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最終章 愛されていた鳥
第14話
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(……あの荷物から推測できるのは会社を辞めてきたか、辞めさせられたかのどちらかだろう……。奴の表情の感じでは恐らく後者だろうな……)
男がコーヒーを啜りながらそう心で呟く。
男が賀川とすれ違った時、ちらりと横目で賀川の持っている紙袋の中身を確認した。その紙袋の中には長靴にホッカイロ、ティーシャツなどが入っていた。
それらは賀川が仕事で使うもので毎回持ち帰るようなものでもない。会社のロッカーに預けていたと思われるものだった。
それをあんな大きな紙袋に入れて持っているという事は何かがあって会社を辞めてきたという事が推測できる。
男は賀川の後を追うことも考えたが、その場は追うのをやめて近くの喫茶店に入り、先程の出来事を整理していた。
(電話をしてたようだが、相手は誰だ……?)
男はそう心で呟き、誰に電話を掛けていたのかを考える。
(奏の可能性も考えられるな……)
そう考えるが確信が無い。こればかりは調べることが出来ないので、しばらく賀川の様子を例のサイトで確認することにする。
「あ……そうだ……」
男が何かを思いつき、会計を済ませると、喫茶店を出て行く。
そして、家に着くと、パソコンを起動して、あるサイトにアクセスすると、そこに何かを書き込んだ。
「……まぁ、一つの方法としては悪くないな」
紅蓮が思いついたことをみんなに話すと、透がそう言葉を綴る。
「だが、犯人がそれに目星を付けているかが分からない。数日はあいつを見張るのはどうだ?」
槙がそう提案する。
「そうね……。よし!明日からその男の見張りを開始しましょう!」
冴子がそう声を発した。
「……あ、そうだ……。確か小説を書いていると言っていたよな……?」
賀川がそう言ってパソコンから奏から教えて貰ったサイトを開き、奏の小説を探す。しかし、タイトルや作家名を聞いていないので調べようがないことが分かり、落胆する。
「作家名を聞いておくべきだったな……」
ポツリとそう呟く。
そして、そのサイトに何か面白そうな作品がないかを探していくが、特にこれと言った作品が見つからない。作品の投稿数はかなりの量でどれを読んでいいのかが見当もつかない。
作品を読むのを断念して、「女神たちの集い」のサイトを開ける。そこに、仕事をクビになったことを書くが、書いている途中で情けなくなってきて、書いた文章を削除する。
「うぅ……うぅ……」
声を押し殺しながら大粒の涙を流す。
なんでこんな目に遭うのか……?
醜く生まれたというだけで自分は『悪』なのか……?
少しでもまともな顔立ちに生まれていたらまた人生が変わっていたのか……?
グルグルとそんな考えが渦巻く。
「助けてよ……女神……」
賀川は項垂れながらそう言葉を呟いた。
「……今日はこれまでにしましょう」
冴子の言葉に奏たちが帰る準備を始める。
「じゃあ、透、紅蓮、よろしくね♪」
「は~い♪」
「分かりました」
冴子の言葉に透と紅蓮が返事をする。
先程、万が一の事を考えて透と紅蓮が奏を駅まで見送ることになった。場合によってはまた賀川が待ち伏せしている可能性もあるという事で、奏を護衛する意味でもバスに乗るまでは透と紅蓮が見送ることになった。
「じゃ♪行きますか♪」
紅蓮が軽快な口調でそう言葉を綴る。
そして、署を出ると三人でバス停に向って歩きだす。
「透さん、紅蓮さん、ご迷惑かけてすみません……」
歩きながら奏が申し訳なさそうな表情で二人にそう言葉を掛ける。
「いやいや♪奏ちゃんの為なら火の中海の中竜巻の中、どこでもお供してお守りしますよ♪」
紅蓮がキラキラモードを発しながらドヤ顔でそう言葉を綴る。
「あ……ありがとうございます……」
その言葉に奏がどう言っていいか分からなくて、とりあえずお礼の言葉を述べる。
「……万年発情期男だな」
