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第一章 紡がれる日常
第10話
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かくして我が家のおてんばコンビがやらかした内容はすぐに知れた。
「かっちゃ助けてえぇぇ!!」
「イツキィィ、うぇぇぇ怖いぃぃ」
「GYAAAAAAA!!」
ぎゃん泣きして理由を聞くどころではなかったけれど、原因が少し遅れて森から飛び出してきたからね。
群れを成した巨木が物凄い勢いで森から次々出てくる姿は圧巻、まるで森が移動しているような光景に思わず感心してしまった。
「トレントだね、しかも暴走してる」
「カイちゃん解説ありがと! ついでに倒してくれると嬉しいな!」
「僕がやると消滅しちゃうし、シャムスお願い」
『あーい』
「マールス! こっちに」
「っは!」
攻撃を避けながらジグザグに走っていたマールスがこちらに一直線に走ってきた。
その背中に向かってトレントが銃弾のように何かを連射しているんだけど、あれは一体なんだろうか。
「マールス、マールスごめぇぇぇん」
「うえぇぇマールスが銀杏くさーい」
アテナの泣き言にダメージを受けながらも、何とかマールスが僕らの元に辿り着いた。
外傷はないけどアテナの言葉によって受けた精神的ダメージが大きそうです。
「GISYAAAAAA!!」
「おしゅわりー」
「ギシャ」
停止したマールスに一斉攻撃を仕掛けようとしたトレントにシャムスが一言命じると、急ブレーキをかけてその場で一斉停止した。
しかもその勢いでトレントの頭部に実っていた実が幾つかこちらに飛んできたのだけど、それはカイちゃんが目にも止まらぬ速さで切り落としてくれた。
……さつま芋?
あ、でもなんか銀杏の匂いがする。
「僕のかぞくいじめちゃめーよ」
「カカ!!」
叱責に一斉に敬礼して答えるトレント、シャムスが凄い。
「グ、グギャ、ギャ」
先頭の一体が苦し気に身を折っているんだけど、もしやあれは頭を下げているのだろうか。
本体木だから苦しいだろうに、一瞬でここまで服従させるシャムスが素晴らしい。
「適当に草原にばらけてもらいましょう、木陰があった方が休憩にもいいですし」
「しょうね、じゃあ行っていーよ」
カイちゃんがいて良かった。
状況を見て適切な判断をしてくれるから本当に助かります。
「ああ皆さんももう大丈夫ですよ」
屋台の前でナタやら斧やら槍などを構えていた店主さん達が、ホッとしたように仕事に戻っていく。
その光景を見て彼らも守るべき対象と判断したのかどうなのか、トレントが数体のそのそと屋台に近づいて行ってその背後で動きを止めた。
「おー、こりゃちょうどいい日陰だなぁ」
「こいつのさつま芋、オレンジの匂いがするんだけど」
さすが刀国の店主達、状況に慣れるのがやたら早い。
けどオレンジの匂いがするさつま芋ってどういうこと!?
「あ、あー失敗したぁ」
「疲れた。カイちゃんジュースちょーだい」
「種を植えるなら母様の近くでやれば良かったのに、マールス、二人は私が見ているから、水浴びと着替えして匂い落としてきなさい」
「ありがとうございます」
マールスが一時離脱し、涼玉とアテナが一息ついた所で事情を聴いてみた。
カイちゃんが指摘した通り、どうやら二人は昨日作った種を平地があったので植えてみたらしい、そしたらダンジョンの魔素と涼玉&グラちゃん効果でトレントが爆発的成長を遂げ、あのようなちょっとしたスタンピードを起こしてしまったようです。
「怪我人が出なくて良かったぁ」
「かあちゃん大変だったな! サンマの串焼き食うか?」
「ヨムちゃん……もしかしてずっと屋台に張り付いてたの?」
「おう! イネスや海鮮狙いの連中は今も張り付いたままだぞ!」
僕とシャムスがいればどうにかなると思い、特に何も心配していなかったそうです。
それよりも海の幸を食べる方が大事だったと、冒険者って護衛も兼ねてるんじゃなかったっけ?
