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第一章 紡がれる日常

第59話

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 本殿の扉を開けたら3m近くある巨大な首なしの騎士がいた。
 悲鳴を上げなかった僕を褒めてほしい。

 着替えって何から何に着替えたのだろうか、その返り血がついた鎧が正装とか言いませんよね?
 あ、一応着物着てた、肩の所が破けているのが見えた、前を開けているから気付かなかった。
 羽織るというより体に引っかけている?

「シャ、シャムス様、おはは、っは、つにぃぃぃ!!」

 ビリィィィッィ!!!

 首無し騎士が勢いよく頭を下げると同時に布がぼろ切れと化した。
 布を慌てて押さえようとする美少年、その周りで小鬼もぴょこぴょこと慌てている。

『落ち着くのよ』
「!!!!」
『ママを驚かしたらだめ』
「失礼を、いたしました」

 シャムスが何かを言うと同時に騎士と小鬼が落ち着きを取り戻した。
 姿勢を正して改めて土下座をする首無し騎士、そして響く布の破れる音。服のサイズが合っていないので採寸からやり直すことをお勧めします。
 
「小鬼殿、飲み物と菓子を」
「そうだった」
「アワテナイ、アワテナイ」
「お茶冷めた」

 わたわたする小鬼の間を闇が走り、ササーッと膳とお茶、お菓子、座布団が用意された。
 日頃からうちの子の世話もしているからね、えっちゃんはこういった用意お手の物なんです。

 ……いやだからと言ってお膳が出てくるのは不思議でしかないな、もしや幾つかセット持ち歩いてる?
 ドリちゃんなら持たせててもおかしくないな、各ドリアンにテーブルとおやつやピクニックセット常備させているぐらいだし。

「旦那様、ゆっくりですよ」
「うむ」

 膳をひっくり返さないように慎重に席に着く首無し騎士、補助するように隣に座る美少年、小鬼も周囲にちょこりと座り、狐さんはシャムスに給仕をするためこちら側に座った。

 お茶をいただきながらこの神社の由来を聞いた。
 霊峰を囲む結界の要を守るこの神社、最初は魔王様が管理していたらしい。

「えっ、そうなの!?」
「っは! ただ領土が広がるにつれ、陛下もここだけを守っている訳にはいかなくなり、女神の助言によって魔物の中でも人と最低限意思疎通ができ、武勇に優れている者が代々ここの番人を担ってきました」
「我らは魔王様の奥方が自ら作られた存在です」
「コネラレタ、コネラレタ」
「意思疎通が出来る脳筋が代表ですから、その補佐のために作られました。お狐様は霊峰側から遣わされた同僚です」
『僕も捏ねるの得意なの』
「ア、ナニヲ、アーレー」

 シャムスは片言で喋る小鬼を呼び寄せると、ぐっと力を込めてこねこねし始めた。
 小鬼が悪代官に手籠めにされる町娘のような悲鳴を上げながらこねられスライムに強制進化完了、ぽよんぽよん弾みながら仲間のもとに戻っていった。

『僕の加護を与えたのよ、料理がお上手になっちゃうの』
「君は人間だよね? どうしてここに?」
「えっと、その……」

 もじもじしながら言葉を探す少年、視線が騎士を捉えては逸らすを繰り返す。
 付き合いたてのカップルだろうか。
 いや新婚さん?

 膝の上にあった手を握り合っているのは無意識ですか?
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