「なんだよそれ?!」
透がボソッと言った言葉に紅蓮の地獄耳は聞き逃さなかったのか、反論の言葉を発する。
「バスが来るまではまだ四十分くらいあるね♪どうする?お茶でもする?」
紅蓮が腕時計を見ながらそう言葉を綴る。
「いえ……、もしそれでバスを乗り過ごしてしまったら一時間待たなきゃいけないので、このままバスを待っていようと思います」
奏が「すみません」と頭を下げながらそう言葉を綴る。
「いいよいいよ♪じゃあ、このままバスが来るまで待っていよう♪」
紅蓮の言葉に奏がお礼を言って、バスが来るまでの間、三人でお喋りをしながら時間を過ごした。
「……誰だ?あいつら……?」
賀川が遠目で奏たちを見つけて、そう呟く。
奏と一緒にいる男たちと奏が楽しそうに話しているのを見て、憎悪が渦巻く。
「女神の友達か……?」
賀川がそう呟く。
(なんであんな奴らと女神が……)
どちらの男も背が高く見目が良いのが遠目でも分かる。二人ともイケメンの部類に入るだろう。二人とも身体は細身だがスーツの上からでも引き締まっているのが分かる。
それに比べて自分は身長もそんなに高くなく、身体は真ん丸で顔は醜い……。なんで、こんなに差があるんだと自分の見た目を呪う……。
(あんなキラキラした奴と女神が一緒に……)
二人の男を見てそのオーラで奏に声を掛けることが出来ない。
奏が一人になるのを待つが、二人の男はなかなか去って行かない。そうこうしている内にバスがやって来て奏がそのバスに乗り込む。二人の男たちは奏がバスに乗ると、手を振って見送っていた。
(ちくしょう……。あいつらが居なければ声を掛けれたのに……)
賀川は心でそう呟くとその場を去って行った。
「……なぁ、お前はどう思う?」
男がコーヒーを啜りながらそう心で呟く。
男が賀川とすれ違った時、ちらりと横目で賀川の持っている紙袋の中身を確認した。その紙袋の中には長靴にホッカイロ、ティーシャツなどが入っていた。
それらは賀川が仕事で使うもので毎回持ち帰るようなものでもない。会社のロッカーに預けていたと思われるものだった。
それをあんな大きな紙袋に入れて持っているという事は何かがあって会社を辞めてきたという事が推測できる。
男は賀川の後を追うことも考えたが、その場は追うのをやめて近くの喫茶店に入り、先程の出来事を整理していた。
(電話をしてたようだが、相手は誰だ……?)
男はそう心で呟き、誰に電話を掛けていたのかを考える。
(奏の可能性も考えられるな……)
そう考えるが確信が無い。こればかりは調べることが出来ないので、しばらく賀川の様子を例のサイトで確認することにする。
「あ……そうだ……」
男が何かを思いつき、会計を済ませると、喫茶店を出て行く。
そして、家に着くと、パソコンを起動して、あるサイトにアクセスすると、そこに何かを書き込んだ。
「……まぁ、一つの方法としては悪くないな」
紅蓮が思いついたことをみんなに話すと、透がそう言葉を綴る。
「だが、犯人がそれに目星を付けているかが分からない。数日はあいつを見張るのはどうだ?」
槙がそう提案する。
「そうね……。よし!明日からその男の見張りを開始しましょう!」
冴子がそう声を発した。
「……あ、そうだ……。確か小説を書いていると言っていたよな……?」
賀川がそう言ってパソコンから奏から教えて貰ったサイトを開き、奏の小説を探す。しかし、タイトルや作家名を聞いていないので調べようがないことが分かり、落胆する。
「作家名を聞いておくべきだったな……」
ポツリとそう呟く。
そして、そのサイトに何か面白そうな作品がないかを探していくが、特にこれと言った作品が見つからない。作品の投稿数はかなりの量でどれを読んでいいのかが見当もつかない。
作品を読むのを断念して、「女神たちの集い」のサイトを開ける。そこに、仕事をクビになったことを書くが、書いている途中で情けなくなってきて、書いた文章を削除する。
「うぅ……うぅ……」
声を押し殺しながら大粒の涙を流す。
なんでこんな目に遭うのか……?
