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最終章 そして、白い鳥たちは大空へ向かう

第14話

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『……何の御用でしょうか?』



 しばらく間があり女性が訝しげな声で問う。



「突然申し訳ありません!私、結城颯希と言う者ですが、十二年前の放火事件で玲さんも被害者なのではないかと思い、心配になり、訪ねてきました!」



 颯希が早口でそう言葉を綴る。



 女性からの返答はない。



 しばらく沈黙が続く。





 ――――ガチャ!





 突然玄関のドアが開き、一人の年配の女性が顔を出す。



「話すことは何もありません……。お帰り下さい……」



 どこか睨みつけるように女性が颯希たちに言葉を放つ。そして、すぐにドアを閉めようとしたので颯希が思わず叫ぶ。



「待ってください!!」



 颯希の声に女性の動きが止まる。



「実は、その放火で一人の女性が被害に遭っている可能性がある事が分かったのです!」



 颯希の言葉に女性が大きく目を見開く。そして、颯希が更に言葉を綴る。



「なので、もしかして玲さんも被害者なのかもしれないと思い、こうして伺ったのです!」



 颯希の言葉に女性は少し震えているように見える。



「何も話すことはありません……。その事件と玲は何も関係ありません……。お引き取りください……」



 女性はそう告げると、家の中に入っていく。



「……なんか様子がおかしくなかったか?」



 女性の態度で静也が不信感を露わにしながら言葉を綴る。



「何かを隠している感じですね……」



 颯希も同様に感じたらしく、そう呟く。





「あの人……まさか……」



 来客があるなんて珍しいなと感じた玲は窓際に行き、玄関での様子を見る。そして、訪ねてきた人物を見て驚きの声を上げる。そして、高校の集合写真を机から取り出し、その人物を確認する。



「やっぱり、あの人だ……」



 そして、タブレットで母親に楓がなぜ訪ねてきたのかを聞く。





 ――――ピコンっ!





 返事がすぐに来て、母親からのメッセージを開く。



『何でもないわ。何もないわ』



 母親からはただそれだけしか書かれてなかった。



 突然、何があって楓が訪ねてきたのか気になるものの、自分には連絡手段がない。楓の連絡先が一切分からないので何の用事で来たのかを聞くことすらできない。



 自分の立場を呪う……。



 どうしようもできない自分が恨めしく感じた。







ユリ『なんだか、不思議な事があったよ』



ユウ『何があったの?』



ユリ『私の火傷を証明して治療費が手に入るようにしてみますって……』



ユウ『……そっか。そうなるといいな』



ユリ『そうだね……』



ユウ『あのさ……、やっぱりユリと会えないかな?場所を指定してくれたらそこまで行くし』



 悠里が友理奈からの返事を待つ。



「……やっぱりダメなんかな……」



 なかなか返事がなくて、悠里が諦めるような声を呟く。



 ――――ピコンっ!



 悠里のパソコンから音がしてメッセージを見る。



ユリ『じゃあさ……』



「……え?」



 友理奈から送られてきたメッセージを見て悠里が驚きの声を出した。







「……どうやら、あんな程度では懲りないらしいな」



 一人の男がもう一人の男に背中を向けながら低い声で言う。



「どうなさいますか?」



 背を向けている男に向き合うよういるもう一人の男がそう尋ねる。



「忠告はした……。しかし、その忠告を無視したのだ……。次は殺せ……」



「し……しかし、その内の一人は……」



 背を向けている男の言葉にもう一人の男が戸惑うような言葉を綴る。



「そんな事はどうだっていい……。次は始末しろ……。分かったな?」



「は……はい……」



「恩を仇で返す様な真似はするなよ?誰のおかげでここにいられるか分かっているな?」



「はい……。承知いたしました……」



「行け……」



 背を向けている男の言葉にもう一人の男がお辞儀をして部屋を出ていく。



「表沙汰になってたまるか……」



 男が出ていったことを見届けると、背を向けていた男がそう小さく呟いた。







「……なんとか、玲さんと連絡を取る方法はないでしょうか?」



 先程の母親の態度が気になり、颯希がなんとか玲と連絡が取れないかと静也と楓と共に近くの公園で作戦会議を行う。



「居るか居ないかも分からなかったし……」



 玲に会えなかったことが少しショックなのか、楓が落ち込んだ様子で言う。



「玲さんのメルアドも分からないですし、携帯の番号も分かりません……。八方塞がりですね……」



 玲に何かしらの方法で連絡が取れないかといろいろ考えるものの、何も連絡が取りようがないことに颯希たちが落胆する。



「……ねえ、こんなのはどうかな?一か八かなんだけど……」



 楓がそう言って、ある提案をする。



「……って言うことなんだけどどうかな?」



 楓の提案に颯希たちが「うーん……」と唸る。



「確かに確率はかなり低いかもしれませんが、今はそれしかありません。その方法でやってみましょう!」



 楓の提案に颯希が力強く返事をする。



 そして、早速その方法に取り掛かった。







「やぁぁぁぁぁ……ぁ……」



 叫び声をあげながら月子がベッドから飛び起きた。



「月子?!」



 月子の叫び声に気付いた月弥が慌てた様子で月子の部屋に入る。



「はぁ……はぁ……はぁ……」



 月子の息が荒い。



 外出先から帰ってきて「横になる」と月子は言うと、部屋に入りベッドで横になっていた。何か怖い夢を見て飛び起きたのだが、起き上がったと同時に何の夢を見ていたのかが分からなくなる。分かるのはとても怖い夢という事だけだった。



「大丈夫だよ……。大丈夫……。何があっても守るから……」



 月弥が月子を優しく抱き締めながらそう言葉を綴る。



「何処にもいかない……。傍にいてずっと月子を守るから……」



 その言葉に安心したのか、月子の呼吸が次第に落ち着き、しばらくするとまた眠りに入っていった。







 日曜日。

 颯希と静也はある場所に訪れていた。そしてある人物にあるお願いをする。



「……庭を?」



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