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第一章 紡がれる日常

第56話

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 涼玉ブートキャンプ、それは新人からベテランまで全ての冒険者を強化するために考えられた踊り。
 ただあれ、筋肉痛を起こした冒険者から事情を聴いたおばちゃん達が興味を持ち、やってみたら筋肉が付いたと評判が評判を呼び、冒険者より女性の間でブームになりつつあるらしい。

 刀国の女性陣って元々強いよね?
 良くファンタジーものに出てくる恰幅のいいおばちゃんでさえ、雑魚冒険者ならワンパンで沈められると聞いているんだけど、そんな人達が強化されたらますます冒険者が勝てなくなるんじゃ?
 これは騎士団にも勧めて全体的に強化すべきだろうか、つまりまずは刀雲に覚えてもらうってことで問題はないはず。

 刀雲の腹筋、だたでさえ六つに分かれているのに、さらに磨きがかかるってこと!?
 やだ、想像するだけで惚れ直しちゃう。

 じゃあ騎士様にやってもらったら……発光する?
 それとも意外と体が硬くて筋肉痛起こしたりして!
 面白そうだから皆でやってみようかな! ちなみに僕は見学してもいいでしょうか!

「私のママン、可愛いな」
「主様もメロメロだぜ」

 銀狼たちの新たな住処となった地を後にし、三つ目の結界にやってまいりました。
 脳内で涼玉ブートキャンプを思い出していたら景色が変わっていたのだけど、えっちゃんが皆を連れてきてくれたのだろうか?
 いつもありがとうね。

「まま、とりい」
「そうだね、神薙さんの神社にあるやつだね」

 どうやらここは和風デザインにしたようです。
 霧深い山の中に鎮座する神社、しめ縄が鳥居や周囲の木に飾られ、一歩近付いたら誘うように神社へと向かって風が吹いた。
 ただこれ、女神様と炎帝さんとシャムスと僕の四人のうち、誰を誘っているんだろうか。全員?

「女神様、なんでデザイン統一しなかったんですか?」
「凄い悩んだ結果だ。頑張って四つに絞ったのを褒めてほしい」

 ゲームからラノベまで幅広く楽しんでいる女神様だからこそ、趣味がごった煮になってしまってるんだろうな。
 神薙さんの影響が強い地域は和風に統一されているけど、それ以外の刀国の街並みは海外の名所が入り混じっているし、教会は地区によって神社だったり神殿だったりと自由度が高い、だからといってその自由さを霊峰を守る結界の要にも反映するのはどうなのだろうか。

「あ、誰か来るぜ」
「参拝者かしらね? 人里から離れた聖地だから余計に神聖化されてるのかしら?」

 風が神社に誘っているのを無視して、女神様二人が神社に続く道の向こう側を楽し気に見つめている。
 二人は置いて先に入っちゃおう、危ないことがあったらえっちゃんが守ってくれるしね!

「おじゃましまーす」
「しまぁす」

 鳥居をくぐって境内に足を踏み入れたら、ふわりと目の前に体が透き通った狐が姿を現した。

『ようこそ貴きお方、大した御もてなしは出来ませぬが、ごゆるりとお過ごしくださいませ』
「わぁありがとー、じゃあシャムス、休憩にしよっか」
「あい!」

 どこか飲食してもいいような座れる場所がないかと尋ねたら、日当たりの良い場所に案内してもらった。

「ここだけ霧が晴れてる。不思議だね」
『不思議よね』

 石で作られた椅子と机、ちょっと苔が生えているけどこれもまた風流っぽいよね!
 シャムスを椅子に下ろして、石机の上にハンカチを広げる。

 月餅は寺院で食べたから、うーん、クッキーにしようかな。
 シャムスには蜂蜜入りのホットミルク、僕はお煎茶。

『ほっかほかぁ』
「お日様気持ちがいいね」

 四つ目はまた今度にして、今日はもう帰っていいかなぁ。
 そそそろ帰って夕食の準備したいです。
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