40 / 926
第一章 紡がれる日常
第39話
しおりを挟む
帰る前におやつを食べたいとおねだりされたので、広場の隅っこをお借りしておやつタイムです。
「ん? 食べたのは邪神一家だけでその他は俺も含めて誰も食べてない?」
メニュー画面にへばりつく寸前、気付いたアー君が慌てて近くに転がっていた男性に声をかけた。
隅に寄ってはいるけどあちこちに転がっている人達は本日の功労者、邪神一家に休むことなく食事を運び続けた人達みたいです、配られた葡萄の女王を食べる余裕すらないみたい。
ここ帝国だからねぇ、刀国と違って屋台の数が少ない、その少ない屋台さえ邪神一家に食べつくされた後。
夕食どうするんだろう、明日以降の食糧あるのかな、ダンジョン入る余裕残ってる?
「イグー」
「おう、どうした」
満腹になって寝てしまった兄弟を夢の世界に移動させていたイグちゃんが、アー君に呼ばれてこちらに寄ってきた。
移動させていたというよりは、アイテムボックスに突っ込んでいるようにしか見えなかったけどね。
「人間が朝から食べてないみたいなんだ、手っ取り早く回復させたいからラミアの所に行ってひよこ豆もらってきてくれ」
「任せておけ」
「ママ、コンソメ大量に出してもらっていいか?」
他にも玉ねぎやトマトなどを出してアー君に渡したら、屋台の片付けをしているおっちゃんらの所へと持って行った。
どうやら彼らに手伝ってもらうようだ、僕も手伝おうとしたけれど、涼玉のお腹が盛大に鳴ったので申し訳ないけれどこちらを優先させてもらいます。
「何がいいかな?」
『手早くぽちー』
すでに考えてあったのか、メニュー画面を開いたシャムスが迷いなく肉まん画面を呼び出して中華まん各種をポチポチと連打し始めた。
シャムス一人の連打なら大した被害はないから大丈夫だろう。
「ふわふわ、つぶあんふわふわ」
「涼玉様こちらもお飲みください、ウーロン茶です」
「ん!」
歌って踊ってよほどお腹が空いていたのだろう涼玉が、シャムスの出した中華まんを両手に持って必死に食べている。
その横でマールスが次の中華まんを片手に待機し、飲み物を合間に飲ませたりと世話を焼いているのはいつもの光景かな。
「ピザまんウマウマ」
「まま、えちびりまん食べてみたい」
「ちょっと待ってね、うーん、シャムスにはちょっと辛いかな」
「そーなのー、じゃあ肉まんにしておくの」
最近は肉まんにも種類が増えたなぁ、この黒い中華まんはうわぁ激辛系か、帰ったら刀雲に食べてもらってみようかな。
「ほれひよこ豆スープだぞ、食え」
「うぉぉぅぉ」
僕らが中華まんを楽しんでいる間にひよこ豆のスープが出来上がったようで、イグちゃんが倒れた人間に食べさせて回っていた。
何気に人間に優しいし、面倒見がいいよねイグちゃんって。
対する人間はゾンビのようなうめき声を上げながらスプーンに手を伸ばしています。
「ぐぉぅ!」
「「シャーーー!!」」
魔物の雄たけびが聞こえたからなんだとそちらを見たら、鍋を腕に抱えた一つ目親分が自分の周りにいる魔物に指示を出している所だった。
命令を受け、皿とスプーン片手に散る子分たち、目指す先には力尽きた人間。
そっと頭を抱え上げ、優しく口元にスープを運ぶ異形の魔物、心が温まるような温まらないような微妙な光景だなぁ。
あの光景の原因はというと、神薙さんはスペシャルサービスを受けに熊さん茶屋へ、ヨムちゃんはお仕事のため神殿に帰還、その他のイグちゃん以外の邪神兄弟はご就寝。
セティは騎士様に連れられ「ちょっとお仕事」に行ってしまった。
「あ、そういえば穴」
ふと思い出して空を見たら、あの不吉な大穴はもうどこにもなかったです。
ごめん気づかなかった。えっちゃんありがとー。
「ん? 食べたのは邪神一家だけでその他は俺も含めて誰も食べてない?」
メニュー画面にへばりつく寸前、気付いたアー君が慌てて近くに転がっていた男性に声をかけた。
隅に寄ってはいるけどあちこちに転がっている人達は本日の功労者、邪神一家に休むことなく食事を運び続けた人達みたいです、配られた葡萄の女王を食べる余裕すらないみたい。
ここ帝国だからねぇ、刀国と違って屋台の数が少ない、その少ない屋台さえ邪神一家に食べつくされた後。
夕食どうするんだろう、明日以降の食糧あるのかな、ダンジョン入る余裕残ってる?
