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第一章 紡がれる日常

第82話

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 ワイバーン大襲来も一瞬で終わったのだけれども、一頭だけ生き残った子がいた。
 処遇に困った冒険者がダンジョンから出てきたアー君に相談し、決定権を握るシャムスに相談するためにアグニの館にやってきた。

「群れの中で一番飛ぶのが遅かったみたいでな、遅れて現場にやってきて難を逃れた感じですね」
「ギャー!」

 神薙さんの一撃から逃れた理由をばらされ、くちばしを突き出して文句を言っている。

「いて、てててて、俺の頭をつつくな!」
「ギャーッス!」

 一撃からは逃れたけど、全滅した仲間に腰を抜かして墜落したらしい、そこを森を探索中だった冒険者に保護してもらって懐いたみたい。

「もう飼っちゃえよ」
「嫌ですよこんな凶暴な奴! 餌代もかかりそうですし」
「ギャァァ……」

 文句を言おうとしたのを止めたと思ったら視線をさまよわせ、地面に草を見つけるとそれを食べて雑草食べるアピールをしている。
 こちらの言葉を理解する知能はあるみたいだね。

「でもリーダーに懐いてますよ」
「戦力にはならなくてもマスコットにはなりますって」
「マスコットがいても飯食えねぇよ!」
「何言ってるんですか、マスコットがいれば食える何かに転職すれば大丈夫!」

 今まで黙って成り行きを見守っていたパーティーメンバーが、健気なワイバーンに絆されて援護を始めた。

「まともな職に就けないから冒険者になったのに何言ってんだお前ら」
「それは昔の話!」
「そうそう、なんか、こう、きっとありますって」
「学がない俺らでもなんかこう、ね!」
「学がないなら学べばいいだろう、学校作ったから通え」

 アー君の一言にリーダーを含めた全員が嫌な顔をした。

「ギルドカードに学校への入学許可証付与したから、仲良く通え」
「ぎゃー!」
「いやぁぁぁ!!」

 学ぶ機会がなかったから仕方ない。その一言を封じるためにアー君が先手を打ち、学校に強制入学させたようです。
 悲鳴を上げる冒険者を眺めていたら、トコトコとワイバーンが僕の隣に来た。

「ギョエー」
「君は学校に通えないからね、その間はダンジョンに行って一つ目親分や子分たちの手伝いしたりすればいいと思うよ」
「遅くても飛べるんだから周囲を偵察するのもいいかもしれないね」

 翼をバッサバッサと羽ばたかせてやる気満々、これだけ人懐こくて良く野生で生きてこれたなぁ。

「神子様」
「祖母殿!!」

 お兄さんとアグニがやってきて、アー君と情報交換をした結果、冒険者は学校を卒業したらワイバーンとセットでこの領地で召し抱えられることが決まった。

「よっしゃ! 気合い入れてお前らの強化スケジュール組んでやるからな! 来年には「俺らって天才だったのか!」って勘違いするぐらい頭良くなってるぞ!」
「死ぬ」
「もうだめだ」
「リーダーのばーかばーか」
「ワイバーン、俺ら旅に出ようか」

 張り切るアー君に冒険者たちが一斉に現実逃避を始めた。
 大変だろうけどワイバーンとの未来のためにも頑張ってほしい。
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