

　あのシャーッてしている人はにゃんこかなぁ、それであっちの胸を叩いて威嚇している人はゴリラでー、カワウソかな、リスでしょ、ハリネズミにチワワ、か、可愛い。
　あ、あれ？
　なんだか収まってきた？

　怒りを振りまいていた人たちが我に返ってしまい、咳払いをしながらそっと後ろに下がっていった。
　下がる際、チラッと僕に向けられた視線が恨めし気だったような気がする。

『ネリちゃんの旦那さん来たよ』

　シャムスがネリちゃんに手を向けたのでそちらを見たら、ネリちゃんが男性に抱きしめられていた。
　あの人知ってるー、ネリちゃんの旦那さんだ。

「ちょっと神子様、ダーリンの顔が変わっちゃんですけど何とかしてください！」

　ネリちゃん夫婦を眺めていたら背後から声が掛けられた。
　先ほどから僕と一緒にいた二人なんだけど……恋人同士だったのかぁ。

「きゅぅぅん」
「ダーリン、大丈夫だからね」

　恋人さんゴールデンレトリバーだったの！？
　シベリアン、シベリアンハスキーはいない？　グレートピレニーズでも犬の中のアポロン神グレートデーンでも水難救助犬ニューファンドランドでも僕は全然構わない！
　日本じゃ飼えなかった巨大大型犬も異世界なら飼えるんじゃないだろうか、あの子らもフェンリル種に比べれば可愛いサイズだと思うんだよね。

『イグちゃん戻ってきて、ママを止めて』
「おうっと」

　王子を地面にぺってしたイグちゃんが慌ててこちらに戻ってきて、僕の腕の中からシャムスを取り上げたと思ったら目の前に掲げて「ママ戻ってきて～」と裏声で言い始めた。
　なんのアプローチだろうか。

『ママー』
「大丈夫かー？　戻ってきたー？」
「？」
「ふわふわモードに入ると自覚無いから困るよな」
『あい』

　イグちゃんがシャムスを僕の腕に戻しつつディスっているのですが、何か問題でもあったのだろう――あったようですねごめんなさい。

　地面に捨てられた王子がどこからか現れた超大型犬の群れにボッコボコにされている。
　お金と広い敷地がある選ばれし犬好きにしか飼えないワンコが異世界にいるわけもなく、どう贔屓目に見てもあれらは僕の謎能力が引き起こしたんだろうな。

　でも……ボルゾイはいないみたい、いたら持ち帰るのに。