ファクト ~真実~

華ノ月

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最終章 愛されていた鳥

第12話

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 男は帰ってくるなりパソコンを起動して例のサイトを開ける。そして、「女神とカフェにいる」といった内容の投稿を見つけて、あの男がこのサイトで「女神の従者」と言うユーザーであることを確信する。

(今の段階では奏に被害がある感じではないから下手に手は出せない……。さて、どうするかな……?)

 男が心でそう呟く。

(奏に近付かないように忠告するか……事が起こる前に始末するか……)

 男がそう呟きながら「女神の従者」と名乗るユーザーが奏に近付かないようにするための方法を考える。

(とりあえず、しばらくは張り込んで様子を伺おう……)

 男はそう呟くと、煙草を取り出した。



「はぁ~……。俺の女神……」

 そう呟いて賀川がハンカチを握りしめたまま、布団の中に入る。


 ――――トゥルル……トゥルル……。


 そこへ、賀川のスマートフォンが鳴り響く。着信相手は辻木からだった。

『賀川か?体調はどうだ?』

 辻木が電話越しにそう尋ねてくる。

「あ……あぁ、大丈夫だよ」

『……そうか。明日は来れそうか?』

「うん、行くよ」

『……分かった』

 そう言って電話が切れる。

(辻木は良い奴だよな……。まぁ、ある意味俺と同じであまり顔は良くないが、こうやって俺の心配はしてくれる……)

 賀川が心でそう呟く。

 そして、そのまま眠りについた。


 次の日に、あんなことになるとは予想できずに……。



「おはようございます!」

 奏が元気よく挨拶をしながら特殊捜査室の扉を開ける。

「おはよう♪奏ちゃん♪」

 冴子が真っ先に挨拶する。

「おはようございます」

 そこへ透たちも出勤してくる。

「あっ!おはよう、奏ちゃん!昨日は大丈夫だった?」

 紅蓮がそう声を掛ける。

「何がですか??」

 紅蓮の言葉がよく分からなくて奏が頭にはてなマークを浮かべる。

「昨日、紺色の作業着を着ていた男と会っていただろ?」

「え?はい、そうですけど……」

 槙の言葉に奏の頭の上に更にはてなマークが飛び交う。

「あの?何かあったんですか??」

 奏がそう声を発する。

「実はな……」

 透がそう言って、例のサイトに新たに書き込みがあった事を話す。それを槙がパソコンから見せて奏に確認してもらう。

「……じゃあ、賀川さんは……」

 奏がそのサイトの書き込みを確認しながら、愕然とした表情でそう声を出す。

「あぁ。場合によっては危険かもしれない……」

 槙がそう言葉を綴る。

「奏ちゃん、昨日私に話したことをもう一度話してもらっていいかしら?」

 冴子がそう言ったので、奏が賀川と出会った経緯を話す。


「……成程な。それでお詫びのハンカチを買うからという事でそうなったというわけか……」

 紅蓮がそう言葉を綴る。

「しかし、妙だな……。ぶつかったくらいで血が出るほどの怪我をするとは思えない。それに怪我をした場所は腕で服の中で血が滲んでいたんだよな?何かで擦ったわけでもないのに血を流す程の怪我をするとは考えられないな……」

「……言われてみればそうですね」

 透の言葉に奏がそう言葉を発する。

「ワザとの可能性がある……ってことだな?」

 紅蓮が神妙な顔でそう口にする。

「あぁ。奏と接触するためにそういう行動に出た可能性はあるな」

「そんな……」

 透の言葉に奏が蒼白になりながら言う。

「とりあえずはその男と関りを持たないことだな」

「はい……」

 槙の言葉に奏がそう返事をする。

 まさか、賀川が何か目的があって自分に近付くためにあんな芝居をしたのだとしたら、奏はとんでもない人に自分の電話番号を教えたことになる。それに昨日の帰り際に、賀川は「また会いましょう」と言っていた。最初はその言葉に特に疑問を感じなかったので、奏も「いいよ」と言うような返事をしてしまった。だが、何か企みがあってそんな事を賀川が言っていたのだとしたら、今後、二人で会うのは危険だ。

(とりあえず、お誘いがあっても断ろう……)

 奏が心でそう呟く。

 その後、透たちは奏に孝と絵美には犯行が無理なことが分かったことを話し、奏はその話を聞いて胸を撫で下ろした。



「賀川!呼ばれているぜ?!」


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