ファクト ~真実~

華ノ月

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第六章 飛べない鳥は深い穴に落ちる

第16話

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 奏がいつだったか見た工事のことを思い出す。

(……それはありえないか)

 その工事現場で見たある事を思うが違うだろうと感じ、他の方法を考える。しかし、考えても何も思いつかないので、今日は就寝に着くことにした。



「みんな!一旦リセットよ!」

 次の日、奏たちが出勤すると冴子がそう言って書類の束を机に置く。

「ちょっと頭を冷やしましょう♪」

 という事になり、奏たちは事件からいったん離れて書類の整理に取り掛かった。

「ちくしょ~!!俺の一番嫌いな書類整理~!!」

 紅蓮が口から火を吹きながらそう吠える。

「とりあえずやれ」

 槙がそう一喝する。

「まぁ、頭を整理するのにはちょうどいいだろ」

 透がそう言いながら書類を一つ一つ片付けていく。

「奏ちゃんだって書類整理嫌いだよね?!」

 紅蓮が奏に同意を求めるようにそう言葉を綴る。

「あ……あの……」

 その言葉に奏がどう返事をしていいか戸惑う。

「はいは~い♪文句言ってないでとっとと片付けるわよ~♪」

 冴子がそう口を挟む。

「ちっきしょぉぉぉぉぉ!!!」

 紅蓮が雄叫びを上げる。

 そんなやり取りをしながら奏たちは書類を整理していく。


 ――――トゥルル……トゥルル……。


 そこへ、奏のスマートフォンが着信を告げた。



「また、水無月さんとお話がしたい?」

 瑠香の言葉に静木がそう聞き返す。

「はい……。駄目でしょうか……?」

 瑠香が恐縮しながらそう言葉を綴る。

「分かったわ。聞いてみるわね」

 静木がそう言って電話を掛ける。そして、奏に話すと奏が了承してくれたという事になったのでその事を瑠香に伝える。

「……じゃあ、着いたら呼びに行くわね」

 静木の言葉に瑠香は「はい」と言って部屋に戻っていく。

 部屋に戻り、スマートフォンを開けて奏の物語が書かれているサイトを開く。近くでは裕二が楽しそうに夢中になりながら何かを書いている。

(あんな楽しそうな裕二を見るの、久しぶりだな……)

