ファクト ~真実~

華ノ月

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第六章 飛べない鳥は深い穴に落ちる

第3話

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「……こんにちは、瑠香ちゃん」

 奏が施設の中にある面会室で微笑みながらそう声を掛ける。

 杉原の提案は、子供たちに話を聞くなら奏を連れていった方がいいのではないか、という事だった。本山はその言葉に最初は渋ったが、その方が確かに事はすんなり運ぶかもしれないと思い、奏を同行することになった。

 そして、施設に着いて瑠香に面会を申し込んだのだが、瑠香の方から奏だけならいいというような返事が返ってきたらしく、面会室で瑠香と奏、そして、何かあった時のために静木が同席して話を聞くことになり、今に至る。

「……体調はどうですか?夜は眠れてる?」

 奏が瑠香に優しく話しかける。

「とりあえず……」

 その言葉に瑠香が弱々しい声でそう答える。

「あの……」

 瑠香が奏をじっと見ながら声を発する。

「何ですか?」

 奏が笑顔でそう尋ねる。

「水無月さんは警察官なんですよね……?」

「そうですよ?どうしてですか?」

 瑠香の言葉に奏がそう問う。

「その……、あまり警察官って感じがしないなと思って……」

 瑠香の言葉に奏が呆気にとられる。

「警察官ってなんだか怖いというか……目つきが鋭い人ばかりだと思っていたので……なんだか水無月さんは自分が思っていたイメージと違います……」

 瑠香がどこか戸惑いながらそう言葉を綴る。

「そうかもしれませんね。確かに捜査していて本当に警察官ですか?みたいなことはよく聞かれますね。私自身もまさか自分が警察官になるとは思いませんでしたから……」

 奏が「不思議ですよね」とか言いながらそう言葉を綴る。

 しばらくは、瑠香がいろいろと話を振ってきたので奏はそれに答えていく。「こんなお姉さん、欲しかったです」とか言いながら、しばらく穏やかな時間を過ごした。



「……何か情報が得られるといいんだが……」

 車の中で待機している本山がそう言葉を発する。

「まぁ、とりあえず戻ってくるのを待ちましょう。それにしても、水無月さんを連れてきて正解でしたね!我々だけでは面会してくれなかったかもしれませんよ?」

「まぁ……そうかもな……」

 杉原の言葉に本山がそう言葉を呟く。

「本山さんはちょっと顔立ちが怖いところがありますからね」

「……お前、だいぶ言うようになってきたな……」

 杉原の言葉に本山がそう言葉を綴る。

「本山さんとペアを組んでもう長いですからね!」

 杉原が笑顔でそう言葉を綴る。

「……お前、署長から水無月の事は聞いたか?」

 本山が突然そう言葉を発する。

「何のことですか?」

 その言葉に杉原が頭にはてなマークを浮かべる。

「いや、なんでもない……」

 本山がそう言葉を締め括る。

(小宮山はあの話を聞いてどう思ったんだろうな……)

 本山が心でそう呟いた。



「……ところで、事件の日の事なのですが……」

 瑠香がいろいろと奏に聞いてきて、その事に奏は一つ一つ答えた。そして、間が開いたタイミングを見計らって奏がそう言葉を発する。

「……っ!!」

 瑠香が急に声を詰まらす。

「良かったら、事件の日の事を話して頂いても構わないですか……?」

 奏の言葉に瑠香の身体がカタカタと震えだす。

「そ……その……」 

 瑠香が震える声でそう口を開くが恐怖からかそれ以上何も言葉が紡げない雰囲気だ。身体を震わせて、息が乱れているようにも見える。

 次の瞬間――――。


 ――――ガターンっ!!!


 瑠香の身体が椅子から崩れ落ちた。

「瑠香ちゃん?!」

 奏が驚いて声を上げる。

「大丈夫ですか?!」

 息が乱れて過呼吸に陥っている瑠香に声を掛ける。

「誰か!!誰か手を貸して!!」

 静木が廊下に出て施設にいる他の職員を呼ぶ。

「とりあえず、部屋に連れていきましょう!」

 奏がそう言って静木と駆け付けた職員の三人で瑠香を部屋に運んだ。

 部屋のベッドに仰向けに寝かせて、職員が対応する。奏と静木は部屋から出て廊下で瑠香が落ち着くのを待つ。

「……やはり、事件の事を聞くのは難しいのではないでしょうか?」

 静木が奏にそう尋ねる。

「そうかもしれませんね……。今日のところはこれで退散します。お大事にしてくださいと瑠香さんにお伝えしておいてください」

「分かりました……」

 奏はそう言うと、施設を出て本山達が乗っている車に戻った。



「……話は聞けなかった……か……」

 本山が奏からの報告を受けてそう呟く。

 車に戻ってきた奏は本山に先程の事を報告した。そして、杉原の運転する車で署に戻ることになった。

「すみません……」

 奏が申し訳ない表情で謝る。

「仕方ないですよ。水無月さんのせいじゃありません。まだ子供ですからね……。きっとまだご両親が亡くなったという事を信じたくないのかもしれませんよ?」

 杉原がそう言って落ち込んでいる奏を励ました。



「……いや~、特に何もないですよ?だから、急にこんな事になって驚いているくらいなんです……」

 透が元樹は会社でどうだったかを聞くが、元樹の上司に当たる後藤ごとうはそう答える。

 奏が本山と杉原に呼ばれて施設に行くことになったので、透たちは自分たちも他で何か出来ることをしようという事になり、紅蓮と槙、そして透の三人で元樹が勤めていた会社に話を聞きに来た。

「ちなみに、勤務態度はどうでしたか?」

「そうですねぇ~……。まぁ、仕事はどちらかと言えばきちんとやる人でしたよ?彼の発言で会社に利益をもたらしたこともあります。松井さんは会社にとっていい人材でしたよ……。時折、突拍子のない事を言うのですが、その発言が思わぬヒントになったりしていましたからね」

 後藤はそう言って「惜しい人を無くしたなぁ~」と言いながら残念そうな顔をする。

「他に何か些細な事でもいいのでありませんか?誰かから恨みを買っていたとか……」

 紅蓮が後藤にそう問いかける。

「うーん……。特に思い当たらないですね……。すみません、力になれなくて……」

 後藤がそう言って申し訳ない顔をする。

「いえいえ、お話ありがとうございます。もし何か思いだしたらまたご連絡ください」

 紅蓮がそう言って電話番号が書かれた紙を後藤に渡す。後藤は「分かりました」と言ってその紙を受け取り、社内に戻っていく。

「……特に情報なし……か……」

 会社を出て、紅蓮がため息を吐きながらそう呟く。

「次は母親が勤めていたスーパーに行ってみるか?」

 透がそう言葉を発する。

「そうだな。何か情報が掴めるかもしれない」

 槙も同意して、そのスーパーに行くために車の扉を開けて乗ろうとする。

 その時だった。


「あの!すみません!!」

 一人の女性が透たちに声を掛けた。

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