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第一章 紡がれる日常
第83話
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冒険者の新たなアイドル・ワイバーン。
あれから数日、群れから遅れたのは飛ぶのが遅いわけじゃないのが発覚。
「ちょっと痩せ気味だけど翼の筋肉もしっかりしているし、実際飛んでみるとスピードも出たんだ」
アー君が乗ったら飛行もスピードも安定性があったので、俺も俺もと帝国兄弟が群がり、それを見ていた好奇心旺盛な町の子供たちも順番に乗ったことで持久性もあると判定が下された。
総合能力を見る限り、むしろワイバーンの中でも上位種に判定されるほどの素質持ち。
「実は隠れボス?」
「いや」
「全てが演技……なわけないか」
「うん」
「ギャーー!」
新たな仲間は今日から学校に放り込まれたため、ダンジョン周りをのしのしと歩いたり、領地の騎士を背に乗せて空から偵察したりなど、楽しそうに過ごしているみたい。
僕とアー君を見つけると突進してきて、くちばしをゴリゴリ押し付けてきた。
これって甘えているのだろうか。
「もしかして小さい頃人間に育てられたとか?」
「違うみたいだぞ、本人が言うには――ってうおおおおお」
解説しようとしたアー君の服をくわえて持ち上げると、軽く空に放り上げて自分の背中に乗せてしまった。
「待て待て待て、俺はこれからダンジョンにっ」
「ギョエー」
「いってらっしゃーい」
高く飛び上がり森の方へと飛んでいく、領主のお兄さんがこの地の危険性と抱える問題などをワイバーンに語り聞かせた結果、自主的に森の巡回をするようになったらしい。
しかも単独では何か異変があった時に報告できないと気付いてからは、近場にいた相手をああやって背中に乗せて行くようになったって聞いてはいたけど……本当に野生のワイバーンだったんだよね?
下手な人間より知能高くない?
「神子様!」
「あ、お兄さんこんにちは」
アー君が連れ去られた空を見上げていたら、フル装備のお兄さんが近付いてきた。
冒険者稼業中心みたいだけど、いつ領主の仕事をしているんだろう?
「神子様、今日はお一人ですか?」
「さっきまでアー君も一緒にいたけど、ワイバーンの背に乗せられて巡回に連れていかれました。シャムスと涼玉はアグニの館にある温泉プールで遊んでます」
本日の保護者はシヴァさんなので、安心していいのか微妙な所です。
「あのワイバーンは本当に賢い、聞きましたか、あの日飛行が遅れていた理由」
「それを聞く前にアー君拉致されちゃって」
「ははは! どうやらあれは小さきものを愛する性質のようで、じゃれついてきた鳥と戯れながら飛んでいたら戦に出遅れたようです」
よく群れから追放されなかったなぁあの子!
「お兄さんはこれからダンジョンですか?」
「ええ、未探索の領域が増えたと報告があったので、これから仲間と調査に行ってきます」
「気を付けて、怪我したらアグニも心配しますから」
「当然です、家族も増えますし、傷一つ負わずに帰ってきますよ!」
パーーンッと勢いよくお腹を叩くお兄さん、え、ちょっと待って、まさか。
「ご懐妊ですか?」
「はい!」
「一つ目親分ーーー!!」
「グオオォ!?」
ダンジョン前だったこともあり、呼んだらすぐ来てくれました。
「親分の奥さん妊娠したって!」
「ギャァ!?」
「大丈夫ですって、待望の第一子をそう簡単に流したりは――」
「キーキーー!!」
「あ、こら!」
「キキー!」
「グオー!」
腕を組んで仁王立ちしていたお兄さんを子分らが抱え上げ、慌てて親分の腕に押し付けた。
押し付けられた親分は子分らに背中を押され、なるべく揺れないように走りながら領主の館に向かって行った。
「えっちゃん、王都の旦那さんとお昼寝中のアグニに連絡お願い!」
調査メンバーが来たらお兄さんのこと言わないといけないけど、顔知らないなぁ。
「お兄さんの仲間に連絡お願いしていい?」
「キー!」
子分の一人が請け負ってくれたのでこれで安心、あとは女神様と炎帝さんにも連絡して、安産の祝福お願いしておこう!
でも生まれる子って僕にとって何になるんだろう、ひ孫? 玄孫??
