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第一章 紡がれる日常

第99話

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 騎士様を泣かせた罰として、バームクーヘンを奪いとった子には一人一個バームクーヘンを作らせています。
 これね、地味な作業だから元気に走り回りたい子にはいい罰ゲームだと思うんだ。

「うぅ、走りたい」
「ワニの背に乗りたい」
「山を滑りたい」

 メソメソしながら作っても終わらないよー、頑張ろうね。

「イツキ助けて」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「もう食べません、盗まないから」

 とは言っても焚火もそこまで大きくないため、作れる人数は限られていて当然作れない子もでる。
 場所をとれなかった子は無罪放免――な訳もなく、ただいま寝起きの神薙さんの口の中で涎まみれの刑です。

 それにしても神薙さんの本性である大蛇、前より大きくなっていないだろうか?
 頭のサイズだけでクロコダイル一頭分ある気がする。

「で、できたーー!」
「くーへんできた! かいほうされる!」
「つまみ食い怖い」

 完成したバームクーヘンを高く掲げる子供たち、同時にドサドサと地面に落ちる涎まみれの塊。
 ぎょえーと悲鳴を上げる金ちゃんに銀ちゃんがクリーンをかけている。

「どうぞ!」
「主様泣かせてごめんなさい!」
「こっちイチゴ味です!」
「うん」

 そして完成品は神薙さんに献上された。
 なぜ。
 そこは騎士様じゃないの??

「刀雲……」
「ホットサンドやるから」

 神々の上司が萎びて刀雲に泣きついている。
 パパやっている時の騎士様ってメンタル弱いよね、リラックス空間だから無防備になっているんだろうか。

「とろっと溶けたチョコが美味しいね」
「チーズ入りやピザソース入りもあるぞ」
「俺はピザソースがいいな、とうちゃ作って!」
「ぼくはねちょこがいーの」

 キャッキャウフフとする僕の家族に帝国兄弟と邪神兄弟が視線を一斉に向けた。
 あ、騎士様逃げて、また奪われますよ。

「騎士様!」
「あーーん!」
「え?」
「あーーーん!!」
「ください!」
「一口!」

 奪うのが駄目なら貰えばいいじゃない理論?
 小さな子供たちが騎士様の周囲に集って大きく口を開けてアピールしている。

「これは俺の!」
「味見だけ!」
「一口だけ!」

 なぜか騎士様にしかまとわりつかないのは、あれかな、騎士様の魔力目当てもあるのかな?

「イグちゃん助けて!」
「この時間帯、イグちゃんはアグニの温泉で朝風呂に入っているらしいですよ」
「そんなー」

 全身を現世に出すと瘴気で周囲に魔物が発生してしまうため、上半身しか現世に出せないイグちゃんだけど、アグニの温泉は神の温泉だからね、常に浄化されているので全身で楽しめるんだって。

「騎士様、騎士様、このパンに魔力をお願いします」
「分かった」

 大丈夫かな、目が死んだ魚のようになってますよ。
 魔力を込めてもらったパンを持って焚火から少し離れ、子供たちを呼ぶと騎士様にたかっていた子供たちが一斉にこちらに群がった。

「ジャムはシートの上に並べておくから好きなの使ってね」
「ん、リンゴ!」
「あぷりこっちょ」
「ピーナツバター!」

 パンを片手にキャッキャとジャムを選ぶ子供たち、ふぅいい仕事をした。

「樹、ありがとぅぅ」
「騎士様、今のうちにご飯食べて、終わったらおとり用のクッキーやマシュマロに魔力注入お願いします」
「分かった。俺の平穏な食事タイムのためならば!!」

 力強く頷き返した騎士様は今度こそ刀雲が作ったホットサンドを食べようとして、手元に一欠けらも残っていないことに気付いてしょんぼりしていた。
 隣に座る神薙さんが知らんふりしている姿がとても不自然、犯人はあの人かぁ。
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