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第一章 紡がれる日常

第33話

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 秋のダンジョン、どうやらマーキングの役目も持っていたようです。

「え、そうなの!?」

 朝食が終わり、学園に送り出そうとしたら本日は特別休暇を取ったと言ってアー君が座敷に残ったので、理由を聞いたらまさかの帝国のピンチだった。
 標的が刀国じゃなく帝国なのは、女神様があっちにいるからかな?

「ダンジョンの上空に大穴が開いてそこから何か出てきそうな感じ、んーと漫画のクライマックスで絶望を演出するために出現するゲートの同類かな? ただ、開いただけで何も出てこない」
『出てこないの?』
「何重に罠張っておいたんだろうな? 粘着質だなぁ」
「わたしのキックで破壊してやろうか?」
「ネヴォラの蹴りで涼玉を打ち上げて、炎で破壊するのはどう?」

 話題に割り込んだネヴォラとアテナの提案が物騒です、無理だから止めておこうね、涼玉がマールスの後ろに隠れちゃったよ。

 でもそうか真面目な用があるならいなり寿司作る手伝いする余裕はないよね、油揚げに詰めるだけならシャムスと涼玉にもできるかな?
 もちろん分裂したマールス七体にも手伝ってもらうけど。

「はいはい、さすがに子供には荷が重いから手出ししちゃだめだよ」
「騎士様が意地悪!」
「レディに譲るべきよ!」
「ほら二人ともこっちに来て料理手伝ってね」
「手伝ってやる!」
「花嫁修業ね!」

 騎士様に食って掛かりそうな二人を呼び寄せ、本日のお昼のお手伝いをさせることにした。
 目の前に用意されているのは大量の酢飯と油揚げ、詰めるだけ、とても簡単、アレンジが入ったいなり寿司はマールスとドリアンにお任せです。
 でも作る量が三桁。

 さぁ騎士様、今のうちにアー君と打ち合わせを続けてください。

「パパ、あれどうやって閉じるんだ?」
「鈴にパチンとやってもらおうかなって、ただ神薙が餌を期待して待機しちゃってるから安易に閉じるとご機嫌損ねちゃうんだよね」
「うっわぁ」

 どうやら閉じるのは簡単みたいだけど最大の障害が神薙さんのようです、頑張って説得してください。

「イツキ、袋閉じない、溢れる」
「ネヴォラはご飯入れすぎよ」

 アテナがお姉さんぶってネヴォラに教えているけど、ネヴォラの方が年上のはずなんだよなぁ。
 まぁ我が家では実年齢あまり関係ないか。

「このままじゃ神薙の涎であの街が沈んじゃうよ」
「なぁパパ、思ったんだけど」
「どうしたのアー君?」
「もしかしてゲートから何も出てこないのって神薙様のせいなんじゃない? 邪神一家がジロジロ見てるからビビッて出てこない、とか」

 アー君の指摘に騎士様が崩れ落ちた。

「ありえる」
「結界張ってさ、その中に入ってもらって気配消してみたらどうだろう」
『待ち疲れのストレスで死地になる前にやるの』
「むしろゲート内の何かがストレスで死んでそうだな! あといなり破裂したぞマールス!」
「少々力を入れすぎたのでしょう、いっそ閉じないいなりを作られると良いでしょう」
「おおー」

 なんか涼玉のセリフが一番事実に近い気がしてきた。
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