まぁいいか、身内には違いないよね!
あれから数日、群れから遅れたのは飛ぶのが遅いわけじゃないのが発覚。
「ちょっと痩せ気味だけど翼の筋肉もしっかりしているし、実際飛んでみるとスピードも出たんだ」
アー君が乗ったら飛行もスピードも安定性があったので、俺も俺もと帝国兄弟が群がり、それを見ていた好奇心旺盛な町の子供たちも順番に乗ったことで持久性もあると判定が下された。
総合能力を見る限り、むしろワイバーンの中でも上位種に判定されるほどの素質持ち。
「実は隠れボス?」
「いや」
「全てが演技……なわけないか」
「うん」
「ギャーー!」
新たな仲間は今日から学校に放り込まれたため、ダンジョン周りをのしのしと歩いたり、領地の騎士を背に乗せて空から偵察したりなど、楽しそうに過ごしているみたい。
僕とアー君を見つけると突進してきて、くちばしをゴリゴリ押し付けてきた。
これって甘えているのだろうか。
「もしかして小さい頃人間に育てられたとか?」
「違うみたいだぞ、本人が言うには――ってうおおおおお」
解説しようとしたアー君の服をくわえて持ち上げると、軽く空に放り上げて自分の背中に乗せてしまった。
「待て待て待て、俺はこれからダンジョンにっ」
「ギョエー」
「いってらっしゃーい」
高く飛び上がり森の方へと飛んでいく、領主のお兄さんがこの地の危険性と抱える問題などをワイバーンに語り聞かせた結果、自主的に森の巡回をするようになったらしい。
しかも単独では何か異変があった時に報告できないと気付いてからは、近場にいた相手をああやって背中に乗せて行くようになったって聞いてはいたけど……本当に野生のワイバーンだったんだよね?
下手な人間より知能高くない?
「神子様!」
「あ、お兄さんこんにちは」
アー君が連れ去られた空を見上げていたら、フル装備のお兄さんが近付いてきた。
冒険者稼業中心みたいだけど、いつ領主の仕事をしているんだろう?
「神子様、今日はお一人ですか?」
「さっきまでアー君も一緒にいたけど、ワイバーンの背に乗せられて巡回に連れていかれました。シャムスと涼玉はアグニの館にある温泉プールで遊んでます」
本日の保護者はシヴァさんなので、安心していいのか微妙な所です。
「あのワイバーンは本当に賢い、聞きましたか、あの日飛行が遅れていた理由」
「それを聞く前にアー君拉致されちゃって」
「ははは! どうやらあれは小さきものを愛する性質のようで、じゃれついてきた鳥と戯れながら飛んでいたら戦に出遅れたようです」
よく群れから追放されなかったなぁあの子!
「お兄さんはこれからダンジョンですか?」
「ええ、未探索の領域が増えたと報告があったので、これから仲間と調査に行ってきます」
「気を付けて、怪我したらアグニも心配しますから」
「当然です、家族も増えますし、傷一つ負わずに帰ってきますよ!」
パーーンッと勢いよくお腹を叩くお兄さん、え、ちょっと待って、まさか。
「ご懐妊ですか?」
「はい!」
「一つ目親分ーーー!!」
「グオオォ!?」
ダンジョン前だったこともあり、呼んだらすぐ来てくれました。
「親分の奥さん妊娠したって!」
「ギャァ!?」
「大丈夫ですって、待望の第一子をそう簡単に流したりは――」
「キーキーー!!」
「あ、こら!」
「キキー!」
「グオー!」
腕を組んで仁王立ちしていたお兄さんを子分らが抱え上げ、慌てて親分の腕に押し付けた。
押し付けられた親分は子分らに背中を押され、なるべく揺れないように走りながら領主の館に向かって行った。
「えっちゃん、王都の旦那さんとお昼寝中のアグニに連絡お願い!」
調査メンバーが来たらお兄さんのこと言わないといけないけど、顔知らないなぁ。
「お兄さんの仲間に連絡お願いしていい?」
「キー!」
子分の一人が請け負ってくれたのでこれで安心、あとは女神様と炎帝さんにも連絡して、安産の祝福お願いしておこう!
でも生まれる子って僕にとって何になるんだろう、ひ孫? 玄孫??
まぁいいか、身内には違いないよね!
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