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~番外編~ 夏の花は優しい日差しに包まれる
第10話
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日曜日の昼になって、昨日の事で落ち込んでいる芹香を元気付けようと芽衣と真奈美は芹香を誘った。カフェで丸いテーブルを囲むように座る。
「………ご心配おかけしました」
芹香が第一声の言葉を綴る。
「まあ、とりあえず無事だったんだから良かったんじゃない?」
ホットミルクティーを飲みながら芽衣が言う。
「全く………、本当に危機感が足りないわね。そういうところは昔から変わらないわ。人の言葉を信じやすいっていうか………」
呆れるようにホットコーヒーを飲みながら棘があるように真奈美が言う。
「本当にすみませんでした……」
芹香が叱られた子犬みたいに項垂れる。そして、芽衣に視線を向けて恐る恐る聞く。
「なんで、芽衣ちゃんは今回のことが予想できたの?」
「確かにそうよね。なんで分かったのよ?」
芹香の問いに同意するように真奈美も芽衣に視線を向ける。その問いに芽衣はあっさりと答える。
「あぁ、胸の大きさよ」
「「……胸……??」」
芽衣の理解ができない言葉に芹香と真奈美の声が重なる。
「正規のモデルって、基本胸が大きいのはNGなのよ。芹香は割と胸は大きい方だからね。モデルをするのに必要なのは、バスト、ウエスト、ヒップのバランスなのよ。確かに芹香は運動をしているから体は引き締まっているけど、バランスでいくと胸が大きい方だから、モデル体型としてはアンバランスになるのよ。だから、もしかしたら……と思って調べてみたの。そしたら、やっぱり思った通りだったというわけ」
芽衣の説明になんだか納得がいく芹香と真奈美。
「芽衣ちゃん、今回はありがとう。私、もう少しで道を踏み外すところだった……」
そう言いながら、芹香は涙を溜めた。
「まぁ、これからはこんなことにならないように気を付ける事ね」
「うん……」
「とりあえず、無事だったんだし楽しくお話しようよ!」
芽衣がぴしゃりと言った後で優しく言う。
「ありがとう!芽衣ちゃん!」
芹香が笑顔になる。
(…………あれ?)
芹香の記憶の中で何か懐かしい記憶が思い出したような感じだったが、すぐに消えた。
(なんか、すごく懐かしいようなことを思い出したような………??)
芹香は考えてみるが思い出せない。
(まぁ、いっか……)
そして、他愛無い話をワイワイと三人でお喋りしていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。夕方の五時ごろになり、三人は店を出た。
途中から芹香は道が違うのでそこで二人とサヨナラする。芽衣と真奈美は家の方向が同じなので一緒に並んで帰る。
「ねぇ、真奈美はまだ時間ある?」
「あるわよ?」
「ちょっと、私の家に寄って行かない?芹香の事で話があるのよ」
「分かったわ」
芽衣の提案に真奈美がOKの返事を出す。
その頃、透の家では透の父が今回の事件のことを話してくれていた。リビングのソファーに腰掛けてくつろぎながら話している。
「お手柄だったね、透。今回の事件が一気に解決したよ」
「まぁ、礼を言うなら土方に言ってくれよ。あいつの知識が今回は役に立ったんだからな」
「ところで、透。これを機に話そうと思うんだが……」
「……?」
そう言って、透の父がある事を話す。透は最初は驚いたものの、全く興味がないわけでもなかったことだった。父が更に続ける。
「――――――それに、もしかしたら透が悩んでいることも解決するかもしれないよ?」
「えっ……?」
「実はね………」
そう言って透の父はあるもう一つの話をする。透はその話に微かな希望を持つ。
「じゃあ、爺さんも……?」
「あぁ、同じような悩みを抱えていたんだよ」
「じゃあ、本当に……?」
