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第四章 黒い鴉に尽くしていた白い鳥
第14話&エピローグ
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「君たちはここにいろ!!」
紅蓮が絵美たちにそう声を掛けて、槙と共に基頼のところに駆け寄る。
「どうかしましたか?!」
紅蓮が基頼に声を掛ける。
「た……助けてくれ!元カノが夏江ちゃんをバットで殴って殺したんだ!!」
基頼が早口でそう言葉を綴る。
「我々は警察のものです!案内してください!!」
紅蓮と槙がそう言って警察手帳を見せる。
「こっちです!!」
紅蓮と槙が手帳を見せたことから警察の人だと信じ、基頼が二人を案内する。
「こいつです!この女です!!」
部屋にいる奏を指さして基頼がそう言葉を発する。
「今すぐ捕まえてください!!」
基頼が悲痛な表情で紅蓮にそう言葉を投げかける。
奏の傍には夏江の遺体が転がっていた。
「バットで夏江ちゃんの頭を思い切り叩いたんです!「こんな女のどこがいいんだ!」って言って!!酷くないですか?!」
基頼が早口でそう言葉を吐く。
奏がその様子を見て静かに口を開く。
「都合が悪くなるといつも私のせいにしてあなたは逃げていましたが、まさか、殺人の罪を着せようとするとは思いませんでしたよ……」
強い瞳を湛えながら冷静な口調で奏がそう言葉を綴る。
「何言ってるんだよ!バット持って息切らしているだろ!早くこいつを捕まえてください!」
「そうですね……」
――――ガチャンっ!!
「なっ?!」
紅蓮がそう言って手錠を基頼に掛ける。
「なんで俺に手錠がかかるんだよ?!殺したのはあいつですよ?!」
基頼が叫びながら言葉を吐く。
「……やはり、殺されていたんだな……」
槙が夏江の遺体を見てそう言葉を発する。
「お疲れ、奏ちゃん。奏ちゃんの推測は当たってたね」
「……は?あんたら何言って……」
紅蓮たちの言葉がよく分からなくて基頼の顔が引きつる。
「……まさか、こうくるとはな」
そこへ、隣の部屋で待機していた透が部屋にやってくる。
「よう!透!ばっちりだったか?」
紅蓮がやってきた透を見てそう声を掛ける。
「あぁ。奏に素振りをさせていたことも聞き取れていたよ」
透がその時の録音をスマートフォンを使って流す。
「な……な……」
基頼の顔がどんどん青ざめる。
「今までの状況証拠であんたがこの仏さんに虐待まがいの事をしていたのも確認済みだ。それに、遺体を調べれば死亡推定時間や凶器に使われたと思われるそのバットも証拠になるだろう」
「ははっ……。な……なんの話だよ……。虐待なんて俺は……」
「部屋から何度も泣き声が聞こえているのも確認しているし、君が暴言を吐いていたのも確認済みだ。何なら聞いてみる?」
基頼の言葉に紅蓮がそう言って、槙に目配りをする。槙がそれに気付いて、この前の時に録音しておいたものを更に声を鮮明にしてあったのでそれをスマートフォンを使って流す。
そこには夏江の鳴き声と叩くような音。そして、基頼が暴言を吐いている声がしっかりと録音されていた。
「な……なんでこんなものがあるんだよ?!おかしいだろ!誰かがこの部屋に盗聴器でも仕掛けたのか?!それこそ立派な犯罪じゃねぇか!!」
基頼が叫ぶように言葉を綴る。
「いや、盗聴器じゃないよ。今野さん……お入りください……」
透がそう言って今野が部屋に入ってくる。
「あんた……、確か隣の……」
今野を見て基頼がそう口を開く。
「その……、実はいつだったかちょっとした棚を作るのにドリルで壁に穴をあけようとしてドリルを落としたんです……。ただその時に落としたドリルを拾おうとしたら、手が滑って壁の一部を破損してしまったんです……。そしたら、この部屋の声が何となく聞こえるようになって、何となくですが、泣き声のような声が聞こえたものですから気になって、その……興味本位でこの部屋の声が聞き取れる装置を取り付けてみたんです……。そしたら……」
「この部屋で何が起こっているか把握できたってわけだよ」
