102 / 809
第一章 紡がれる日常
第99話
しおりを挟む
騎士様を泣かせた罰として、バームクーヘンを奪いとった子には一人一個バームクーヘンを作らせています。
これね、地味な作業だから元気に走り回りたい子にはいい罰ゲームだと思うんだ。
「うぅ、走りたい」
「ワニの背に乗りたい」
「山を滑りたい」
メソメソしながら作っても終わらないよー、頑張ろうね。
「イツキ助けて」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「もう食べません、盗まないから」
とは言っても焚火もそこまで大きくないため、作れる人数は限られていて当然作れない子もでる。
場所をとれなかった子は無罪放免――な訳もなく、ただいま寝起きの神薙さんの口の中で涎まみれの刑です。
それにしても神薙さんの本性である大蛇、前より大きくなっていないだろうか?
頭のサイズだけでクロコダイル一頭分ある気がする。
「で、できたーー!」
「くーへんできた! かいほうされる!」
「つまみ食い怖い」
完成したバームクーヘンを高く掲げる子供たち、同時にドサドサと地面に落ちる涎まみれの塊。
ぎょえーと悲鳴を上げる金ちゃんに銀ちゃんがクリーンをかけている。
「どうぞ!」
「主様泣かせてごめんなさい!」
「こっちイチゴ味です!」
「うん」
そして完成品は神薙さんに献上された。
なぜ。
そこは騎士様じゃないの??
「刀雲……」
「ホットサンドやるから」
神々の上司が萎びて刀雲に泣きついている。
パパやっている時の騎士様ってメンタル弱いよね、リラックス空間だから無防備になっているんだろうか。
「とろっと溶けたチョコが美味しいね」
「チーズ入りやピザソース入りもあるぞ」
「俺はピザソースがいいな、とうちゃ作って!」
「ぼくはねちょこがいーの」
キャッキャウフフとする僕の家族に帝国兄弟と邪神兄弟が視線を一斉に向けた。
あ、騎士様逃げて、また奪われますよ。
「騎士様!」
「あーーん!」
「え?」
「あーーーん!!」
「ください!」
「一口!」
奪うのが駄目なら貰えばいいじゃない理論?
小さな子供たちが騎士様の周囲に集って大きく口を開けてアピールしている。
「これは俺の!」
「味見だけ!」
「一口だけ!」
なぜか騎士様にしかまとわりつかないのは、あれかな、騎士様の魔力目当てもあるのかな?
「イグちゃん助けて!」
「この時間帯、イグちゃんはアグニの温泉で朝風呂に入っているらしいですよ」
「そんなー」
全身を現世に出すと瘴気で周囲に魔物が発生してしまうため、上半身しか現世に出せないイグちゃんだけど、アグニの温泉は神の温泉だからね、常に浄化されているので全身で楽しめるんだって。
「騎士様、騎士様、このパンに魔力をお願いします」
「分かった」
大丈夫かな、目が死んだ魚のようになってますよ。
魔力を込めてもらったパンを持って焚火から少し離れ、子供たちを呼ぶと騎士様にたかっていた子供たちが一斉にこちらに群がった。
「ジャムはシートの上に並べておくから好きなの使ってね」
「ん、リンゴ!」
「あぷりこっちょ」
「ピーナツバター!」
パンを片手にキャッキャとジャムを選ぶ子供たち、ふぅいい仕事をした。
「樹、ありがとぅぅ」
「騎士様、今のうちにご飯食べて、終わったらおとり用のクッキーやマシュマロに魔力注入お願いします」
「分かった。俺の平穏な食事タイムのためならば!!」
力強く頷き返した騎士様は今度こそ刀雲が作ったホットサンドを食べようとして、手元に一欠けらも残っていないことに気付いてしょんぼりしていた。
隣に座る神薙さんが知らんふりしている姿がとても不自然、犯人はあの人かぁ。
これね、地味な作業だから元気に走り回りたい子にはいい罰ゲームだと思うんだ。
「うぅ、走りたい」
「ワニの背に乗りたい」
「山を滑りたい」
メソメソしながら作っても終わらないよー、頑張ろうね。
「イツキ助けて」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「もう食べません、盗まないから」
とは言っても焚火もそこまで大きくないため、作れる人数は限られていて当然作れない子もでる。
場所をとれなかった子は無罪放免――な訳もなく、ただいま寝起きの神薙さんの口の中で涎まみれの刑です。
それにしても神薙さんの本性である大蛇、前より大きくなっていないだろうか?
頭のサイズだけでクロコダイル一頭分ある気がする。
「で、できたーー!」
「くーへんできた! かいほうされる!」
「つまみ食い怖い」
完成したバームクーヘンを高く掲げる子供たち、同時にドサドサと地面に落ちる涎まみれの塊。
ぎょえーと悲鳴を上げる金ちゃんに銀ちゃんがクリーンをかけている。
「どうぞ!」
「主様泣かせてごめんなさい!」
「こっちイチゴ味です!」
「うん」
そして完成品は神薙さんに献上された。
なぜ。
そこは騎士様じゃないの??
「刀雲……」
「ホットサンドやるから」
神々の上司が萎びて刀雲に泣きついている。
パパやっている時の騎士様ってメンタル弱いよね、リラックス空間だから無防備になっているんだろうか。
「とろっと溶けたチョコが美味しいね」
「チーズ入りやピザソース入りもあるぞ」
「俺はピザソースがいいな、とうちゃ作って!」
「ぼくはねちょこがいーの」
キャッキャウフフとする僕の家族に帝国兄弟と邪神兄弟が視線を一斉に向けた。
あ、騎士様逃げて、また奪われますよ。
「騎士様!」
「あーーん!」
「え?」
「あーーーん!!」
「ください!」
「一口!」
奪うのが駄目なら貰えばいいじゃない理論?
小さな子供たちが騎士様の周囲に集って大きく口を開けてアピールしている。
「これは俺の!」
「味見だけ!」
「一口だけ!」
なぜか騎士様にしかまとわりつかないのは、あれかな、騎士様の魔力目当てもあるのかな?
「イグちゃん助けて!」
「この時間帯、イグちゃんはアグニの温泉で朝風呂に入っているらしいですよ」
「そんなー」
全身を現世に出すと瘴気で周囲に魔物が発生してしまうため、上半身しか現世に出せないイグちゃんだけど、アグニの温泉は神の温泉だからね、常に浄化されているので全身で楽しめるんだって。
「騎士様、騎士様、このパンに魔力をお願いします」
「分かった」
大丈夫かな、目が死んだ魚のようになってますよ。
魔力を込めてもらったパンを持って焚火から少し離れ、子供たちを呼ぶと騎士様にたかっていた子供たちが一斉にこちらに群がった。
「ジャムはシートの上に並べておくから好きなの使ってね」
「ん、リンゴ!」
「あぷりこっちょ」
「ピーナツバター!」
パンを片手にキャッキャとジャムを選ぶ子供たち、ふぅいい仕事をした。
「樹、ありがとぅぅ」
「騎士様、今のうちにご飯食べて、終わったらおとり用のクッキーやマシュマロに魔力注入お願いします」
「分かった。俺の平穏な食事タイムのためならば!!」
力強く頷き返した騎士様は今度こそ刀雲が作ったホットサンドを食べようとして、手元に一欠けらも残っていないことに気付いてしょんぼりしていた。
隣に座る神薙さんが知らんふりしている姿がとても不自然、犯人はあの人かぁ。
20
お気に入りに追加
141
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!
ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。
弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。
後にBLに発展します。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる