神様のポイント稼ぎに利用された3

ゆめ

文字の大きさ
上 下
33 / 927
第一章 紡がれる日常

第32話

しおりを挟む
 葡萄の女王の亜種「紅マスカット」はあの後、熊さん茶屋の名物となった。
 そうは言っても最奥に辿り着けるのって限られているんだけどね、神様とか邪神とか、たまーに冒険者パーティー。

 訪れる客が少ないからこそ出来る最高のサービスを提供してくれる隠れ宿、オーナーはダンジョンコアを取り込んだボスとその伴侶。
 かつて自分が作った隠れ家をもふもふ集団に乗っ取られた事のある騎士様はこれに大喜び、たまに刀雲と一緒に釣りがてら泊りがけで遊びに行っている。

 騎士様が行くから当然女神様も行きたがる。
 結果、秋のダンジョンを管理する街は皇帝一家がお忍びで訪れる街になったそうです、あの皇帝も女神様に振り回されて結構自由な感性になったよなぁ。

 僕の数人目の旦那様である帝国教会の教皇、あの人もしょっちゅうここに来てるらしい。
 名目はえーっとなんだっけ、女神様が訪れる地への巡礼? 一応あの女神様を祀る宗教のトップだから言い訳としては成立してるのかな?

「アー君、僕は思ったんだ」
「俺が真面目に学園に通っている間にダンジョンに新たな愉快さを提供した言い訳なら聞こう」

 秋のダンジョンで採取を楽しみ、魔物に護衛してもらいつつ安全に帰還したらアー君に会議室に連行されました。

「カジキマグロは僕のせいじゃない、あれはヨムちゃんの優しさ!」
「冒険者からの苦情がすんごいだけど!!」

 しかもただのカジキマグロじゃない、カジキの中で最高級品って言われているマカジキだってヨムちゃんが言ってたんだけど口に出したら怒られる予感。
 ヨムちゃん、どうしても空飛ぶカジキが見たかったんだって。

 成魚は全長3m超え、体重100kg超が地球の基準。
 異世界では魔物に分類される上にヨムちゃんの期待に応えてこちらも進化、5mを超える巨体だそうです。
 さらに言えばダークフレイム的な魔法を使って攻撃してくるらしいよ、おっかないですねぇ。

「違うんだアー君、僕が言いたかったのは、この街に一人ぐらい邪神一家の誰かが在中した方がいいんじゃないかっていう提案!」
「真面目な内容だった」
『アーくーん』
「にいちゃコイツ凄い、俺を乗せて飛べるんだ!」

 会議室の窓の外を幼児を乗せたメカジキが飛んでいる。
 アー君がちょっと羨ましそうだ。

「なにあれ、幼児とは言え、ドラゴン乗せて飛べるって本当にカジキ?」
「あれ群れのリーダーらしいよ、僕も乗せてもらったけど安定感が凄い」

 本来なら手が届かない場所の採取、本当に楽しかった。
 涼玉なんて「うははは、人間がごみのようだー」ってはしゃいでたもんね、自分で飛べるけど高度はそんなにないから余計に楽しそうだった。

「にいちゃ、にいちゃ! 追放された聖女(男)拾った!」
「元の場所に戻して来なさい!」
『戻すより先に牛さんがハーレムに連れて行っちゃった』
「あの牛、手が早すぎないか?」

 どうやらテンプレが発生したと思ったら、素早く牛さんが回収してしまったようです。
 ハーレム要員にされたとしても監禁されたりする訳ではなく、ある程度の自由はあるようなので頑張って領主な牛さんのために能力を発揮してほしい。

「聖女ってことはあれか、貴様を使ってやるから戻って来い系も出るのかぁ」
「嫁に手出しされたら牛さん激怒するんじゃない?」
「よいしょっと、追放理由はまだ聞いてないからどのテンプレか分からないな!」

 涼玉が窓を乗り越えて室内に入ってきた。
 きっとマールスがお菓子とお茶を持ってそのうち来ることだろう。

「ままー」

 一緒に入ってきたシャムスはすでに僕の膝の上です、二人を乗せていたカジキはそれぞれ森へ戻るかと思いきや、窓の外をふよふよしながら待機中。
 窓の外から室内を覗くカジキ、正直怖い。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい

拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。 途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。 他サイトにも投稿しています。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。

カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。 異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。 ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。 そして、コスプレと思っていた男性は……。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

処理中です...