今野の最後の言葉を紅蓮が引き継ぐ。
「ちなみに、君が殺害をしたと思われる瞬間も録音されていたよ。後は死亡推定時間とその時の瞬間の録音時間を調べれば、証拠は出てくるはずだ」
「……っ!!」
透の言葉に基頼が声を詰まらす。
「とりあえず、署の方に来てもらいましょうか」
紅蓮がそう言って基頼を連れて部屋を出る。
外に出ると、そこには本山と杉原がいた。
「あれ?なんで本山さんたちがここに?」
紅蓮が不思議そうに声を出す。
「あぁ。俺が冴子さんに連絡しておいた」
どうやら、透が事が起こった時点で冴子に電話をして本山達に来るように頼んだという事らしい。それで、冴子から連絡を貰った本山たちがこの場にやってきた……という事だった。
「本山さん、杉原さん。後はよろしくお願いします」
奏がそう言って頭を深く下げる。
「分かった……。いくぞ……」
本山と杉原に連れられて基頼がパトカーに乗り去って行く。
「奏!!」
「え?」
声がして奏が振り返る。すると、広斗が駆け足でこちらに近付いてくる。
「ひ……広斗さん?!」
「奏!良かった……無事で……」
広斗がそう言って奏を抱き締める。
「広斗さん……どうしてここに……?」
奏がなぜこの場に広斗がいるのかを理解できなくて頭にはてなマークが飛び交う。
「奏……、どうして今日のこと、僕に黙っていたの?」
広斗が奏を真っ直ぐに見据えながらどこか怒った様子でそう言葉を綴る。
「ご……ごめんなさい……。心配かけさせたくなくて……。私なんかのことで気に病ませるわけにいかないと思ったから……」
広斗の始めてみる怒り顔に奏が申し訳ない気持ちで一杯になり、そう言葉を綴る。
「……僕のこと、そんなに信用無い?」
「ち……ちがうよ!!そうじゃなくて……そうじゃなく……て……」
広斗の言葉に奏が強く否定する。その目には涙が溜まっていた。
「嫌われたくない……から……。我が儘言ったり……迷惑ばかりかけていたり……心配ばかりかけていたら……嫌われるって……思った……から……。大好きだから……嫌いになって欲しくなくて……ずっと……一緒にいたいから……だから……だから……」
奏が大粒の涙を流しながらそう言葉を綴る。
「奏……、少しぐらい我が儘言ってもいいんだよ?それに、心配かけるからとか迷惑かけるからって言って何も話してくれない方が僕は辛い……。もし、奏に何かあっても何も知らずにいたら、助けることも出来ない……。そうなったら僕はきっとすごく後悔して自分を責めてしまう……。大切な奏を守れなかったって後悔しても後悔しきれない……。だから……、これからはちゃんと話して……」
広斗が優しく言葉を綴る。
「でも……でも……私……は……」
奏が泣きながら言葉にならない言葉を発する。
「大丈夫……。それでも僕は奏の事が好きだよ?奏がその事を辛く思っているのも知ってる……。でも……それでも奏は僕にとって一番大切な人には変わりないよ……」
「広斗……さん……。ごめん……なさい……。ごめん……なさい……」
奏が泣きながら何度も謝る。
「奏……、こういう時は『ありがとう』だよ……」
「あ……ありがとう……。広斗さん……。ありがとう……」
奏が広斗に抱き付きながら言葉を綴る。
その瞳は感謝の気持ちが溢れている。
「あっ!ねぇ、せっかくだしさ……」
孝が何かを思いついてあることを提案する。
その提案に奏たちは了承した。
こうして、一人の男の身勝手な行動から起こった殺人事件は幕を閉じた……。
~エピローグ~
「奏ちゃんさ、なんであんなろくでもない男に「出てけ」って言われるまで出て行かなかったの?ていうか、普通なら嫌になって早々に別れない?」
あの後、一旦特殊捜査室に戻った奏たちに紅蓮が気になったことを聞く。
「その……、基頼さんのお母さんに会った事があるんですけど、その時にお母さんが言っていたんです……。「あの子は元々我が儘なところが昔からあったから、叱るのも面倒くさくて叱る事をしなかった」って……。つまり、ちゃんと躾を受けてこなかったんですよ……。それを聞いたとき、「可哀想な人だな」って思ったんです……。だから、私がここで見捨てたらこの人はこのままかも知れないと思って、なんとかしなきゃって……。だから、別れることに踏み切れなかったんです……」