「実は種、まだ残ってるんだ」
「全部植える前に暴走起きちゃった」
「母様の目の届く範囲に植えれば暴走はないと思うよ、それか夢の世界に植えるのはどうかな」
『精霊に秋のおすそ分けー』
「そうするか。アテナもいいか?」
「いいよ、トレントおっかなかったからもういいや」
そう言うと、えへへと笑いながら近付いてきて、ごろんと転がると僕の膝を枕に目を閉じた。
「ちょっと休憩!」
「一日は長いから大丈夫、少ししたら起こすね」
「うん! ぐーーーー」
言うが早いかアテナは寝てしまった。
まだまだ子供だからね、寝るのなんて一瞬ですよ。
しかし浅い場所でこの騒ぎって、深い場所はどんなトラブルが起こっているんだろうか。
みんな大丈夫かなぁ。
「かっちゃ助けてえぇぇ!!」
「イツキィィ、うぇぇぇ怖いぃぃ」
「GYAAAAAAA!!」
ぎゃん泣きして理由を聞くどころではなかったけれど、原因が少し遅れて森から飛び出してきたからね。
群れを成した巨木が物凄い勢いで森から次々出てくる姿は圧巻、まるで森が移動しているような光景に思わず感心してしまった。
「トレントだね、しかも暴走してる」
「カイちゃん解説ありがと! ついでに倒してくれると嬉しいな!」
「僕がやると消滅しちゃうし、シャムスお願い」
『あーい』
「マールス! こっちに」
「っは!」
攻撃を避けながらジグザグに走っていたマールスがこちらに一直線に走ってきた。
その背中に向かってトレントが銃弾のように何かを連射しているんだけど、あれは一体なんだろうか。
「マールス、マールスごめぇぇぇん」
「うえぇぇマールスが銀杏くさーい」
アテナの泣き言にダメージを受けながらも、何とかマールスが僕らの元に辿り着いた。
外傷はないけどアテナの言葉によって受けた精神的ダメージが大きそうです。
「GISYAAAAAA!!」
「おしゅわりー」
「ギシャ」
停止したマールスに一斉攻撃を仕掛けようとしたトレントにシャムスが一言命じると、急ブレーキをかけてその場で一斉停止した。
しかもその勢いでトレントの頭部に実っていた実が幾つかこちらに飛んできたのだけど、それはカイちゃんが目にも止まらぬ速さで切り落としてくれた。
……さつま芋?
あ、でもなんか銀杏の匂いがする。
「僕のかぞくいじめちゃめーよ」
「カカ!!」
叱責に一斉に敬礼して答えるトレント、シャムスが凄い。
「グ、グギャ、ギャ」
先頭の一体が苦し気に身を折っているんだけど、もしやあれは頭を下げているのだろうか。
本体木だから苦しいだろうに、一瞬でここまで服従させるシャムスが素晴らしい。
「適当に草原にばらけてもらいましょう、木陰があった方が休憩にもいいですし」
「しょうね、じゃあ行っていーよ」
カイちゃんがいて良かった。
状況を見て適切な判断をしてくれるから本当に助かります。
「ああ皆さんももう大丈夫ですよ」
屋台の前でナタやら斧やら槍などを構えていた店主さん達が、ホッとしたように仕事に戻っていく。
その光景を見て彼らも守るべき対象と判断したのかどうなのか、トレントが数体のそのそと屋台に近づいて行ってその背後で動きを止めた。
「おー、こりゃちょうどいい日陰だなぁ」
「こいつのさつま芋、オレンジの匂いがするんだけど」
さすが刀国の店主達、状況に慣れるのがやたら早い。
けどオレンジの匂いがするさつま芋ってどういうこと!?
「あ、あー失敗したぁ」
「疲れた。カイちゃんジュースちょーだい」
「種を植えるなら母様の近くでやれば良かったのに、マールス、二人は私が見ているから、水浴びと着替えして匂い落としてきなさい」
「ありがとうございます」
マールスが一時離脱し、涼玉とアテナが一息ついた所で事情を聴いてみた。
カイちゃんが指摘した通り、どうやら二人は昨日作った種を平地があったので植えてみたらしい、そしたらダンジョンの魔素と涼玉&グラちゃん効果でトレントが爆発的成長を遂げ、あのようなちょっとしたスタンピードを起こしてしまったようです。
「怪我人が出なくて良かったぁ」
「かあちゃん大変だったな! サンマの串焼き食うか?」
「ヨムちゃん……もしかしてずっと屋台に張り付いてたの?」
「おう! イネスや海鮮狙いの連中は今も張り付いたままだぞ!」
僕とシャムスがいればどうにかなると思い、特に何も心配していなかったそうです。
それよりも海の幸を食べる方が大事だったと、冒険者って護衛も兼ねてるんじゃなかったっけ?
「実は種、まだ残ってるんだ」
「全部植える前に暴走起きちゃった」
「母様の目の届く範囲に植えれば暴走はないと思うよ、それか夢の世界に植えるのはどうかな」
『精霊に秋のおすそ分けー』
「そうするか。アテナもいいか?」
「いいよ、トレントおっかなかったからもういいや」
そう言うと、えへへと笑いながら近付いてきて、ごろんと転がると僕の膝を枕に目を閉じた。
「ちょっと休憩!」
「一日は長いから大丈夫、少ししたら起こすね」
「うん! ぐーーーー」
言うが早いかアテナは寝てしまった。
まだまだ子供だからね、寝るのなんて一瞬ですよ。
しかし浅い場所でこの騒ぎって、深い場所はどんなトラブルが起こっているんだろうか。
みんな大丈夫かなぁ。
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