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第一章 赤い炎は優しい雨に打たれる
第14話
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あれから五日後、三和子が今度は昼間に拓哉の家に訪れた。その日は日曜日ということがあり、拓哉は家でのんびりとくつろいでいる時だった。
拓哉は三和子を見るなり驚きを隠せなかった。顔はやつれていて目には涙を溜めている。ただ事じゃない思い、拓哉は三和子を家に招き入れた。
「何があったんですか?」
拓哉の言葉に三和子は身体をびくつかせる。そして、震える声で言葉を発した。
「私……私……とんでもないことを……」
そして、途切れ途切れに事の内容を話し始めた。
五日前に拓哉の家を出てから、三和子は誰もいない家に帰ることができずに夜の街を彷徨い歩いていた。そこへ、一人の男が声を掛けてきた。
三和子はその時、思考がうまく働かなかったのか、手を引かれるまま男に連れて行かれたのだという。そして、ホテルに連れ込まれた……。
拓哉はそこまで聞いて、その後に何が起こったのかが把握できた。寂しさゆえに誰かの温もりを求めた結果、そんな事態を引き起こしてしまったのだろう……。三和子の性格を知っているのもあり、強く責めることも出来ない。
「私……私……」
「もう、何も言わなくていい……」
拓哉にはその言葉が精いっぱいだった。
気持ちが落ち着くまで三和子を家にいさせて、真也から聞いていた三和子の実家に電話をした。そして、真也が帰ってくるまで三和子は実家に戻ることになり、夜には三和子の両親が迎えに来た。
そして、三週間が過ぎて真也が帰ってきた。
「しばらくの間、三和子さんは兄さんが帰ってきて落ち着いたようだった。でも、それは見かけだけで、三和子さんはあの時の過ちをずっと引きずっていたんだ……」
拓哉はそう言葉を綴ると遠い目をした。その瞳には悲しみと苦しみが混じっている。
「じゃあ……俺はその時に出来た子供なのか……?」
拓哉の話に静也が声を震わせながら言う。
「それは違う!」
拓哉が強く言葉を発する。そして、静也の頭を優しく叩きながら言葉を綴った。
「……静也は正真正銘、兄さんと三和子さんの子供だ。あの後、兄さんと三和子さんの間に子供ができた。二人とも嬉しそうだったよ……。特に兄さんはわが子の誕生をとても喜んでいた……。二人で愛情を沢山与えながら育てようと言って幸せな家庭そのものだったよ……。だからこそ、三和子さんは自分の過ちがどうしても許せなかったんだろう……。そして、あの日――――」
そう言って拓哉はあの出来事を話し始めた。
拓哉は出産祝いの品を持って、真也の家を訪れた。職場の人に聞いて、祝いとしてベビー服を買っていき、生まれた赤ん坊に会うのを楽しみにしていた。
家に着いて、呼び鈴を鳴らしたが応答がない。今日行くことは伝えてあるはずだから、出掛けることはしないはず……。不思議に思い、玄関のドアに手をやるとドアが開いていた。育児に疲れて寝ているのかなと思い、そっと部屋に入る。すると、奥から声が聞こえてきた。
「三和子、泣いてないで話してくれ……。一体どうしたというんだい?」
真也の声が聞こえる。そして、それと同時に三和子のすすり泣く声が聞こえてきた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「謝るだけじゃわからないよ……。怒らないから何があったのか話してごらん?」
真也が優しく問いかけるが、三和子は謝るだけで話さない。
「あの……お邪魔だったかな……?」
拓哉がおずおずと部屋に入ってくる。
「あぁ、拓哉。いらっしゃい。適当に座っていてよ。すぐお茶お入れるから……」
そう言って、真也はキッチンにお茶を入れに行った。
その間も三和子はひたすら涙を流しながら謝っている。そして、ふらついている状態で立ち上がり、まだ赤ん坊の静也を抱き上げると優しく抱き締めた。
「静也……こんなママでごめんね……」
そして、しばらく抱き締めた後、静也をベビーベッドに戻し、タオルをかけて優しく頭を撫でた。そこへ、お茶を入れた真也が戻ってきた。
真也が拓哉の前にお茶を置いた時だった……。
「……あの過ちは死んで償います……」
三和子はそう言いながら真也に抱き付くと、次の瞬間――――――
――――ドン!!
真也を突き飛ばし、裸足のまま家を飛び出した。
「三和子!!」
真也が慌てて後を追う。拓哉も少し遅れて後を追った。
「三和子!止まるんだ!!」
真也が大声で叫ぶが三和子は立ち止まらない。
その時だった。
――――――ビィィィィィ!!!
