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第一章 紡がれる日常

第90話

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 冒険者には粗暴な態度や言動な者が多いと聞いていたけれど、僕が出会う冒険者はあまりそんなことない気がするのでアー君に理由を聞いたことがある。

「シャムスとも接触の機会が多いからな、乱暴な言葉遣いを覚えたら困るだろ」

 と答えが返ってきた。
 学がない事を理由にする人は学校を作って放り込み、元々の育ちが悪い人は性根を叩き直すために邪神一家の前に一晩放置、言い訳をする人々の言い訳を断ち切るという荒業を披露しているアー君、もちろん「何様だ」と歯向かう人もいたけどそこは「アルジュナ様だ馬鹿!」と周囲が止めているらしい。
 恐怖政治かな。

 権力を乱用して冒険者の在り方を改革しまくっているアー君、やり方は乱暴で強引だけど、意外と冒険者からは人気がある。
 尊敬が高じて信仰になり、親衛隊が増えるぐらいには。
 まぁ騎士様の御子息ですから、神がかったカリスマ性もあるんだろうなぁ。

 屋台のおっちゃん、おばちゃんからも、冒険者同士のトラブルが減ったと喜ばれ、今のところ勉強を強要された人以外は被害が特にない。
 そもそも刀国の冒険者は学園に通った経験があるし、他国の冒険者と比べるとなんか強さがおかしいらしい、冒険前に邪神にお参りして祝福で強化したりしているからだろうか?

「アルジュナ様って厳しいんです」
「クエストのランクが上がると報告書提出が必要になるなんて聞いてない」
「やり方わからないってごねると講習会が開かれるんです、何度でも! 無料で! 分かりやすいし、参加すると出されるおやつ美味しい!」

 糖分補給とやる気補充を兼ねておやつを出したらどうかってアカーシャが言っていたことがあるけど、あれ採用されてたんだね。
 冒険者の知識と質が上がり、魔物素材の品質が上がれば自然と報酬も上がるってことかー。

 通りがかりだと思っていた彼らは、なぜか僕らの横に陣取って愚痴りながら採取品を選り分けている。

「文字が汚くて報告書読めないと突き返されるんですよ」
「受付が怖い」
「笑顔が怖い」
「おかげで僕みたいな低ランクでも雇われる機会が増えたんです!」

 にっこにこと笑顔を向けて来るのは冒険者になったはいいけれど、戦いにとことん向いていなくてランクが上がらず、雑用を引き受けていた他国出身の元農民の青年。
 今回のクエスト用に貸し出された鞄から羊皮紙とペンを取り出し、採取したものを記録中、後でギルドに提出するまでがお仕事なんだって。

「前にいたパーティーでは雑用係として雇われていたけど、戦闘に参加出来ないから疎まれて、最終的には追放されちゃって……でも他のパーティーがすぐ雇ってくれて、刀国まで連れてきてくれたんです!」

 刀国の冒険者って紳士だな。

 もちろん文字の読み書きは出来なかったけど、山小屋に放り込まれて読み書きを叩き込まれたそうです。
 刀国民ではないので授業料はかかったもののギルドから補助を受けて学園にも通い、今はギルドに雇われた記録員として安定した収入があるんだって。

「刀国まで連れて来てくれた人たちは?」
「僕を保護した報奨金で花街に通って全財産使い果たして、ギルドからの強制クエスト任務中です」
「まぁ俺らっすけどね!」

 アンタらかい!
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