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第一章 紡がれる日常

第63話

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 ダメだった。
 炎帝さんと女神様、騎士様と同じぐらい料理が壊滅的だった。

 火力調整が苦手ならばと、涼玉に出張してもらったけど、なぜか焦げる。
 刀国七不思議の一つにカウントしていいかもしれない。

 クッキーを作り終え、中庭にて試食会中ですが女神様が机に突っ伏して動かないです。

「大丈夫だよ母ちゃん、俺らが一生食わしてやっから!」
「うん、お料理はぼくらにまかせてね」

 息子たちがフォローしているけど、傷口を抉っているようで女神様がシクシク泣いている。
 いい所見せるぜって張り切ってたですもんね。

「俺らが作ったクッキーやるから!」
「元気出して、ね?」
「うおおおぉん、いい子に育ってぇぇ――ってかったぁぁぁ」
「そうかな?」
「うーん、普通に食べれるよな、炎ちゃんは?」
「いける」
「シャムス兄様は大丈夫?」
『へーき』

 涙目でクッキーを口にした女神様が悲鳴を上げたけど、子供達は不思議そうに首を傾げ、普通にゴリュンゴリュン音をさせながら食べている。
 転生体の炎帝さんも顎が強化されているようで、ゴリゴリ音をさせながら食べています。
 どちらにしろ音がクッキーの咀嚼音じゃない。

 僕は食べるの止めておこう、女神様と同じ目に合いたくない。
 懐かしいなぁ、騎士様に買ってもらったタコ焼き食べれなかったんだよね。
 ふわとろのタコ焼きを開発してくれたアー君、ありがとう。

「すまない、相談があるのだが――どうした?」
「父ちゃん!」
「父ちゃん抱っこ!」
「皇帝のお仕事終わった?」
「誰に相談? 俺ら? 俺らか?」
「私でもいいぞぉ! 子作りしよう、さすれば汝の願い全て叶えてやる!!」
「服を、剥こうとするな!」

 皇帝が中庭に現れるやいなや子供達が一斉に群がり、どさくさに紛れて炎ちゃんが襲い掛かったけど、ペッという感じに雑に投げられた。
 いやぁラノベに登場する皇帝って冷たくて人間の心を失ったような人達ばかりなのに、ここの皇帝はいいパパしているよねぇ。
 謎能力、珍しくいい仕事したと思う。

「実は隣国の王女が留学に来るらしい」

 群がり、よじ登る子供達をあやしながら簡単に女神様に伝える皇帝、子育てに慣れたイクメン皇帝か、ここでしか見られないレアな姿なんだろうなぁ。

「よし分かった! あれだよ炎ちゃん!」
「あれか、留学を理由に押しかけて、無理矢理面倒見させた挙句、隙を見て既成事実作って帝国と縁作ろうっていうあれか!」
「それそれぇ! よぉし、留学はさせない方向で! 私の家族に色目使おうとするのは徹底的に排除する!」
「ヴィシュ、やっちまいな!」
『やっちゃえー!』

 わぁ女神様頼もしい、子供達もそう思ったのか両手を挙げてわーわー歓声を挙げている。
 ノリのいい家族です。

「いや待て、外交とかそう言ったものが――」
「え、あ、悪い、もう遅い」

 女神様に相談する時は起こる結果も考えてから持ち掛けないと駄目ですよ、特に今はシャムスと僕がいるから効果が倍。
 子だくさん公爵家からお嫁に来たお兄さんに相談するのが正解だったんだろうなぁ。遅いけど。

「大丈夫だ、やりすぎてない、留学出来ないように国から出れない呪いかけただけだから!」
「父ちゃんどんまい!」
「俺らを守ろうとして動揺したか!」
「大丈夫、突然その話が持ち上がった原因もどうせ母ちゃんだよ!」

 弟達の言葉にシャムスがうんうんと頷いている。
 僕も思わず頷いた。
 
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