上 下
82 / 844
第一章 紡がれる日常

第79話

しおりを挟む
 鍋ダンジョンオープン前日、長く帝国と敵対していた国が侵略を仕掛けて秒で壊滅したそうです。
 ちょっと前にも似たようなことあったなぁ。

「光の速さ」
「国境警備隊が皇帝に早馬を出そうとしたら敵が消えたらしい、国ごと」

 試食会で使う鍋を磨きながらアー君が教えてくれた。
 その向こう側では我が家の邪神様が、いつも使っているものより一回りも二回りも大きな寸胴鍋を上機嫌で磨いています。

 あれ、なんで僕ら朝から鍋磨いているんだろう?
 別にマイ鍋持っていく必要はないよね?

「国民が根こそぎ消える寸前「鍋!」っていう声が聞こえたとか何とか」
「ふふん、父様の尻尾で一撃だったぞ!」

 自分用の土鍋を手入れしながら俺様邪神が胸を張る。
 そうか、犯人はうちの邪神様かぁ。

「下手すると自分たちが死んだこと気付いていないかもしれないな、ラーシャに行ってもらおう」
『それかイネス解き放っちゃう?』
「イネス、もう一度ぺかーってやりたいって言ってたもんな」
「はい!」

 鍋に嵌ったイネスが元気よく答える。
 ねこ鍋ならぬイネス鍋、春日さんにお願いしてSNSにあげてもらいたい。

 新規ダンジョンに意識を奪われているのを好機だと思ったのだろうか、残念でした逆です。
 食事の邪魔をしようとしたと邪神様に認識され、戦争に関わっていた人間が丸っと消えちゃったみたいですね、神罰だと思って受け入れて悔い改めください。
 多分もう消化されたと思います。

 皇帝がいつも以上に仕事に忙殺されているのは本当だけどね、ダンジョンオープンに立ち会うために仕事を前倒しにしているらしく、巻き込まれた女神様が愚痴の神託を送ってきたから知ってる。
 これで戦争が始まっていたら参加出来なかったからね、神薙さんに感謝の意を示してレア度の高いものを捧げることをお勧めします。

「でも一つの国を一振りで滅ぼすなんて、もしかして神薙さん力増しましたか?」
「そうかもしれない」

 ん、待てよ?
 軽く尻尾を振って国一つ……もしや神薙さん、本体のサイズもアップしました?

「それで早朝から呼び出されて、消えた国の領土引き受けろって言われたんだ。いらない」

 敵国を滅ぼしたのは神薙さんだからね、一番話が通じるアー君に話を持ってくるのは仕方がない。

「ママいらない?」
「いらないかなぁ」

 神薙さんにはすでに断られたそうです、人間が食べ放題ならまだしも、全滅した土地に価値はないと。
 その土地の人間滅ぼしたの神薙さんですけどね。

「食べ放題……そう言えば知り合いの王子の国、どうしても穀物が育たないって言ってたな、金と人員提供させて穀物地帯作ろう。他にも数人誘って土地の管理代行させればいいな! よし、やっぱ領土引き受けた!」

 こうして帝国の隣の領土が丸っとアー君のものになり、宣言通り友人の王子や貴族らにお金と人手を出させ、広大な食物地帯を築き上げた。
 システムは互助会とほぼ同じ、月々一定額のお金を積み立て必要な時に引き出す。
 飢餓やお祭りなどの必要な時に利用してもいいし、毎月お金と引き換えに一定量を受け取るのもあり。

「帝国の教皇に大金積まれて、全国の教会に毎月配送する契約結ばされた。身内割引きで手数料値引きさせられたし!! ママどうしたらいい!!」
「アカーシャに相談しなさい」

 商業ギルドのルート使わせてもらえば負担軽減されるはずです。
 ギルド支店たくさん作っておいて良かったね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

処理中です...