「絶対とは言い切れないが、もしかしたら可能性はあるかもしれないな」
父の言葉に透は悩む。もしその可能性があるならそうしたい。でも、それと同時に透の『透なりの目標』をその間、できなくなってしまう………。
「答えはすぐに出さなくていい。決まったら返事をくれればいいよ」
すぐに答えが出るようなことでもないことを父は分かっているので、何日かの考える期間を与える。その後、じっくり考えるために透は自分の部屋に行く。机に広げてある本とそれを元に考察するためのノートが開いたままになっていた。それを見て、呟く。
「どうしたらいいんかな………?」
真奈美は芽衣の家に着くと、顔を出した芽衣の祖母にあいさつをしてお邪魔した。芽衣の部屋に行き、部屋の真ん中にある小さなテーブルを囲むように座る。
「で?話って何なのよ?」
「今日のカフェでの事よ」
「………あぁ、あの事ね」
真奈美が察したように返事する。
「あくまで、私の提案なんだけど………」
そう言って、芽衣がある事を真奈美に話し始める。
芽衣と真奈美と別れてからの帰り道で芹香は大きなため息を一つ吐いた。
「どうしよう………」
先程のカフェでの話がグルグルと頭の中を駆け巡っている。
話の内容は「高校を出たらどうするか?」という話だった。
芽衣は深みのある小説を書けるようになりたいという理由から、△△大学の心理学部に推薦での入学が決まっているという。
真奈美も教師になるのが夢だからという事で□□大学の教育学部に行くために勉強しているとのことだった。
芽衣も真奈美もちゃんと将来を見据えてそれに伴って行動している。
自分だけが何も決まっていない。
なんとなく取り残されている感覚に陥り、気分が落ち込む。
「私のなりたいものかぁ………」
そう呟いてから、ハッとする。
「ダメダメ!こんな顔してたらまた変なのに捕まっちゃう!!」
そう言ってじぶんの顔を両手でぴしゃりと叩く。
「よし!家に着いたらちゃんと自分が何になりたいかを考えよう!!」
そう言って、気持ちを切り替えるようにする。
いろんな気持ちが交差する。
芹香の気持ち。
透の気持ち。
芽衣と真奈美の想い。
それぞれの気持ちが交差しながら夜が更けていく………。
「………ご心配おかけしました」
芹香が第一声の言葉を綴る。
「まあ、とりあえず無事だったんだから良かったんじゃない?」
ホットミルクティーを飲みながら芽衣が言う。
「全く………、本当に危機感が足りないわね。そういうところは昔から変わらないわ。人の言葉を信じやすいっていうか………」
呆れるようにホットコーヒーを飲みながら棘があるように真奈美が言う。
「本当にすみませんでした……」
芹香が叱られた子犬みたいに項垂れる。そして、芽衣に視線を向けて恐る恐る聞く。
「なんで、芽衣ちゃんは今回のことが予想できたの?」
「確かにそうよね。なんで分かったのよ?」
芹香の問いに同意するように真奈美も芽衣に視線を向ける。その問いに芽衣はあっさりと答える。
「あぁ、胸の大きさよ」
「「……胸……??」」
芽衣の理解ができない言葉に芹香と真奈美の声が重なる。
「正規のモデルって、基本胸が大きいのはNGなのよ。芹香は割と胸は大きい方だからね。モデルをするのに必要なのは、バスト、ウエスト、ヒップのバランスなのよ。確かに芹香は運動をしているから体は引き締まっているけど、バランスでいくと胸が大きい方だから、モデル体型としてはアンバランスになるのよ。だから、もしかしたら……と思って調べてみたの。そしたら、やっぱり思った通りだったというわけ」
芽衣の説明になんだか納得がいく芹香と真奈美。
「芽衣ちゃん、今回はありがとう。私、もう少しで道を踏み外すところだった……」
そう言いながら、芹香は涙を溜めた。
「まぁ、これからはこんなことにならないように気を付ける事ね」
「うん……」
「とりあえず、無事だったんだし楽しくお話しようよ!」
芽衣がぴしゃりと言った後で優しく言う。
「ありがとう!芽衣ちゃん!」
芹香が笑顔になる。
(…………あれ?)