「優しすぎるというかなんというか……。まぁ、これからはそんな人を選ばないようにするんだな。紅蓮みたいなやつも」
槙がそう淡々と言葉を綴る。
「なんで俺?!」
「おまえも悪い男だからな」
「どこがだよ?!」
「女をとっかえひっかえしている女たらし野郎じゃないか」
「そうしたくてしてるわけじゃねぇよ!!」
「どうだかな」
「なんだとぉ~!!」
紅蓮と槙のお決まりの言い合いが始まり、透たちが「またか」と言う感じでその様子を止めることなく見物している。
「……まぁ、広斗さんなら大丈夫だろ。これからはもう少し我が儘言ってもいいんじゃないか?」
「透さん……」
「何でも話せるようなそんな関係が一番いいと思うよ。まぁ、あくまで俺の意見だけど……」
「はい……そうですね……」
透の言葉に奏が素直に返事をする。
「……そういえば、あんな男とはどこで知り合ったんだ?」
基頼と奏の年齢が離れていることが気になったのか、透がそう聞いてくる。
「その……、基頼さんとは病院で知り合ったんです……」
「「「病院??」」」
奏の言葉に冴子や紅蓮たちもその言葉に反応して聞き返す。
「はい……。私、ある事があって心を病んでしまって病院に入院していたんです。基頼さんとはそこで知り合いました……」
「ある事って……?」
奏の言葉に冴子が尋ねる。
「それは……ちょっと……」
奏がその言葉に躊躇う。
「まぁ、誰にでも話したくないことはあるからな。無理に話せとは言わないよ。ちなみにその事を広斗さんは知っているのか?」
透がそう尋ねる。
「……はい。お話はしました……。その上でお付き合いすることになったんです……」
「そうか……」
奏の言葉に透がそう答える。
「さて!今回もお疲れ様♪いつものように打ち上げ……といきたいところだけど、今回はナシにするしかないわね♪」
「すみません……」
冴子の言葉に奏が申し訳ない表情でそう言葉を綴る。
「良いわよ♪楽しんできてね♪奏ちゃん♪」
「ありがとうございます」
奏がそう言って退勤時間になり署を出ると、そこに広斗と絵美と孝がいる。
「お疲れ、奏」
広斗が優しい表情でそう声を掛ける。
「お疲れ様、奏」
絵美も微笑みながらそう声を掛ける。
「よし!じゃあ、今から居酒屋で打ち上げだ!!」
孝が意気揚々に笑顔でそう言葉を発する。
こうして、事件解決を祝って奏たちは居酒屋に繰り出した。
「なんでよ……なんでこうなるのよ……」
一人の女が薄暗い部屋で呟く。
「私がその為にどれだけのことをしたと思っているのよ……」
女が恨むような目つきでそう言葉を呟く。
「あんだけのことしたのに……それなのに……」
女はそう言ってある写真をビリビリに破る。
「許さないんだから……絶対に許さない……」
(第五章に続く)
紅蓮が絵美たちにそう声を掛けて、槙と共に基頼のところに駆け寄る。
「どうかしましたか?!」
紅蓮が基頼に声を掛ける。
「た……助けてくれ!元カノが夏江ちゃんをバットで殴って殺したんだ!!」
基頼が早口でそう言葉を綴る。
「我々は警察のものです!案内してください!!」
紅蓮と槙がそう言って警察手帳を見せる。
「こっちです!!」
紅蓮と槙が手帳を見せたことから警察の人だと信じ、基頼が二人を案内する。
「こいつです!この女です!!」
部屋にいる奏を指さして基頼がそう言葉を発する。
「今すぐ捕まえてください!!」
基頼が悲痛な表情で紅蓮にそう言葉を投げかける。
奏の傍には夏江の遺体が転がっていた。
「バットで夏江ちゃんの頭を思い切り叩いたんです!「こんな女のどこがいいんだ!」って言って!!酷くないですか?!」
基頼が早口でそう言葉を吐く。
奏がその様子を見て静かに口を開く。
「都合が悪くなるといつも私のせいにしてあなたは逃げていましたが、まさか、殺人の罪を着せようとするとは思いませんでしたよ……」
強い瞳を湛えながら冷静な口調で奏がそう言葉を綴る。
「何言ってるんだよ!バット持って息切らしているだろ!早くこいつを捕まえてください!」
「そうですね……」
――――ガチャンっ!!
「なっ?!」
紅蓮がそう言って手錠を基頼に掛ける。
「なんで俺に手錠がかかるんだよ?!殺したのはあいつですよ?!」
基頼が叫びながら言葉を吐く。
「……やはり、殺されていたんだな……」
槙が夏江の遺体を見てそう言葉を発する。
「お疲れ、奏ちゃん。奏ちゃんの推測は当たってたね」
「……は?あんたら何言って……」
紅蓮たちの言葉がよく分からなくて基頼の顔が引きつる。
「……まさか、こうくるとはな」
そこへ、隣の部屋で待機していた透が部屋にやってくる。
「よう!透!ばっちりだったか?」
紅蓮がやってきた透を見てそう声を掛ける。
「あぁ。奏に素振りをさせていたことも聞き取れていたよ」
透がその時の録音をスマートフォンを使って流す。
「な……な……」
基頼の顔がどんどん青ざめる。
「今までの状況証拠であんたがこの仏さんに虐待まがいの事をしていたのも確認済みだ。それに、遺体を調べれば死亡推定時間や凶器に使われたと思われるそのバットも証拠になるだろう」
「ははっ……。な……なんの話だよ……。虐待なんて俺は……」
「部屋から何度も泣き声が聞こえているのも確認しているし、君が暴言を吐いていたのも確認済みだ。何なら聞いてみる?」
基頼の言葉に紅蓮がそう言って、槙に目配りをする。槙がそれに気付いて、この前の時に録音しておいたものを更に声を鮮明にしてあったのでそれをスマートフォンを使って流す。
そこには夏江の鳴き声と叩くような音。そして、基頼が暴言を吐いている声がしっかりと録音されていた。
「な……なんでこんなものがあるんだよ?!おかしいだろ!誰かがこの部屋に盗聴器でも仕掛けたのか?!それこそ立派な犯罪じゃねぇか!!」
基頼が叫ぶように言葉を綴る。
「いや、盗聴器じゃないよ。今野さん……お入りください……」
透がそう言って今野が部屋に入ってくる。
「あんた……、確か隣の……」
今野を見て基頼がそう口を開く。
「その……、実はいつだったかちょっとした棚を作るのにドリルで壁に穴をあけようとしてドリルを落としたんです……。ただその時に落としたドリルを拾おうとしたら、手が滑って壁の一部を破損してしまったんです……。そしたら、この部屋の声が何となく聞こえるようになって、何となくですが、泣き声のような声が聞こえたものですから気になって、その……興味本位でこの部屋の声が聞き取れる装置を取り付けてみたんです……。そしたら……」
「この部屋で何が起こっているか把握できたってわけだよ」
今野の最後の言葉を紅蓮が引き継ぐ。
「ちなみに、君が殺害をしたと思われる瞬間も録音されていたよ。後は死亡推定時間とその時の瞬間の録音時間を調べれば、証拠は出てくるはずだ」
「……っ!!」
透の言葉に基頼が声を詰まらす。
「とりあえず、署の方に来てもらいましょうか」
紅蓮がそう言って基頼を連れて部屋を出る。
外に出ると、そこには本山と杉原がいた。
「あれ?なんで本山さんたちがここに?」
紅蓮が不思議そうに声を出す。
「あぁ。俺が冴子さんに連絡しておいた」
どうやら、透が事が起こった時点で冴子に電話をして本山達に来るように頼んだという事らしい。それで、冴子から連絡を貰った本山たちがこの場にやってきた……という事だった。
「本山さん、杉原さん。後はよろしくお願いします」
奏がそう言って頭を深く下げる。
「分かった……。いくぞ……」
本山と杉原に連れられて基頼がパトカーに乗り去って行く。
「奏!!」
「え?」
声がして奏が振り返る。すると、広斗が駆け足でこちらに近付いてくる。
「ひ……広斗さん?!」
「奏!良かった……無事で……」
広斗がそう言って奏を抱き締める。
「広斗さん……どうしてここに……?」
奏がなぜこの場に広斗がいるのかを理解できなくて頭にはてなマークが飛び交う。
「奏……、どうして今日のこと、僕に黙っていたの?」
広斗が奏を真っ直ぐに見据えながらどこか怒った様子でそう言葉を綴る。
「ご……ごめんなさい……。心配かけさせたくなくて……。私なんかのことで気に病ませるわけにいかないと思ったから……」
広斗の始めてみる怒り顔に奏が申し訳ない気持ちで一杯になり、そう言葉を綴る。
「……僕のこと、そんなに信用無い?」
「ち……ちがうよ!!そうじゃなくて……そうじゃなく……て……」
広斗の言葉に奏が強く否定する。その目には涙が溜まっていた。
「嫌われたくない……から……。我が儘言ったり……迷惑ばかりかけていたり……心配ばかりかけていたら……嫌われるって……思った……から……。大好きだから……嫌いになって欲しくなくて……ずっと……一緒にいたいから……だから……だから……」
奏が大粒の涙を流しながらそう言葉を綴る。