 瑠香が微笑みながら心の中でそう言葉を綴る。

 そして、奏の物語を読み始めた。

 しばらく読み耽っていると、そこへ部屋をノックする音が響く。


 ――――コンコンコン……。


「瑠香ちゃん、来たわよ」

 静木がそう瑠香に告げる。そして、面会室に向かった。

「裕二君、最近とても楽しそうね」

 廊下を歩きながら静木がそう話しかける。

「はい。症状もだいぶ落ち着いてきて、笑顔が増えてきて良かったって思っています」

 瑠香が笑顔でそう言葉を綴る。

 そんな話をしながら面会室に着くと、扉を開ける。

「こんにちは、瑠香ちゃん」

 椅子に腰かけていた奏が席を立ち、入ってきた瑠香にそう微笑んだ。



「ぜんっぜん、わっかんねぇ……」

 一方、捜査室では紅蓮が悲痛の声を上げていた。

 写真を見てどうやったら深く刺せるかを考えるがやはり答えが出ない。

「あ~あ……。俺が奏ちゃんに付いて行きたかったなぁ~……」

 紅蓮が両手で顔を覆いながらさめざめと泣く。

「鬱陶しいからそのオネェの仕草はやめろ」

 槙が淡々とした口調でそう毒を吐く。

「酷いわ!あなたそれでも相棒?!」

 紅蓮がオネェ言葉で口元をハンカチで抑えながらそう言葉を吐く。

「仕方ないだろ。奏の相棒は透だ。ここは透が行くのが筋だろう」

 槙がどこか馬鹿にしたような目つきでそう言葉を綴る。

「いいよなぁ~……透は……。奏ちゃんの相棒ってだけで奏ちゃんと二人っきりになれるんだもんなぁ~……」

 紅蓮が子供のような言葉を綴りながら「ずるい~。ずるい~」と呟く。

「まぁ、馬鹿はほっといて別の視点で何かヒントを探ってみましょう」

 冴子がそう口を開き、写真を調べる。

「無視するなぁ~!!!」

 紅蓮が無視をされたことに腹を立てて地団太を踏む。

「……足で踏みつけたとか?」

 槙が紅蓮の行動を見てポツリと声を出す。

「あ?」

 槙の言葉に紅蓮が間の抜けた声を出す。

「でも、誰がそんなことをしたのよ?」

 冴子がそう疑問を口にする。

「確か、裕二が足の裏に痣を作っていたって話だよな?」

「でも、身体の弱い裕二君ではそこまで踏む力はないんじゃないかしら?それに、それって刺されていないと難しいんじゃない?」

 槙の言葉に冴子がそう言葉を綴る。

「別の人間が刺して、それを更に踏みつけたとか……」

「それはある意味残虐な殺し方だな」

 槙の言葉に紅蓮がそう言葉を綴る。

「とりあえず、真面目に考えなさい」

 冴子がそう口を挟む。

「まぁ、もう少し書類整理をしましょう。今の状態では行き詰まりよ?」

 冴子の言葉に紅蓮と槙が返事をして再度書類整理に取り掛かった。



「……で、その話の途中の主人公とのやりとりが良かったです!」

 瑠香が楽しそうに奏の書いた物語の感想を綴る。

「後、その後の展開が目を離せなくて……」

 瑠香が夢中になって話している時だった。


「ここにいた!!」


 急に面会室の扉が開き、裕二が瑠香を見つけて満面の笑顔を見せる。

「お姉ちゃん!書けたよ!!」

 裕二がそう言って瑠香に何枚もの画用紙を渡そうとする。

「ごめんね、裕二。今面会中だから後で読むね」

 瑠香が申し訳なさそうにそう言葉を綴る。

「ダメ!今なの!!」

 裕二がそう言って駄々をこねる。

「私は構いませんよ?」

 奏が二人の様子を見てそう言葉を綴る。

「すみません……」

 瑠香がそう言って、裕二から何枚もの画用紙を受け取り、読み始める。

 読み進めている時だった。

 瑠香の表情が次第に強張っていき、顔がどんどん青ざめていく。微かだが体も震えているように見える。

「どう?!お姉ちゃん?!」

 瑠香が震えてることに気付かない裕二が興奮気味にそう言葉を綴る。

「よ……良かったよ……。凄いいい話だね……」

 瑠香が青ざめながら笑顔を作り、そう言葉を綴る。

「ホント?!やった~!!」

 瑠香の言葉が嬉しかったのか裕二は飛び跳ねながら喜ぶ。

「裕二君、良かったら私も読んでみていいかな?」

 奏がそう言葉を発する。

「うん!」
「え?」

 裕二が元気よく返事をする横で、瑠香が戸惑った声を上げる。

 裕二が奏に画用紙を渡す。

 奏がその物語を読み始める。


「……素敵な話だね!こんな話が書けるなんて凄いよ!裕二君!」

 奏が物語を読み終わって裕二に笑顔でそう言葉を掛ける。

「ホント?!僕、物語を書く人になれるかな?!」

 奏の言葉に裕二が嬉しそうにそう言葉を綴る。

「そうだね!きっとなれるよ!」

 奏が笑顔でそう言葉を綴る。

 奏と裕二のやり取りを瑠香が不安そうに見ている。


 どうしたらいいの……?

 どうしたら……。


 瑠香の中で感情がグルグルと蠢く……。

 目の前が真っ暗になりそうな感覚を必死で抑え、乱れそうな呼吸を整える。

 そして、面会時間終了となり、奏が施設を後にして透の待つ車に戻ってくる。

「お疲れ、奏」

 車に戻ってきた奏に透がそう声を掛ける。

「透さん……」

「何かあったのか?」

 奏がどことなく顔が青ざめているように見えたので透がそう声を掛ける。


「この事件って……真実を明らかにしなくちゃいけないのですか……?」


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