芹香の記憶の中で何か懐かしい記憶が思い出したような感じだったが、すぐに消えた。
(なんか、すごく懐かしいようなことを思い出したような………??)
芹香は考えてみるが思い出せない。
(まぁ、いっか……)
そして、他愛無い話をワイワイと三人でお喋りしていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。夕方の五時ごろになり、三人は店を出た。
途中から芹香は道が違うのでそこで二人とサヨナラする。芽衣と真奈美は家の方向が同じなので一緒に並んで帰る。
「ねぇ、真奈美はまだ時間ある?」
「あるわよ?」
「ちょっと、私の家に寄って行かない?芹香の事で話があるのよ」
「分かったわ」
芽衣の提案に真奈美がOKの返事を出す。
その頃、透の家では透の父が今回の事件のことを話してくれていた。リビングのソファーに腰掛けてくつろぎながら話している。
「お手柄だったね、透。今回の事件が一気に解決したよ」
「まぁ、礼を言うなら土方に言ってくれよ。あいつの知識が今回は役に立ったんだからな」
「ところで、透。これを機に話そうと思うんだが……」
「……?」
そう言って、透の父がある事を話す。透は最初は驚いたものの、全く興味がないわけでもなかったことだった。父が更に続ける。
「――――――それに、もしかしたら透が悩んでいることも解決するかもしれないよ?」
「えっ……?」
「実はね………」
そう言って透の父はあるもう一つの話をする。透はその話に微かな希望を持つ。
「じゃあ、爺さんも……?」
「あぁ、同じような悩みを抱えていたんだよ」
「じゃあ、本当に……?」
「絶対とは言い切れないが、もしかしたら可能性はあるかもしれないな」
父の言葉に透は悩む。もしその可能性があるならそうしたい。でも、それと同時に透の『透なりの目標』をその間、できなくなってしまう………。
「答えはすぐに出さなくていい。決まったら返事をくれればいいよ」
すぐに答えが出るようなことでもないことを父は分かっているので、何日かの考える期間を与える。その後、じっくり考えるために透は自分の部屋に行く。机に広げてある本とそれを元に考察するためのノートが開いたままになっていた。それを見て、呟く。
「どうしたらいいんかな………?」
真奈美は芽衣の家に着くと、顔を出した芽衣の祖母にあいさつをしてお邪魔した。芽衣の部屋に行き、部屋の真ん中にある小さなテーブルを囲むように座る。
「で?話って何なのよ?」
「今日のカフェでの事よ」
「………あぁ、あの事ね」
真奈美が察したように返事する。
「あくまで、私の提案なんだけど………」
そう言って、芽衣がある事を真奈美に話し始める。
芽衣と真奈美と別れてからの帰り道で芹香は大きなため息を一つ吐いた。
「どうしよう………」
先程のカフェでの話がグルグルと頭の中を駆け巡っている。
話の内容は「高校を出たらどうするか?」という話だった。
芽衣は深みのある小説を書けるようになりたいという理由から、△△大学の心理学部に推薦での入学が決まっているという。
真奈美も教師になるのが夢だからという事で□□大学の教育学部に行くために勉強しているとのことだった。
芽衣も真奈美もちゃんと将来を見据えてそれに伴って行動している。
自分だけが何も決まっていない。
なんとなく取り残されている感覚に陥り、気分が落ち込む。
「私のなりたいものかぁ………」
そう呟いてから、ハッとする。
「ダメダメ!こんな顔してたらまた変なのに捕まっちゃう!!」
そう言ってじぶんの顔を両手でぴしゃりと叩く。
「よし!家に着いたらちゃんと自分が何になりたいかを考えよう!!」
そう言って、気持ちを切り替えるようにする。
いろんな気持ちが交差する。
芹香の気持ち。
透の気持ち。
芽衣と真奈美の想い。
それぞれの気持ちが交差しながら夜が更けていく………。
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