三和子の前に大きなトラックが迫っていた。
「危ない!!」
真也が三和子を助けようと道路に飛び出す。
――――――ガシャーン!!
拓哉は三和子を見るなり驚きを隠せなかった。顔はやつれていて目には涙を溜めている。ただ事じゃない思い、拓哉は三和子を家に招き入れた。
「何があったんですか?」
拓哉の言葉に三和子は身体をびくつかせる。そして、震える声で言葉を発した。
「私……私……とんでもないことを……」
そして、途切れ途切れに事の内容を話し始めた。
五日前に拓哉の家を出てから、三和子は誰もいない家に帰ることができずに夜の街を彷徨い歩いていた。そこへ、一人の男が声を掛けてきた。
三和子はその時、思考がうまく働かなかったのか、手を引かれるまま男に連れて行かれたのだという。そして、ホテルに連れ込まれた……。
拓哉はそこまで聞いて、その後に何が起こったのかが把握できた。寂しさゆえに誰かの温もりを求めた結果、そんな事態を引き起こしてしまったのだろう……。三和子の性格を知っているのもあり、強く責めることも出来ない。
「私……私……」
「もう、何も言わなくていい……」
拓哉にはその言葉が精いっぱいだった。
気持ちが落ち着くまで三和子を家にいさせて、真也から聞いていた三和子の実家に電話をした。そして、真也が帰ってくるまで三和子は実家に戻ることになり、夜には三和子の両親が迎えに来た。
そして、三週間が過ぎて真也が帰ってきた。
「しばらくの間、三和子さんは兄さんが帰ってきて落ち着いたようだった。でも、それは見かけだけで、三和子さんはあの時の過ちをずっと引きずっていたんだ……」
拓哉はそう言葉を綴ると遠い目をした。その瞳には悲しみと苦しみが混じっている。
「じゃあ……俺はその時に出来た子供なのか……?」
拓哉の話に静也が声を震わせながら言う。
「それは違う!」
拓哉が強く言葉を発する。そして、静也の頭を優しく叩きながら言葉を綴った。
「……静也は正真正銘、兄さんと三和子さんの子供だ。あの後、兄さんと三和子さんの間に子供ができた。二人とも嬉しそうだったよ……。特に兄さんはわが子の誕生をとても喜んでいた……。二人で愛情を沢山与えながら育てようと言って幸せな家庭そのものだったよ……。だからこそ、三和子さんは自分の過ちがどうしても許せなかったんだろう……。そして、あの日――――」
そう言って拓哉はあの出来事を話し始めた。
拓哉は出産祝いの品を持って、真也の家を訪れた。職場の人に聞いて、祝いとしてベビー服を買っていき、生まれた赤ん坊に会うのを楽しみにしていた。
家に着いて、呼び鈴を鳴らしたが応答がない。今日行くことは伝えてあるはずだから、出掛けることはしないはず……。不思議に思い、玄関のドアに手をやるとドアが開いていた。育児に疲れて寝ているのかなと思い、そっと部屋に入る。すると、奥から声が聞こえてきた。
「三和子、泣いてないで話してくれ……。一体どうしたというんだい?」
真也の声が聞こえる。そして、それと同時に三和子のすすり泣く声が聞こえてきた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
「謝るだけじゃわからないよ……。怒らないから何があったのか話してごらん?」
真也が優しく問いかけるが、三和子は謝るだけで話さない。
「あの……お邪魔だったかな……?」
拓哉がおずおずと部屋に入ってくる。
「あぁ、拓哉。いらっしゃい。適当に座っていてよ。すぐお茶お入れるから……」
そう言って、真也はキッチンにお茶を入れに行った。
その間も三和子はひたすら涙を流しながら謝っている。そして、ふらついている状態で立ち上がり、まだ赤ん坊の静也を抱き上げると優しく抱き締めた。
「静也……こんなママでごめんね……」
そして、しばらく抱き締めた後、静也をベビーベッドに戻し、タオルをかけて優しく頭を撫でた。そこへ、お茶を入れた真也が戻ってきた。
真也が拓哉の前にお茶を置いた時だった……。
「……あの過ちは死んで償います……」
三和子はそう言いながら真也に抱き付くと、次の瞬間――――――
――――ドン!!
真也を突き飛ばし、裸足のまま家を飛び出した。
「三和子!!」
真也が慌てて後を追う。拓哉も少し遅れて後を追った。
「三和子!止まるんだ!!」
真也が大声で叫ぶが三和子は立ち止まらない。
その時だった。
――――――ビィィィィィ!!!
三和子の前に大きなトラックが迫っていた。
「危ない!!」
真也が三和子を助けようと道路に飛び出す。
――――――ガシャーン!!
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