「イグー」
「おう、どうした」
満腹になって寝てしまった兄弟を夢の世界に移動させていたイグちゃんが、アー君に呼ばれてこちらに寄ってきた。
移動させていたというよりは、アイテムボックスに突っ込んでいるようにしか見えなかったけどね。
「人間が朝から食べてないみたいなんだ、手っ取り早く回復させたいからラミアの所に行ってひよこ豆もらってきてくれ」
「任せておけ」
「ママ、コンソメ大量に出してもらっていいか?」
他にも玉ねぎやトマトなどを出してアー君に渡したら、屋台の片付けをしているおっちゃんらの所へと持って行った。
どうやら彼らに手伝ってもらうようだ、僕も手伝おうとしたけれど、涼玉のお腹が盛大に鳴ったので申し訳ないけれどこちらを優先させてもらいます。
「何がいいかな?」
『手早くぽちー』
すでに考えてあったのか、メニュー画面を開いたシャムスが迷いなく肉まん画面を呼び出して中華まん各種をポチポチと連打し始めた。
シャムス一人の連打なら大した被害はないから大丈夫だろう。
「ふわふわ、つぶあんふわふわ」
「涼玉様こちらもお飲みください、ウーロン茶です」
「ん!」
歌って踊ってよほどお腹が空いていたのだろう涼玉が、シャムスの出した中華まんを両手に持って必死に食べている。
その横でマールスが次の中華まんを片手に待機し、飲み物を合間に飲ませたりと世話を焼いているのはいつもの光景かな。
「ピザまんウマウマ」
「まま、えちびりまん食べてみたい」
「ちょっと待ってね、うーん、シャムスにはちょっと辛いかな」
「そーなのー、じゃあ肉まんにしておくの」
最近は肉まんにも種類が増えたなぁ、この黒い中華まんはうわぁ激辛系か、帰ったら刀雲に食べてもらってみようかな。
「ほれひよこ豆スープだぞ、食え」
「うぉぉぅぉ」
僕らが中華まんを楽しんでいる間にひよこ豆のスープが出来上がったようで、イグちゃんが倒れた人間に食べさせて回っていた。
何気に人間に優しいし、面倒見がいいよねイグちゃんって。
対する人間はゾンビのようなうめき声を上げながらスプーンに手を伸ばしています。
「ぐぉぅ!」
「「シャーーー!!」」
魔物の雄たけびが聞こえたからなんだとそちらを見たら、鍋を腕に抱えた一つ目親分が自分の周りにいる魔物に指示を出している所だった。
命令を受け、皿とスプーン片手に散る子分たち、目指す先には力尽きた人間。
そっと頭を抱え上げ、優しく口元にスープを運ぶ異形の魔物、心が温まるような温まらないような微妙な光景だなぁ。
あの光景の原因はというと、神薙さんはスペシャルサービスを受けに熊さん茶屋へ、ヨムちゃんはお仕事のため神殿に帰還、その他のイグちゃん以外の邪神兄弟はご就寝。
セティは騎士様に連れられ「ちょっとお仕事」に行ってしまった。
「あ、そういえば穴」
ふと思い出して空を見たら、あの不吉な大穴はもうどこにもなかったです。
ごめん気づかなかった。えっちゃんありがとー。
20
お気に入りに追加
150
あなたにおすすめの小説


飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい
拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。
途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。
他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる