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第二章 籠の中の鳥は優しい光を浴びる

第8話

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 朝になり、理恵がぼんやりと目を覚ました。



 ピンポーン……。



 そこへ、家のチャイムが鳴り響く。誰だろうと思い、玄関を開けるとそこには二人の刑事が立っていた。



「朝早くに申し訳ありません。南警察署の者です。こちら、桃田さんの自宅でお間違いありませんか?」



 刑事が警察手帳を見せながら理恵にそう尋ねる。



「警察が何か……」



 理恵の言葉に刑事は家に来た内容を説明した。



 昨日の深夜、母親から救急隊に連絡があり、家に行ったら母親が苦しむように唸り声をあげていた。駆け付けた救急隊は急いで病院に搬送し、処置を施した。すると、検査の結果、微量の毒物が胃の中から発見。処置が早かったので母親は死に至らずに済んだが、今も病院で入院しているとのことだった。



「……ということがありまして、一応何らかの事件性があるかもしれないと思い、こうやって家に伺ったのです」



 そして、刑事が母親が誰かに恨まれていることはないかなど、聞いてくるが理恵は何も知らないと答えるので、刑事はその家を後にした。



 理恵の家を訪れた二人の刑事は理恵の家を出た後、不思議に感じたことを話しだす。



「……あの子、なんだか妙じゃなかったか?」

「やっぱりそう思いましたか?」

「あぁ、母親があんなことになったのに特に驚く様子もなかったし、取り乱してもいなかった……。それに、母親が一命をとりとめたっていうのに、安堵した様子がない」

「……どちらかと言えば、悔しそうな顔でしたね」

「もしかしたら、あの娘が毒を仕込んだんじゃないのか?」

「……ちょっと、調べてみましょうかね」



 二人の刑事は先程の理恵の様子が気になり、近所の聞き込みをすることにした。





 刑事が帰ると、理恵は部屋で苛つきを抑えきれなかった。



(……まさか、生きてただなんて……)



 理恵は母親が生きていることに苛立ちを感じ、ボロボロになっているぬいぐるみの手足を引っ張り、バラバラにしていく。そして、手に残った胴の部分に何度もカッターナイフを刺していく。



(もっと……もっと……強い毒を作って苦しみながら殺してやる……)



 狂気を纏いながら、何度も刺していく。



(お母さんを殺して私は自由になるんだ……)



 理恵の心が闇に染まっていく……。



 誰にもこの狂気の沙汰は止められない……。







 颯希は教室を出ると、静也と合流した。

 透に言われたことを静也に話したところ、家まで送ってくれることになったのだった。



「……まぁ、俺も心配だからな」

「すみません……。静也くんにまでご心配を掛けているのです……」



 颯希がお詫びの言葉をかける。

 実は透と話した後、誠や佳澄も透の考察を聞いてかなり心配していた。



「颯希、無茶なことはしないでくれよ……。お父さんも颯希に何かあったらと思うと心配になる……」

「そうよ、颯希。危険な事はしないでね?しばらくはパトロールも中止した方がいいんじゃないかしら?」



 誠や佳澄が颯希を心配して声を掛ける。



「大丈夫なのですよ!パトロールは静也くんもいます!だから、お願いします。パトロールは続けさせてください」



 颯希はそう言いながら頭を下げる。颯希にとってパトロールは将来警察官になるための訓練である。それを無しにすることはできない。地域の安全のためにパトロールは続けたいという颯希の想いを誠と佳澄は、「一人には決してならないように」と念を押して、パトロールを続けることを許可した。





 そして、今度のパトロールは家まで迎えに来てやると言う静也の言葉に甘えることにした。







 あれから、警察官が数日かけて聞き込みをしていると、いろいろな事が分かった。父親に愛人がいることや理恵が昔からいじめに遭っていること。そして、母親に関しては近所に人の話によると、昔はよく自慢話を聞かされていたと言う。最近は派手な格好をして夜に出かけているということが聞き込みで明らかになった。

 しかし、警察は外部の犯行ではないのではないかと疑っていた。理由は家を訪れた時の理恵の態度が引っ掛かっているということと、母親とあまり仲が良くないことを聞き込みの際に聞いたからだった。



「娘の理恵をマークしよう」



 母親の事件に関係している可能性があるという結論が出て、警察は理恵をマークすることにした。



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