「奏……、少しぐらい我が儘言ってもいいんだよ?それに、心配かけるからとか迷惑かけるからって言って何も話してくれない方が僕は辛い……。もし、奏に何かあっても何も知らずにいたら、助けることも出来ない……。そうなったら僕はきっとすごく後悔して自分を責めてしまう……。大切な奏を守れなかったって後悔しても後悔しきれない……。だから……、これからはちゃんと話して……」
広斗が優しく言葉を綴る。
「でも……でも……私……は……」
奏が泣きながら言葉にならない言葉を発する。
「大丈夫……。それでも僕は奏の事が好きだよ?奏がその事を辛く思っているのも知ってる……。でも……それでも奏は僕にとって一番大切な人には変わりないよ……」
「広斗……さん……。ごめん……なさい……。ごめん……なさい……」
奏が泣きながら何度も謝る。
「奏……、こういう時は『ありがとう』だよ……」
「あ……ありがとう……。広斗さん……。ありがとう……」
奏が広斗に抱き付きながら言葉を綴る。
その瞳は感謝の気持ちが溢れている。
「あっ!ねぇ、せっかくだしさ……」
孝が何かを思いついてあることを提案する。
その提案に奏たちは了承した。
こうして、一人の男の身勝手な行動から起こった殺人事件は幕を閉じた……。
~エピローグ~
「奏ちゃんさ、なんであんなろくでもない男に「出てけ」って言われるまで出て行かなかったの?ていうか、普通なら嫌になって早々に別れない?」
あの後、一旦特殊捜査室に戻った奏たちに紅蓮が気になったことを聞く。
「その……、基頼さんのお母さんに会った事があるんですけど、その時にお母さんが言っていたんです……。「あの子は元々我が儘なところが昔からあったから、叱るのも面倒くさくて叱る事をしなかった」って……。つまり、ちゃんと躾を受けてこなかったんですよ……。それを聞いたとき、「可哀想な人だな」って思ったんです……。だから、私がここで見捨てたらこの人はこのままかも知れないと思って、なんとかしなきゃって……。だから、別れることに踏み切れなかったんです……」
「優しすぎるというかなんというか……。まぁ、これからはそんな人を選ばないようにするんだな。紅蓮みたいなやつも」
槙がそう淡々と言葉を綴る。
「なんで俺?!」
「おまえも悪い男だからな」
「どこがだよ?!」
「女をとっかえひっかえしている女たらし野郎じゃないか」
「そうしたくてしてるわけじゃねぇよ!!」
「どうだかな」
「なんだとぉ~!!」
紅蓮と槙のお決まりの言い合いが始まり、透たちが「またか」と言う感じでその様子を止めることなく見物している。
「……まぁ、広斗さんなら大丈夫だろ。これからはもう少し我が儘言ってもいいんじゃないか?」
「透さん……」
「何でも話せるようなそんな関係が一番いいと思うよ。まぁ、あくまで俺の意見だけど……」
「はい……そうですね……」
透の言葉に奏が素直に返事をする。
「……そういえば、あんな男とはどこで知り合ったんだ?」
基頼と奏の年齢が離れていることが気になったのか、透がそう聞いてくる。
「その……、基頼さんとは病院で知り合ったんです……」
「「「病院??」」」
奏の言葉に冴子や紅蓮たちもその言葉に反応して聞き返す。
「はい……。私、ある事があって心を病んでしまって病院に入院していたんです。基頼さんとはそこで知り合いました……」
「ある事って……?」
奏の言葉に冴子が尋ねる。
「それは……ちょっと……」
奏がその言葉に躊躇う。
「まぁ、誰にでも話したくないことはあるからな。無理に話せとは言わないよ。ちなみにその事を広斗さんは知っているのか?」
透がそう尋ねる。
「……はい。お話はしました……。その上でお付き合いすることになったんです……」
「そうか……」
奏の言葉に透がそう答える。
「さて!今回もお疲れ様♪いつものように打ち上げ……といきたいところだけど、今回はナシにするしかないわね♪」
「すみません……」
冴子の言葉に奏が申し訳ない表情でそう言葉を綴る。
「良いわよ♪楽しんできてね♪奏ちゃん♪」
「ありがとうございます」
奏がそう言って退勤時間になり署を出ると、そこに広斗と絵美と孝がいる。
「お疲れ、奏」
広斗が優しい表情でそう声を掛ける。
「お疲れ様、奏」
絵美も微笑みながらそう声を掛ける。
「よし!じゃあ、今から居酒屋で打ち上げだ!!」
孝が意気揚々に笑顔でそう言葉を発する。
こうして、事件解決を祝って奏たちは居酒屋に繰り出した。
「なんでよ……なんでこうなるのよ……」
一人の女が薄暗い部屋で呟く。
「私がその為にどれだけのことをしたと思っているのよ……」
女が恨むような目つきでそう言葉を呟く。
「あんだけのことしたのに……それなのに……」
女はそう言ってある写真をビリビリに破る。
「許さないんだから……絶対に許さない……」
(第五章に続く)
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