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第一章 紡がれる日常

第47話

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 ものは試しだとカジキマグロの串焼きはその日の晩に決行された。
 カジキはヨムちゃんにお願いして一匹だけ都合してもらい、串は家の近くの竹林から竹を一本拝借して使用、炎は涼玉のファイヤーブレスで解決。

「ああ、まだスラちゃんが処理してないのに」

 仕事が速すぎてカジキの角部分をとる暇さえなかった。
 食べるの神薙さんだから大丈夫だけどね。

 例え相手が魔物で皮が通常の魚より硬かろうが関係ない、焼きあがったカジキマグロの串焼きをバリンバリン音を立てて食べている。
 食べ物を食べる音じゃないけど気にしない。

「父上、美味しいですか?」
「よく焼けてるし、脂がのってて美味しいよ」

 俺様邪神の疑問に身の一部をむしり取って口に入れてあげている。
 一昔前の神薙さんからは考えられない行動だけど、どうやら我が家の「あーん」を真似してみたら気に入ったらしく、たまにああやって食べさせています。

「次はもうちょっと大きめのが食べたいな」

 そう言って手を払う神薙さんの手には何も残っていない、もしやさっきの異音は竹をかみ砕いた音だった?
 前に寸胴鍋ごと食べたことがあるし、竹程度はポッキー感覚?
 たくさんあるからいいですけどね、なんか竹の香りが良かったとか言っているから結果オーライ。

「そう言えばヨムからこれ預かった」
「?」
『アー君、それなぁに?』
「なんだなんだ」

 神薙さんがアー君に何やら書類を渡し、その手元をシャムスと涼玉が覗き込む。

「水神ギルド創設のお知らせぇ?????」
『水軍じゃないの?』
「神薙様これなんだ?」
「なんでも船を扱う人間が増えてきたから、ギルドを作って情報統制がどうのって言ってた。あとギルドやってみたかったんだって」

 ノリが完全に領地を欲しがった白ちゃんと同じ、ただ規模が全く違うけど。

「とりあえずレモン国とラミアのポワ、帝国が加盟予定、建物は神殿兼用で……良くないよヨム、書類仕事が増えた時に混乱するからせめて建物わけないと、おおおぉぉ仕事が増えた」

 頭を抱えながらアー君が手をちょいちょいと招くと、親衛隊の一人がススッとアー君に近寄り、書類を恭しく受け取った。
 さすが騎士様のご子息、人を使うのが上手だよねぇ。

「我が君」
「ん?」

 別の黒ローブがアー君の横に跪いて何かを囁いた。
 刀雲と騎士様、今日やけに帰り遅いなぁ、早く帰ってこないと子供達の判断で物事が進んじゃいますよ。

「卵を盗まれたドラゴンが霊峰から飛び立った。問題は犯人がどっちに向かったかだよなぁ」
「シャムス兄、どう?」
『領地が荒らされてラセンぷんぷんしちゃう』
「だめだめ、ドラゴン守って、アー君、ドラゴン!」
「ママ、夕食前だけどちょっと付き合ってもらってもいいかなぁ!」

 シャムスの一言にガタガタと子供達が立ち上がって一斉にこちらを見た。
 はいはい、緊急事態ですね、どこにでもお付き合いしますよー。
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