ファクト ~真実~

華ノ月

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第六章 飛べない鳥は深い穴に落ちる

第5話

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「只今戻りました~……」

 特殊捜査室に透たちが帰ってきて、紅蓮がそう声を出す。

「おかえり!帰ってきて早々で悪いんだけど、これを見て頂戴!」

 冴子がそう言って机に並べられている写真に指を差した。

「奏ちゃん!さっきの話をもう一度してくれる?」

「はい!」 

 冴子の言葉に奏が力強く返事をする。

「これを見てください」

 奏がそう言って一つの写真を指さす。

「これは元樹さんが刺された状態の写真です。そして、こちらは文代さんが殴打されて倒れた時の写真……。そして、これが遺体をどけた後の写真です」

 奏が写真を一つ一つ指差しながらそう言葉を綴る。

「……これの一体何がおかしいんだ?」

 槙がそう言葉を発する。

「よく見ると、不自然なんです。文代さんが倒れた所には遺体の下にも物が散乱していますよね?ですが、元樹さんの遺体の下や、その周りは物が無いのですよ……」

「……つまりどういうことだ?」

 奏の言葉に透がそう尋ねる。

「仮説ですが、元樹さんを殺してから部屋を荒らしたのではないのでしょうか?」

「……要は元樹を殺したのを強盗の仕業に見せかけるために部屋を荒らした可能性がある……ということだな?」

「はい……」

 透の言葉に奏がそう返事をする。

「……となると、文代の方は巻き沿いを食らった可能性があるという事か?」

「……かもしれないです」

 槙の言葉に奏がそう言葉を綴る。

「そうなると、元樹に恨みを持っている者の仕業……ということになるな……」

 槙がそう言葉を綴る。

「そういえばさ、元樹の方の会社に聞き込みに行った時に向井って人が言ってたよな?セクハラまがいの事をされたって……」

 紅蓮がそう言って、先程聞き込みで聞いた沙苗の話をする。その後で行った文代のパート先では特に不審な点は無かったという話もした。

「……つまり、元樹に他にそういうことをされた人がいるかもしれないというわけね」

 紅蓮の話を聞いて冴子がそう答える。

「まぁ、他にも別の理由で恨みを買っている可能性もあるがな」

 槙がそう言葉を綴る。

「元樹の事を調べた方が良さそうね……」

 こうして、奏たちは元樹が誰かから恨みを買っていないかを調べることになった。



 ――――バッッッ!!!

「……はぁ……はぁ……はぁ……」

 怖い夢を見たのかベッドから飛び起きる。

(夢……か……)

 瑠香はそう心で呟くと、再度眠ろうとする。だが、また怖い夢を見たらどうしようと思い、寝るという事に恐怖心が出てきて寝る気分になれない。

「はぁ……」

 ベッドから起き上がり、少し喉が渇いたのもあったので、水を飲みに行くために食堂に行く。

 食堂について、コップに水を汲んで飲む。

「ふぅ……」

 少し気持ちが落ち着いてきて、再度部屋に戻ろうと食堂を出ようとした時だった。

「あれ?瑠香ちゃん?」

 食堂に施設の職員である古賀(こが)がやって来て瑠香に声を掛ける。古賀は少し年配の男性で、今日は夜勤を担っているので施設の見回りをしていた。

「喉が渇いたの?」

「あ……はい……」

 古賀の言葉に瑠香が返事をする。

「部屋まで戻れる?夜中だし、部屋まで送って行こうか?」

 古賀が優しく微笑みながらそう声を掛ける。

「あ……大丈夫です……」

 瑠香がそう答える。

「念のため送っていくよ。行こうか」

 そう言って古賀が瑠香の肩をポンっと軽く叩く。

 その時だった。


「やぁぁっっっ――――!!!」


 瑠香がその手を振りほどき叫ぶと、蹲ってガクガクと震えている。

「瑠香ちゃん?!」

 何かがあると感じて古賀が静木に緊急の電話をする。

「静木さん!夜分にすみません!!瑠香ちゃんが!!」

 電話の向こうで静木が「すぐに行く」という事を言って電話が切れる。瑠香はまだ震えている。瑠香の様子から古賀が自分は下手に声を掛けない方が良いと判断して、静木の到着を待つ。

 しばらくして、静木が到着して食堂にやってくる。

「一体何があったの?!」

 静木が古賀に状況を聞く。古賀が先程の話をするが、何もなければ肩に手を軽く叩いただけではあんな反応にはならないだろうから、何か別の理由があると思い、静木が瑠香に声を掛ける。

「大丈夫?」

 静木がそう言って瑠香を優しく抱き締める。

 次第に瑠香の震えが治まっていき、静木は瑠香と共に部屋に戻っていった。



「……さて、どうやって調べようかしらね」

 冴子がみんな集まったところでそう声を発する。

 次の日、奏たちが特殊捜査室に出勤すると冴子がそう口を開いた。その場には本山と杉原もいる。

「元樹の過去を調べるのも一つかもしれないな。後は勤めていた会社で他に被害に遭っている人がいないかどうか……と言ったところだろう」

 本山がそう言葉を綴る。

「そうね……。私たちはどちらを調べればいいかしら?」

「そうだな……。お前たちには元樹の職場で他にもそういう話がないかを聞いてみてくれ」

「分かったわ」

 本山の言葉に冴子がそう答える。

 その時だった。


 ――――トゥルル……トゥルル……。


 奏のスマートフォンが鳴り響く。

「……冴子さん、施設の静木さんからです」

「分かったわ。出ていいわよ」

 奏がそう言って電話に出る。

「はい、水無月です。……え?瑠香ちゃんが……?」


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