醜く生まれたというだけで自分は『悪』なのか……?
少しでもまともな顔立ちに生まれていたらまた人生が変わっていたのか……?
グルグルとそんな考えが渦巻く。
「助けてよ……女神……」
賀川は項垂れながらそう言葉を呟いた。
「……今日はこれまでにしましょう」
冴子の言葉に奏たちが帰る準備を始める。
「じゃあ、透、紅蓮、よろしくね♪」
「は~い♪」
「分かりました」
冴子の言葉に透と紅蓮が返事をする。
先程、万が一の事を考えて透と紅蓮が奏を駅まで見送ることになった。場合によってはまた賀川が待ち伏せしている可能性もあるという事で、奏を護衛する意味でもバスに乗るまでは透と紅蓮が見送ることになった。
「じゃ♪行きますか♪」
紅蓮が軽快な口調でそう言葉を綴る。
そして、署を出ると三人でバス停に向って歩きだす。
「透さん、紅蓮さん、ご迷惑かけてすみません……」
歩きながら奏が申し訳なさそうな表情で二人にそう言葉を掛ける。
「いやいや♪奏ちゃんの為なら火の中海の中竜巻の中、どこでもお供してお守りしますよ♪」
紅蓮がキラキラモードを発しながらドヤ顔でそう言葉を綴る。
「あ……ありがとうございます……」
その言葉に奏がどう言っていいか分からなくて、とりあえずお礼の言葉を述べる。
「……万年発情期男だな」
「なんだよそれ?!」
透がボソッと言った言葉に紅蓮の地獄耳は聞き逃さなかったのか、反論の言葉を発する。
「バスが来るまではまだ四十分くらいあるね♪どうする?お茶でもする?」
紅蓮が腕時計を見ながらそう言葉を綴る。
「いえ……、もしそれでバスを乗り過ごしてしまったら一時間待たなきゃいけないので、このままバスを待っていようと思います」
奏が「すみません」と頭を下げながらそう言葉を綴る。
「いいよいいよ♪じゃあ、このままバスが来るまで待っていよう♪」
紅蓮の言葉に奏がお礼を言って、バスが来るまでの間、三人でお喋りをしながら時間を過ごした。
「……誰だ?あいつら……?」
賀川が遠目で奏たちを見つけて、そう呟く。
奏と一緒にいる男たちと奏が楽しそうに話しているのを見て、憎悪が渦巻く。
「女神の友達か……?」
賀川がそう呟く。
(なんであんな奴らと女神が……)
どちらの男も背が高く見目が良いのが遠目でも分かる。二人ともイケメンの部類に入るだろう。二人とも身体は細身だがスーツの上からでも引き締まっているのが分かる。
それに比べて自分は身長もそんなに高くなく、身体は真ん丸で顔は醜い……。なんで、こんなに差があるんだと自分の見た目を呪う……。
(あんなキラキラした奴と女神が一緒に……)
二人の男を見てそのオーラで奏に声を掛けることが出来ない。
奏が一人になるのを待つが、二人の男はなかなか去って行かない。そうこうしている内にバスがやって来て奏がそのバスに乗り込む。二人の男たちは奏がバスに乗ると、手を振って見送っていた。
(ちくしょう……。あいつらが居なければ声を掛けれたのに……)
賀川は心でそう呟くとその場を去って行った。
「……なぁ、お前はどう思う?」
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