ファクト ~真実~

華ノ月

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最終章 愛されていた鳥

第11話

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 槙がパソコンを見ながらそう声を上げる。

「どうした?」

 透が槙の様子にただ事じゃないと感じ声を掛ける。

「……二人目が現れた」

 槙がそう言って透たちにある書き込みを見せた。



「……すみません!すっかりごちそうになってしまって……」

 奏がペコペコと頭を下げながらそう言葉を綴る。

「い……いえ!僕も楽しかったので大丈夫です!!」

 賀川が手を振りながらそう声を発する。

「今日はありがとうございました。じゃあ、これで……」

 時間が思ったより遅くなったので、奏が慌ててそう言葉を綴ると急ぎ足でその場を後にしようとする。

「あ……あの!!」

 行こうとする奏を賀川が呼び止める。

「よ……良かったらまた会ってくれませんか?」

 賀川がそう声を発する。

「そうですね。時間が合えばまたよろしくお願いします」

 奏が笑顔でそう言葉を綴る。

「じゃあ、今日はこれで!」

 奏はそう言うと、急ぎ足でその場を去って行った。

「……やっぱり女神は最高だ……」

 奏が去って行くのを見届けながら賀川が笑みを浮かべて小さく呟く。

 そして、自分も帰るために電車の方に向って歩きだした。


 その後ろを男がそっと尾行していることに気付かずに……。

 更に奏と賀川を見ていた人物が他にもいた事にも……。 



『女神と今カフェに来ている!ここで一気に距離を詰めるぞ!!』

 最新の書き込みにはそう書かれていた。

 槙が見せたのは例のサイト「女神たちの集い」だった。そこに書き込まれているコメントを見ると、他にも奏の携帯番号を入手したことが書かれている。

「……どうやって奏ちゃんの携帯番号を入手したんだ?」

 紅蓮がその書き込みを見て疑問の声を出す。

「それは本人に聞けばわかるんじゃないか?」

 透がそう言葉を発する。

「ただ、この最新の書き込みは今日の夕方辺りだから……あっ!」

 槙がそこまで言って声を上げる。

「どうしたんだ?」

 紅蓮がそう尋ねる。

「今日の夕方に絵美って人のアリバイが分かってから署に戻っただろ?その途中で奏を見かけたんだよ!」

 槙が早口でそう言葉を捲し立てる。

「車の中から見たってことか?」

「そうだ。確か男が傍にいた。太った男で紺色の作業着のようなものを着ていたような気がする」

 透の言葉に槙がそう言葉を綴る。

「……じゃあ、その男がこの書き込みをした可能性があるってことか?」

 紅蓮が唖然としながらそう言葉を綴る。

「冴子さん、奏に電話できますか?」

「掛けてみるわ!」

 透の言葉に冴子が奏のスマートフォンに電話をする。しかし、奏は電話に出ない。

「もしかしたら、バスに乗っていて出れない可能性があるわね……。とりあえず、私は連絡を待つわ。あなたたちはもう上がりなさい」

 冴子が時計を見てそう言葉を綴る。その言葉に紅蓮は渋ったが、今の段階では何もできないと分かり、大人しく帰る準備をする。

 そして、透たちは警察署を出る。

「なぁ、その男ってどんな顔だったんだ?」

 紅蓮が槙に奏が一緒にいた男の事を尋ねる。

「あ?あぁ、なんか頭悪そうな男だったな。見た目でいけば不細工な男になるんじゃないか?」

 槙が興味なさそうに淡々と毒を吐く。

「槙、それはあまりに酷い言い草じゃないか?」
「事実だ」
「もっと他に言い方があるだろ!」
「女が嫌いそうな顔とかか?」
「だ~か~ら~っ!もっと言葉を選べよ!」
「別にその男に気を使うつもりは無い」
「あのなぁ~……」

 しばらく紅蓮と槙の言い合いが続く。

「おい、置いていくぞ?」

 傍にいた透が紅蓮にそう声を掛ける。

「わ~っ!!行くよ!!透く~ん!アタシを置いてかないで~!!」

 紅蓮がオネェのような口調で透の後を追いかける。槙は駐輪場に行き、自転車に乗ると、帰っていった。



「ここが奴のアパートか……」

 賀川があるアパートに入っていったのを見て、男がそう呟く。

(外から見た感じでも一人暮らし用のアパートだな……。てことは、他に一緒に暮らしている人はいないってことか……)

 男がそのアパートを見上げてそう心で呟く。

 そのアパートは外に洗濯機を取り付ける場所がある事からかなり古いアパートだという事が分かる。

(今はまだ奴だという確証がない……。しばらく様子見するか……)

 男はそう言うと、その場を去って行った。



「……あれ?着信??」

 家に着いた奏がスマートフォンを取り出し、何か来てないかを確認すると、冴子から電話がかかっていたことが分かる。

「なんだろう??」

 奏がそう言って折り返し冴子に電話を掛けた。


 ――――トゥルル……トゥルル……カチャ……。


『もしもし!奏ちゃん?!今どこ?!大丈夫?!』

 冴子はすぐに電話に出ると堰を切ったように言葉を次から次へと投げかける。

「い……家ですけど……??」

 奏がその様子に頭にはてなマークを浮かべる。

『帰る途中で何かなかった?』

「え?あの……、約束があったので人と会っていましたけど??」

『約束?』

 冴子がそう言葉を繰り返したので、奏が事情を説明する。

『……成程ね。それで、何かあったわけじゃないのね?』

「はい」

 冴子が何を言いたいのかがよく分からないので奏が頭の上ではてなマークを浮かべる。

『明日は来れるかしら?』

「行きますけど??」

『じゃあ、詳しいことは明日話すわ』

 電話越しに冴子がそう言って通話が終わる。

「どうしたんだろ??」

 奏がやはりよく分からなくてはてなマークを浮かべたままスマートフォンをしばらく眺める。

「あっ!お風呂行かなきゃ!!」

 奏はそう声を出すと、慌ててお風呂に行く準備を始めた。



「奏ちゃん……フフッ……僕の女神……僕の彼女……」

 部屋で賀川が今日の事を思い浮かべながらそう言葉を呟く。

 そして、奏のハンカチを取り出し、顔を覆うように被せる。

「あぁ~……。良い匂いがするなぁ~……。早く……早く俺のものにしたいなぁ~……」

 不気味な笑みを浮かべながらハンカチからの香りを嗅ぎ続ける。

 その光景は傍から見たら不気味で異常な様だった。



「間違いないな……」


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