神様のポイント稼ぎに利用された３

第一章 紡がれる日常

第77話

　アグニが町に入ったことで魔石が稼働し、町全体に一瞬で魔力が行き渡ったそうです。
　さすが炎神、アグニ様万歳と町のあちこちで歓喜の声が上がっている。

「にいちゃがな、町の生活が安定してきたら、宿のグレードを上げてもらって保養所とか面白そうだなって言ってた！」
「それはいいねぇ、温泉で体を温めて、熱々の鍋を食べる……聞いただけで体が温まりそう」

　この世界、冬無いけど。

　涼玉に案内されつつ町を歩く、アグニの熱が町全体を温めてどこにいても暖かい。
　これ、お風呂上りに外をフラフラしても風邪引かないんじゃない？

「かあちゃ、アイス食べたい」
「うーんどう思う？」
「先ほどお風呂上りに食べましたので、控えて頂きたいですな」
「マールスしぃーー！」

　当然のように涼玉はマールスに抱っこされております、当然過ぎてたまに意識するの忘れるんだよね。

「ママーー！」
「アー君」
「シャムスが温泉施設に入って出てこない！　ここに住むって言いだした！」
「なんで！？」

　いつもお風呂嫌がるのに何があった！？
　案内されて大浴場に行ったら理由が分かりました。

「シャムス様、力加減はいかがですか？」
「ちょうどいいの」

　綺麗なお兄さんの膝の上で子犬シャムスがへそ天でマッサージを受けていました。
　丁寧にお風呂に入れられ、優しく乾かしてもらい、お風呂上りに温めたミルク、絶妙な加減のマッサージで心身ともに陥落しちゃったのか。

「アルジュナ様、そちらの方は……」
「俺らのママ！」
『ママー』

　ぴょーんとお兄さんの膝の上から降りたシャムスが僕の腕の中に飛び込んできた。
　こ、これは！！
　いつもふわふわぽわぽわなシャムスの毛並みがっ、ただでさえ極上の毛並みがっ、気持ち良すぎて撫でる手が止められない！！

『うふーん』

　こいつめ、こいつめ、このふわふわな浮気な子犬め、もふもふしてやる！

『きゃー』
「ママ、ママ、正気に戻って、トリマーの達人が放置されてる！」
「でも本当にシャム兄が気持ちいいな」
「っは！」

　アー君の声に正気に若干戻りました。
　ふわふわの達人を床に跪いたままの態勢で放置してしまいました、申し訳ございません。

　お礼と謝罪をした所で改めてお互い名乗りあったら、お兄さんはなんと領主様の奥さんでした。
　え、このカイちゃんもビックリするぐらい美人な人が冒険者やってるの！？

　驚いて話を聞いたら、細身の外見を裏切ってまさかのアタッカー、防御を捨てて攻撃に全振りしている狂戦士らしいです。
　そりゃ旦那さん心配が尽きるわけがない、でも今回の改革で領地も豊かになるし、冒険者を続ける理由はなくなりますね、どうぞ実務で支えてあげてください。

「ふふ神子様、読みが浅いですね」
「え？」
「実は領主の血筋は私、旦那様は入り婿なんです。そして私、女神様から複数婚の祝福を受けているんですよ」

　出会ったその日に一目惚れ、なんと一つ目親分が二人目の旦那様になったそうです。
　はぁぁぁぁぁ！？

　アー君、ちょっと初耳ですよ！
　隣を見たらアー君も目を見開いて驚いていました。